
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.009 後藤周平建築設計事務所「loose」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
後藤周平建築設計事務所「loose」
後藤周平建築設計事務所が設計した、東京都大田区大森町の店舗「loose」に伺った。
既存建物の一角をセレクトショップに改修する計画。
学校の校庭に裏庭が面しているという好条件に着目して、裏庭側をエントランスアプローチに設定。階段を上がり掃き出し窓から出入りする。
窓ガラスは黄色のガラスに変えられていて、外から見てもちょっと異界に入るような感覚があり期待が高まる、、、、!
中に入ると、元の和室の部屋の雰囲気が残りつつも非常に現代的な空間になっていることがすぐわかる。柱の間に設置された鏡や繊細な寸法で決められたハンガーラック、モルタルの床。それらが組み合わさって店舗の雰囲気を和風と現代がミックスしたものにしている。
エントランスから入ってすぐの場所から、商品を上から見下ろす形です眺め、階段を降りて目線の高さで改めて洋服を見るという経験も面白い。
見下ろした状況では、何かオブジェのように洋服を見る感覚があり、階段を下がってからは、自分が着る対象として洋服を見る感覚に変化するような感じがして興味深かった。
高さや方向が異なる視点から、同じものを鑑賞させることで、その対象についてより深く観察することができるようになるのだなと。
また、一間の柱間にピッタリと嵌め込まれた鏡は、室内を広く見せる効果があるとともに、空間の中に違和感なく溶け込んでいる。
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塗装された壁面の上に、ドット状に手作業で筆で塗られたというクリアの質感も面白かった。
光をキラリと反射して壁の見え方が変わり平らな平面に奥行きが生まれている。(また、部分的にスケールを変える事で印象に変化を与えている。古典建築の視覚的操作と通じる手法で共感、、、!)
これは、現場段階の判断で、追加されたそう。この手作業の塗装によって、空間にほんの少しのクラフト感が付与されていて、それがこのお店の販売する商品群の特徴とも呼応していて非常に良かった、、、! 空間が骨格ではなく商品に近づいていく感じがするというか。
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既存の柱や新設の木部は墨汁を薄めて塗装する仕上げを施しているとのこと。薄っすらと黒くなることで、元の雰囲気の質感を残しつつモダンな印象の創出に寄与している。(合板を白で拭き取り塗装するケースを見るけれど、その黒い版と考えても面白そう)
黄色のガラスは内部から見ると、周囲の風景を非日常として見えるようにしていて、それもセレクトショップという機能に合っていて良いなと思った。
やっぱり、洋服を買うという行為は非日常としての高揚感の中で促進されると思うので。(実際の色味の確認は外でも行えるという判断をしたそう)
また、店主さんは代々木上原のショップ「delta」のご出身とのこと。たまたま、先日deltaにお伺いして色々なお話を伺っていたのでご縁を感じずにはいられなかった、、、!(ちなみに、deltaの内装は、永山祐子さんの初期作品でもある)
この度はご竣工おめでとうございます!
(訪問日:2025年4月19日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。22年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するWebメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。
