SHARE 小田木確郎 / オダギプランニング舎+成島大輔 / 成島建築設計による「ABC CENTER HOUSE」
以下、建築家によるテキストです。
ABC CENTER HOUSE
神奈川県横浜市の工場やプラントが殺伐と立ち並ぶエリアに位置する、住宅展示場の管理棟の新築計画。この建物は「センターハウス」と呼ばれ、住宅展示場を訪れる来場者が最初に立寄り、情報を得る場所です。また、住宅購入に関する様々なイベントやセミナーなどが開催される場所でもあります。
各ハウスメーカーが独自の商品性をアピールする為に建築されるモデルホームは、常に最先端の技術や仕様を来場者に訴求するため、約5年程度で建て替えが行なわれます。そのため周辺環境や、隣接するモデルホームとの関係性は無視され、商業的価値観に基づく閉鎖性の上に存在しています。それらのデザインの多くは、人工的な外装材や大量生産される部材などで構成された没個性的なものです。私たちは、このようなモデルホームが立ち並ぶ白昼夢のような風景に一見溶け込んでいるようで、実際は全く違う価値観でつくられた建物を置くことで、来場者がモデルホームとは異なる、開放的な空間/価値体験ができる場をつくることを目指しました。
外部と連続的に繋がるラウンジ、内部/外部が反転したようなセミナールーム、前面広場を取り込んだ半屋外の軒下広場、これら三つの機能を、ランダムなトップライトを設けた大きな片流れの屋根で覆うことにより、それぞれの場所が独自の空間性を持ちつつも、緩やかに連続しています。軒下広場は、前面広場と屋内を繋ぐ中間的な領域として、各種イベントに活用されます。
また、フェイク素材を本物に見せるように扱うモデルホームに対し、本物の素材を平面的なフェイクに見えるように扱うことで、引いた視点では、モデルホーム群と素材感の印象を合わせながらも、近づいた時にはその違いが認識されるような建物をつくり出しています。各素材は内装、外装の区別無く等価に扱われ、常に隣接する空間に跨がるようにマッピングされています。それらが建物の内外部、周辺の風景とを横断的に繋ぐ要素として機能することで、建物のどこにいても、その向こう側の場所が意識され、小さな建物の中に開放的な広がりを実現しています。
■建築概要
所在地:神奈川県横浜市
建築面積:81.86m2
延床面積:93.44m2
階数:地上2階
主体構造:木造
設計・監理:小田木確郎(オダギプランニング舎)+成島大輔(成島建築設計)
構造:木下洋介構造設計室
施工:有限会社協和建築