+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、エントランスからONCA COFFEEを見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 2階、「原っぱ」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 5階、ワークエリア photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 6階、ワークエリア、吹抜部分を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所 が設計した、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」です。
解体が予定されるビル全体を改修した社屋です。建築家は、“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向しました。そして、働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作りました。施主企業の公式サイトはこちら 。
2023年年末に完成した、第二創業を掲げるアイウエアブランド大手ジンズホールディングス東京本社の移転プロジェクトである。
飯田橋のインテリジェントビルの最上階であった移転前のオフィスに対し、大企業病にかかった社員に再びベンチャー魂を取り戻してもらうことを目標とした新社屋は、将来的に取り壊しが予定されている地上9階建てのビルを一棟借りし、「壊しながら、つくる」「美術館×オフィス」という2つのコンセプトをもとにフルリノベーションしたものである。
「壊しながら、つくる」は、解体が予定されている建物に対し引き算のデザインをすることでラフな空間を露わにし、全てがお膳立てされた受動的な環境ではなく、使う人が工夫しながら働くことを促す環境を目指すものであり、「美術館×オフィス」は、オフィスにアートを飾るのではなく、美術館という感性を刺激する空間で働くという反転の発想で、床を抜き仕上げを剥がし文字通り壊したことで生まれた余白を、使う人の発想と創造を刺激する場として再構築するものである。
メインのワークエリアである5階~8階の「Open Art Tube」と名付けた大きな吹抜けには、内階段、プリズムシートを使ったガラス手摺り、イタリア発の空気を浄化する画期的なアート“Fabbrica dell’Aria®”が設置された。
階を越えたコミュニケーションやオフィスとしての一体感を生むとともに、吹抜け自体をアートピースのようにつくることで、仕事における発想と創造を刺激することを意図している。プリズムフィルムによってオフィスが虹色の光で満たされ、見る角度、時間、季節などによって違う表情が生まれる。
2階にはみんなの集まれる場として「原っぱ」をつくった。「原っぱ」の名称は、青木淳さんの著書『原っぱと遊園地』から来ており、原っぱのように使う人の発想で自由な使い方ができる場所にしたいという思いが込められている。
ここではそれを可能とする仕掛けとして、“種ベンチ”(意匠登録済み) という折り畳み式ベンチを制作した。既存OAフロアに埋め込まれた200脚の種ベンチを上げ下げすることで、フラットなオープンスペース、着席型のイベントスペース、会議室やランチ・雑談スペースなど多様な場が可能となり、その都度異なるランドスケープが生まれる。
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+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 外観、北東側の道路より見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、ピロティより会議室を見る photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、ピロティからエントランス側を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、エントランスからONCA COFFEEを見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、ONCA COFFEE photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、エントランスのベンチからONCA COFFEE側を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 1階、エントランスのベンチからピロティ側を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 2階、「原っぱ」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 2階、「原っぱ」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 2階、「原っぱ」、3階と繋がる吹抜部分を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 3階、EVホールからブリッジ越しにギャラリーを見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 3階、ギャラリー photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 3階、ギャラリー、2024年6月中旬まで展示されていた作品は、Gravitation(立石従寛・松田将英・保良雄による「グラヴィテーション」) photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 5階、ワークエリア(右奥にステファノ・マンクーゾ / PNATによる「Fabbrica dell’Aria®」が設置されている) photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 5階、ワークエリア photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 5階、ワークエリア、「Fabbrica dell’Aria®」と吹抜 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 6階、ワークエリア、吹抜部分を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 6階、ワークエリア、吹抜を見上げる。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 7階、ワークエリア photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 7階、ワークエリアから吹抜を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 7階、ワークエリア、階段を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 8階、ワークエリアから吹抜越しに見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 8階、ワークエリアから会議室を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 8階、ワークエリアから7階を見下ろす。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 8階、ワークエリア、吹抜から見下ろす。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 8階、ワークエリア、下階を見る。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 8階、吹抜を見下ろす。 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 9階、「ARNE SAUNA(グループ)」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 9階、「ARNE SAUNA(グループ)」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 9階、「ARNE SAUNA(グループ)」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 9階、「ARNE SAUNA(グループ)」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 9階、「ARNE SAUNA(ソロ)」 photo©太田拓実
