SHARE 荒木信雄 / アーキタイプによる神奈川の住宅「秋谷の家」
荒木信雄 / アーキタイプが設計した神奈川の住宅「秋谷の家」です。
以下、建築家によるテキストです。
「秋谷の家」
– 三層の眺め –
神奈川県横須賀市秋谷に建つRC造地上2階建ての週末住宅である。施主は都内に暮らす写真家。敷地は葉山に昔からある典型的な別荘地で、目の前に海があり、背後に山を背負った傾斜地である。ここでは、海と山という週末住宅における、くつろぎの住まいとして、その雄大なビューを楽しむことに特化させた建築を目指している。そのため、その敷地がもつビューをいかし、それをそのまま建築に立ち上げている。
また、玄関門扉を開けた瞬間から、これまでのすべての感覚をリセットできるような家としての役割を考えた。台風が直撃するロケーションを考慮し、かつ防犯的意味合いも兼ね、開口部には木の鎧戸を設けている。ここを訪れたときの玄関門扉や鎧戸を開ける所作自体が、都市生活からのリセット行為となるような建築である。
建物は三層の異なるビューを眺める構成となっている。一層目(1階)は寝室と浴室で、南側斜面のオリーブ畑のビューをのぞむ空間として、その緑を楽しむためのサブリビングとしても機能する。二層目(2階)はメインリビングであり、ピクチャーウィンドウ的に切り取った大開口から海をのぞむためだけのビューイングルームとして。三層目となる屋上は、この敷地から見渡せるパノラマビューを楽しめる屋外リビング。各フロアそれぞれの空間が敷地の高低位を反映させた、三層構造のレイヤーをもったビュールームとなっている。
施主の職業は写真家であることから、空間にも写真と同様に光と影の関係性に留意した。室内においては、光の移ろいを感じられるような設えとして、トップライト光を受けとめるためのキャンバスとしての壁を意識している。
この建築自体がそれぞれ異なるビューをもつ三層レイヤーの構造をもった箱として、どの方位をとっても特徴的な景観をもったこの敷地のビューが、室内空間におけるビューに反映されている。見晴らしのいい立地でありながら、すべての壁に開口部を設けなかったのは、ある意味その土地のビューの雄大さよりも、この家から眺めることのできるビューの質にフォーカスさせたかったからである。
秋谷の家
■工事種別;新築工事
■所在地;神奈川県横須賀市
■主要用途;専用住宅
■竣工年;2011年
■施主(家族構成);夫婦
■設計;一級建築士事務所 有限会社アーキタイプ/担当;荒木信雄
構造;我伊野構造設計室(G.DeSIGN) /担当;我伊野威之
設備;株式会社SH建設事務所 /担当;永井浩二、長澤集
照明;株式会社On&Off/担当;山口晋司
造園;GRASSY./担当;高浦裕子
建築;株式会社佐藤秀/担当;馬場章郎
設備;株式会社丹野設備工業所 /担当;馬場章郎
電気;株式会社エムテック /担当;田島修司
■規模
地上2階建
敷地面積;155.14㎡
建築面積;61.60㎡(建蔽率39.71%)
延床面積;113.57㎡(容積率73.20%)
■構造・構法
主体構造;壁式鉄筋コンクリート構造
基礎;直接基礎
■敷地条件
用途地域;該当なし
防火地域;無指定
■主要外装仕上げ; コンクリート打放し(杉材本実加工化粧型枠)の上撥水剤塗布
■主要内装仕上げ; コンクリート打放し(杉材本実加工化粧型枠)の上撥水剤塗布
■設備システム
空調;冷暖房方式/天井埋込ダクト型、床置型エアコン、壁埋込、 暖房方式/電気式床暖房
給排水;給水方式/上水道
配水方式/公共下水道
給湯;給湯方式/ガス給湯器