SHARE 平山俊建築設計による住宅”Les Aventuriers / 冒険者たち”
photo©Daici Ano
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photo©Katsuhisa Kida-FOTOTECA
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photo©Naoomi Kurozumi
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以下、建築家によるテキストです。
Les Aventuriers 「冒険者たち」
敷地は、海と街並みを眼下に望む神奈川県の山の傾斜地にある。プロジェクトが始まった時、私と建主である友人夫妻の三人でこの敷地を訪れた。高木が乱立する計画前の敷地のなかを歩き回ると、傾斜地の高低差により風景は様々に変化し、まるで森のなかを散策しているような楽しさがあった。斜面の上を散歩する、そのような体験が内部空間においても感じることのできる家をつくりたいと考え、斜面地をポジティブに活かしてゆく計画をすすめることになった。
まず、斜面のどこにどんな場所があったらよいかを考えることから始め、四つの生活空間となる場所のイメージが出来上がった。アプローチとなる道路から一番近いところにキッチン・ダイニング、眺めのよいところにリビング、部屋から斜面を望むところに寝室、風通しがよくひっそりとしたところに浴室……というような。そしてこれらを個々のヴォリュームにし、木の塊に見立て、彫刻を削るように敷地の形状や条件にあわせていく。道路側面、北側面は敷地境界線と平行にし、キッチンは日差しが入るように東面を少し南側に向ける。リビング正面は、視界から隣地の建物が外れるように角度を少し北側に振る。こうして4つの塊は、徐々に重なり合いながら1つの形となっていった。
建物としての形が現れたところで、内部空間をつくりこんでゆく作業に入る。まず、木々の間を歩いているような、視線の抜けが心地良い道をつくってゆく。この道は、内部から外部、また内部へと行き止まりなく回遊し、その道程の一部には橋がかかる。部屋の床には、その場所の雰囲気にあわせた色々な樹種のフローリングを、カーペットを敷くようにのせてゆく。地盤面と接するコンクリートの中央部には細木を敷きつめ、外部のようなあぜ道をつくってゆく。
私たちは、動物が徐々に住処を作ってゆくように、少しずつストーリーを積み重ねながら設計を進めていった。その思考の形跡や経過は空間に顕著に現れ、地形にあわせながら整えてきた建物形状の内部には、様々な角度の壁、天井高、10の床レベルが存在し、場所ごとに異なる光の陰影が映しだされる。分節をもたない内部空間に入り込む風は、木々の間を通り抜けてきたようであり、ちょっとした段差にふと腰を掛けると、自然のなかの切株に腰掛けているような気分になる。
「冒険者たち」とは、”この敷地を巡る家づくりのストーリー”のタイトルである。
平山俊