SHARE 森清敏+川村奈津子 / MDSによる東京都港区の住宅「白金の家」
photo©Forward Stroke inc.
森清敏+川村奈津子 / MDSが設計した東京都港区の住宅「白金の家」です。
以下、建築家によるテキストです。
東京都市部の住宅は、地価が高いがゆえに小さい敷地にそれぞれ肩を寄せ合って建っている。それぞれが周辺との調和を考えることなく、建ちたいように建っているのが東京の町の普通の風景だ。この住宅の敷地も例にもれず、そんな町の一角における内部空間の追求が、結果として東京の町の風景を少しだけ塗り替えていく。
狭小敷地においては少しでもワンフロアの面積を大きくとりたいところだが、この住宅では車を駐車するスペースを確保するために1階部分を絞って2階部分を広げた形状とし、斜線制限と天井高さなどを考慮しながら外観の形を決めていった。
人が住むという住宅の性質上、プライバシーの確保および採光・通風を充分にとることは当然のことであるが、四周を建物で取り囲まれている与条件でそれを実現するには工夫が必要だ。この住宅の敷地も道路を挟んで南側は「とりあえず」駐車場になっていて、今後何がどう建つかわからない状況だ。そこで採光は建物上部から最大限取り入れ、下階へ届ける断面構成としている。最上階にはリビングを配置し、リビング上部の吹抜けに面したルーフテラスやリビングに連続したテラスから、更に吹抜けを介して下階のダイニング・キッチンへと光が降り注ぎ、風が通り抜ける。また、敷地の角の歪な形状により、プライバシーを確保しつつ将来に亘ってそこからの採光・通風が可能となっている。
結果として、道路に面した南側には玄関以外に窓のない一見寡黙な表情の建物となっているが、内部は時々刻々と光と影が移り変わり、多様な表情をみせる空間となっている。