秋山隆浩建築設計事務所と磯田和明建築設計事務所が設計した、東京・杉並区の「高井戸の保育園」です。
住宅街の中の公園に隣接する敷地での計画です。建築家は、“園児の遊びの場”などを凝縮した建築を目指し、中央に据えた“ネット遊具”の周りに保育室を配置する構成を考案しました。また、擁壁を崩した斜面のある園庭は公園との繋がりも意図されました。
東京都杉並区、神田川へと下るなだらかな傾斜地の際、高度成長期に開発された住宅地の一角に新設された保育園。
宅地2軒分の小さな敷地に園児の遊びや生活を支える多様な場を凝縮した。
園舎は認可基準の園庭面積を満たす為にコンパクトにまとめ、敷地形状に合わせて平面形を変形させた。その結果、方形の大屋根は緩やかな曲面となり、建物全体をやさしく包んでいる。この大屋根の下、上下階を貫く高さ7mのネット遊具を中心に保育室がぐるりと囲み、遊びや学び、生活が交差する場をつくりだした。
園舎中心となるネット遊具は運動の場に留まらず、ゆらゆら揺れるネットの上で園児たちが寄り添い、ひそひそと話を楽しむ場としても機能している。保育室は部屋の角に開口部を設けることで、落ち着いて遊びこめる窓辺の場を作り出している。遊具の下部には床を掘り込んだ絵本コーナーがあり、保護者と子どもが帰宅前のひとときを過ごせる場にもなっている。
園庭はひな壇造成の擁壁を崩し、斜面を再生して公園と繋げた。築山と遊具を加えたことで、高低差は全体で2.8mに及ぶ。小さな園庭ながらも立体的な回遊性を持たせたことで、園児たちが自ずと体を動かしたくなるような場となっている。
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以下、建築家によるテキストです。
東京都杉並区、神田川へと下るなだらかな傾斜地の際、高度成長期に開発された住宅地の一角に新設された保育園。
宅地2軒分の小さな敷地に園児の遊びや生活を支える多様な場を凝縮した。
園舎は認可基準の園庭面積を満たす為にコンパクトにまとめ、敷地形状に合わせて平面形を変形させた。その結果、方形の大屋根は緩やかな曲面となり、建物全体をやさしく包んでいる。この大屋根の下、上下階を貫く高さ7mのネット遊具を中心に保育室がぐるりと囲み、遊びや学び、生活が交差する場をつくりだした。
園舎中心となるネット遊具は運動の場に留まらず、ゆらゆら揺れるネットの上で園児たちが寄り添い、ひそひそと話を楽しむ場としても機能している。保育室は部屋の角に開口部を設けることで、落ち着いて遊びこめる窓辺の場を作り出している。遊具の下部には床を掘り込んだ絵本コーナーがあり、保護者と子どもが帰宅前のひとときを過ごせる場にもなっている。
園庭はひな壇造成の擁壁を崩し、斜面を再生して公園と繋げた。築山と遊具を加えたことで、高低差は全体で2.8mに及ぶ。小さな園庭ながらも立体的な回遊性を持たせたことで、園児たちが自ずと体を動かしたくなるような場となっている。
構造は傘のように中央の柱と屋根面で安定した方形の屋根架構、鉄骨架構の中に木梁を配置した2階の床架構によって、軽量で合理的な構成とした。四辺にバランス良くブレース構面を設け、コーナー部分は細径60.5φのポスト柱として、保育園の小さなスケール感に調和した開放性を実現した。
都市、及び近郊の保育園は静かな環境を望む地域住民への配慮、園児のプライバシー保護が相まって閉鎖性が高まっている。敷地を囲い込み、周囲からは園児の姿が全く見えないことも珍しくない。こうした中で、この保育園は周囲の住宅街と調和する佇まいを大切にした。
住宅のようなスケール感の園舎が街に溶け込み、園庭の木々や園児たちの元気な声と共に、地域の人々に街への親しみや愛着を育むきっかけとなることを願っている。
■建築概要
題名:高井戸の保育園
所在地:東京都杉並区
主要用途:保育所
園児定員:60名
設計監理:秋山隆浩建築設計事務所+磯田和明建築設計事務所
施工:初雁工業
構造設計:浜田英明建築構造設計
設備設計:環境エンジニアリング
遊具製作:中村製作所
構造:鉄骨造
階数:地上2階建て
敷地面積:476.20㎡
建築面積:207.73㎡
延床面積:395.26㎡
設計期間:2020年1月~2020年9月
施工期間:2020年10月~2021年3月
竣工年月:2021年3月
写真:石田篤、秋山隆浩建築設計事務所