SHARE 堀尾浩 / 堀尾浩建築設計事務所が設計した住宅「美幌の家(びほろエコハウス)」
堀尾浩 / 堀尾浩建築設計事務所が設計した住宅「美幌の家(びほろエコハウス)」です。
以下、建築家によるテキストです。
美幌の家(びほろエコハウス)
このプロジェクトは、環境省主催の「21世紀環境共生型住宅のモデル整備事業」として自治体が採択を受け、公募型プロポーザルによる設計者選定、実施設計、建物工事を経て建設された公共のモデルハウス事業である。
北海道から宮古島まで全国20ヶ所の中にあって美幌町の特徴は、4世代がともに暮らす多世帯の農家住宅という独自のテーマを加えていたことだ。美幌は、農家一戸あたりの耕作面積が広く、平均で22ha、いわゆる東京ドーム22個分に相当する大規模農業を主産業としている。しかしながら、核家族化の進行による後継者不足、農業技術の継承や繁忙期の人材不足の問題は、美幌が進める「低炭素なまちづくり」の課題のひとつでもあった。
美幌の家では、その地域に特有の自然エネルギーを活用するだけではなく、大家族が場所や水周りを共有することで、一人当たりの面積や使用エネルギーを減らし、自給・自立の住まいづくりを目指すことで応えようとしている。
建物は、光と風に大きく開かれた土間空間(リビング・ダイニング)を中心に、地中熱による床暖房、ペレットストーブなど自然のエネルギーを体感する場所づくりを重視している。個室は、この自然に開かれた緩衝空間を介し通風や暖房熱を個別に取り入れる。美幌のカラマツ材を架構や内外装材として使用するこの家は、森の中で居心地の良い場所を見つけるように、それぞれが自分達の居場所を見いだす住まいになったと思う。完成後は、体験宿泊も可能な普及・研修住宅として、また次世代農業や低炭素なまちづくりを模索する拠点施設として活用されている。(堀尾 浩)