SHARE 大野力 / sinatoによる鎌倉の住宅”Shichirigahama T”
以下、建築家によるテキストです。
Shichirigahama T
鎌倉七里ガ浜の住宅地に建つ家族4人の為の住宅。
敷地の既存外構を活かしながら、その余った場所にピッタリと沿うように大きな方行屋根をかけた。
その下には4つの三角形平面のマッスを屋根の稜線ラインに即して配置し、それぞれの三角形の一辺で屋根対角線上の隅木を支えている。
マッスの内部とマッスに挟まれた隙間には、様々な方向性とスケールをもつ場所が生まれていて、広がったり窄まったり、高かったり低かったり、といった複雑なひとつながりの中に生活機能が展開する。
また上記の隙間からは、壁面の杉板目地ラインに誘導されるように視線が開口部越し敷地隅部へと抜け、4つの三角形の頂点が押し寄せる中央部では、頭上のトップライトから安定した光が降り注ぐとともに、開放すれば他の開口部からの風がそこへ通り抜けていく。
低く深い軒の下には、室内に入り組むようなアルコープ状の外部空間を点在させ、アプローチ、テラス、勝手口、物置場、薪置場として利用した。
住人はここでの毎日の生活の中で、四方八方に繋がりを感じながら、様々な距離感のシーンを継ぎ目無く体験することになるだろう。
家族が近かったり遠かったり、建築が近かったり遠かったり、そういった振り幅の大きな単一ではない関係性の中に、この場所固有の家族感や住宅感、またそれらに対する愛着が育まれることを期待している。
(大野力 / sinato)
■建築概要
所在地:神奈川県鎌倉市
用途:専用住宅
構造・規模:木造・地上2階
敷地面積:229.83m2
建築面積:91.20m2
延床面積:112.74m2
構造設計:寺戸巽海
施工:長森建設
撮影:太田拓実