
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.024 小滝健司+高藤万葉 / TOASt「Three island Terrace」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
小滝健司+高藤万葉 / TOASt「Three island Terrace」
TOAStが設計を手掛けた、神奈川・向ヶ丘遊園の複合ビル「Three island Terrace」の内覧会に伺った。
TOAStは、アトリエ・アンド・アイ坂本一成研究室で経験を積んだ小滝健司さんと、フジワラボで経験を積んだ高藤万葉さんが主宰する設計事務所だ。
ぼくより若い世代の独立した建築家が、この規模の建築物を手掛けたケースは個人的に珍しいということもあり、楽しみにして伺った。
建築を見て回る前に、受付でTOAStのお二人とお話ができたのだけれど、区画整理が進んでいる登戸・向ヶ丘遊園エリアにて、この建築を含めて5件もの建築を完成させているのだという、、、!
同じ不動産会社と組んで本建築のような複合商業ビルを設計したり、Park-PFI制度を活用した公園内のカフェを設計していたりもしている。
それらの建築が地図上にプロットされた資料を頂いたのだけれど、見ていると建築家が街をつくっている感覚が湧き起こってきて、とても興奮した、、、、! これまでの建築も街に貢献するアイデアを実現したビルであり、商業的な要求に応えつつ公共にも貢献している様子が見て取れ、素晴らしい取り組みだと感じた。このような、色々な街が建築家と不動産会社のタッグで再開発されてほしいと思った。
そろそろ、TOAStによるこのエリアで5件目となる「Three island Terrace」に戻ってきたいと思う。
この複合ビルには、1階に店舗、2階にフィットネスジム、3階に賃貸オフィス、4・5階にコワーキングとシェアラウンジ、ルーフトップテラス。それより上は、賃貸集合住宅という用途が入っている。
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建物内を一周してみて、非常に都市的なプログラムに対して誠実に応えつつ、建築家的なアイデアを随所に散りばめた上で、公共にも寄与するスペースが用意されている。収益性だけでなく街に貢献する建築だと実感した、、、、!
まず、印象的なのは、外観の円弧の一部が連続したようなテラスの形状だ。曲線が使われることによって、規模感やRC造がどうしても生み出してしまう堅固な印象を程よく緩和している。建物側から何か街に対して柔らかく微笑みかけるような表情を作っているというか。区画整理で新しくビルを作るという与件について考えた時に、街に対して拒絶するような厳しめの顔を作るのではなく、親しみ深い顔を作るということの重要性を体感させられた、、、、! これは、想像以上に大事な視点ではないだろうか。
低層部・中層部を見て回ると、これらのテラスが、内部空間に対しても個性を与えていることが分かる。そして、不動産的な意味でも価値を生んでいると感じた。例えば、3階の4つの賃貸オフィスの入るフロアを見ていると、個々のオフィススペースの前のテラスの形や奥行きが変化していることで、そこに面する其々のオフィスの印象が変わっていることにも気付かされる。そして、オフィスの拡張としてテラスをどう使うか考えながら見学していると色々なアイデアが浮かんできてワクワクする感覚があった。
そして、5階まであがると、視界が開けたルーフトップテラスに辿り着く。このスペースば、ビルの入居者さん、施設の利用者さん、集合住宅の住人さんはもちろん、一般の方も使える空間として想定されているとのこと。
周囲の建築物の高さを考慮してレベル設定されたこの場に立つと、視界が開けていて街の中にも関わらず空を感じられる空間となっていて気持ちが良かった、、、、!こうやって、民間の建築が、少しづつでも公共に寄与することで街がポジティブな方向に変わっていくということを想像せずにはいられなかった、、、、!
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そして、これより上階は集合住宅のフロアが続く。エントランスは先に紹介した低層部・中層部とは別に用意されていてそこから上がって行き見学を行った。最初の外観写真で気づいた方もいると思うのだけれど、窓の形状は、梁下までのフルハイトサッシで、FIX+換気用の縦長のスリット窓という仕様。
一般的な引き違い窓ではないことで、外観上では住宅感が薄れていて、基壇部とタワー部の連続性にも寄与していた。
そして、内部的には街を室内に取り込むかのような一体感を生み出す効果もあるように思えた。特に最上階住戸からの眺めは爽快で、とても気持ちが良かった、、、!
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改めてこの建築について振り返ってみると、完全に経済の論理でつくられてもおかしくないプログラムでもあると思うのだけれど、建築家、不動産会社、お施主さんの街に貢献したいという思いを背景に、様々な建築的なアイデアによって、街と対面する優しい顔がつくられたり、街に寄与する空間が用意されたり、内部空間と街との適切な関係性が紡がれている。そんな、とても素敵な建築であると強く感じた、、、、!そして、このような建築が増えていくことで確実に街が良くなっていくのではという期待感もあった、、、!
この建物を見学した後に、近くにある同じくTOAStが設計した公園内のカフェも見学したのだけれど、その公園内からも、この複合ビルが見えたのも良かった。点と点が繋がって線になっているんだなあと感じた、、、、!
僕らの時代、そして僕らより若い世代は、建築的な理想と、加速する資本主義からくる社会のリアリティの間に挟まれて本当に色々と考えさせられたり、もがき苦しんできたのではないかと思う。(勿論、過去もそうであったと思うけど、現代に近づくにつれて資本主義の思想は先鋭化しているのは間違いなく、様々な余白が少なくなっている)
そんな時代においてTOAStが実現した建築は、現代のモデルケースのひとつであり指標にもなり得るのではないかとも思えた。是非みなさんにも見に行ってもらいたいと思った、、、、!
TOAStの小滝さん、高藤さん、不動産会社の皆さん、お施主さん、ご竣工おめでとう御座います!!!
(訪問日:2026年6月13日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。