+ft+ / 髙濱史子建築設計事務所による、東京・千代田区の「ジンズホールディングス東京本社」。解体が予定されるビル全体を改修した社屋。“ベンチャー魂”を取戻す存在を目指し、“壊しながら、つくる”と“美術館×オフィス”を理念とする設計を志向。働く人に参加を促すと共に感性を刺激する空間を作る 9階、「ARNE SAUNA(ソロ)」 photo©太田拓実
以下、建築家によるテキストです。
2023年年末に完成した、第二創業を掲げるアイウエアブランド大手ジンズホールディングス東京本社の移転プロジェクトである。
飯田橋のインテリジェントビルの最上階であった移転前のオフィスに対し、大企業病にかかった社員に再びベンチャー魂を取り戻してもらうことを目標とした新社屋は、将来的に取り壊しが予定されている地上9階建てのビルを一棟借りし、「壊しながら、つくる」「美術館×オフィス」という2つのコンセプトをもとにフルリノベーションしたものである。
「壊しながら、つくる」は、解体が予定されている建物に対し引き算のデザインをすることでラフな空間を露わにし、全てがお膳立てされた受動的な環境ではなく、使う人が工夫しながら働くことを促す環境を目指すものであり、「美術館×オフィス」は、オフィスにアートを飾るのではなく、美術館という感性を刺激する空間で働くという反転の発想で、床を抜き仕上げを剥がし文字通り壊したことで生まれた余白を、使う人の発想と創造を刺激する場として再構築するものである。
メインのワークエリアである5階~8階の「Open Art Tube」と名付けた大きな吹抜けには、内階段、プリズムシートを使ったガラス手摺り、イタリア発の空気を浄化する画期的なアート“Fabbrica dell’Aria®”が設置された。
階を越えたコミュニケーションやオフィスとしての一体感を生むとともに、吹抜け自体をアートピースのようにつくることで、仕事における発想と創造を刺激することを意図している。プリズムフィルムによってオフィスが虹色の光で満たされ、見る角度、時間、季節などによって違う表情が生まれる。
2階にはみんなの集まれる場として「原っぱ」をつくった。「原っぱ」の名称は、青木淳さんの著書『原っぱと遊園地』から来ており、原っぱのように使う人の発想で自由な使い方ができる場所にしたいという思いが込められている。
ここではそれを可能とする仕掛けとして、“種ベンチ”(意匠登録済み) という折り畳み式ベンチを制作した。既存OAフロアに埋め込まれた200脚の種ベンチを上げ下げすることで、フラットなオープンスペース、着席型のイベントスペース、会議室やランチ・雑談スペースなど多様な場が可能となり、その都度異なるランドスケープが生まれる。
3階はギャラリーを介して、外部の方も利用する商談室が並ぶ。ギャラリーは、5~8階も含め本プロジェクトのアートの監修を頂いた世界的キュレーター 長谷川祐子さんのキュレーションによる展示が年に2回更新されるホワイトスペースである。エレベーターを出るとすぐに吹抜けがあり、そこに渡されたブリッジからギャラリースペースへとアプローチすることで、2階の原っぱが垣間見えるようになっている。
その先に、全く別世界の展示が現れる。普通であれば単なる通過動線となるはずの場所が、このオフィスでは社内外の方の感性に働きかけ、創造性が充填される大事な場所として準備されている。
1階は、外部の空気に触れながら文字通り地に足を付けて働ける場となるよう、まちに面したサッシは折れ戸にして全開放できるようにした。また、外部の方も利用可能なコーヒースタンド「ONCA COFFEE 神田店」が併設されたことでまちとの繋がりが生まれ、物理的にも心理的にも外と近い環境となっている。元のメインエントランスであった風除室は、外部から直接出入りできる会議室として生まれ変わらせた。
最上階である9Fには、日本サウナ学会理事の加藤容崇先生監修のもと心身のリフレッシュやコミュニケーションの促進などを目的とした、フィンランド式サウナを設けた。水風呂及び外気浴をする浴場は、執務エリアのむき出しの空間から茶室のように小さなスケールの落ち着ける場所をつくりたいと考え、連続する二連の切妻型の天井をヒノキの羽目板で仕上げている。
また、サウナ室で生まれたアイデアを社員同士がコミュニケーションできるようなしつらえとして、ガラスのホワイトボードを準備している。サウナ室は浴場から続く切妻屋根を連続させ、日本人にとってコミュニケーションしやすい形状を考え、向かい合った人が正対せずみんなが少し視線をずらせるようベンチの角度をややハの字の配置とした。
家具については、可能な限り飯田橋からのものを転用しつつ、今回新たに必要になったものについては、組立て解体が簡単にできるテンポラリーな造作家具をデザインした。例えば、1階のライブラリー前の三角ベンチ、カフェのテーブルは、飯田橋で使っていたナラ無垢材のハイカウンター天板にサンダー掛けやRを取るなどデザインを加え転用した。また、ワークエリアに設置されたテーブルやハイテーブルは工事などで使われる単管バリケードという仮設資材と合板が用いられている。
期限が限られているこのオフィスだからこそ、およそこの規模の企業の働く場らしくない解体途中のようなラフな空間に、多くのクリエイティブに働くための試みや仕掛けを盛り込むことができた。
ただ、ここで特質すべきは完成された移転前のオフィスに対し、この建築は壊しながらつくったことによって、余白というより「未完の空気=隙」が生まれていることではないかと思っている。時に余白は手が加えられることを拒絶するのに対し、「隙」は誰でも気軽に変えていいような、いろんなことを試していいような、使う人々に参加を促す空気感のことである。
結果的に段階的な入居となってしまったこのオフィスだが、全館の稼働が始まった今が完成ではなく、これからもクリエイティブな働き方を試す実験の場として、使いながらその環境を更新していってもらいたい。
■建築概要
作品名:ジンズホールディングス東京本社
所在地:東京都千代田区神田錦町
主用途:事務所
建築設計:髙濱史子+小松智彦 / 髙濱史子建築設計事務所
アート監修:長谷川 祐子(3F・5~8F)
ARNE SAUNA(アーネ サウナ)監修:加藤容崇
Fabbrica dell’Aria(ファブリカ デラリア):ステファノ・マンクーゾ / PNAT
Gravitation(グラヴィテーション):立石従寛、松田将英、保良雄
構造(階段部分):朝光構造設計
照明:LIGHTDESIGN INC.
サイン:TAKAIYAMA inc.
テキスタイル:Talking about Curtains
階数:地上9階 塔屋1階
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
敷地面積:704.36㎡
建築面積:596.21㎡
延床面積:4525.98㎡
設計期間:2022年1月~2022年8月
工期:2022年8月~2023年12月
竣工:2023年12月
写真:太田拓実