SHARE bUdアトリエ一級建築士事務所による愛媛の「八幡浜市道の駅みなっと トイレ棟」
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bUdアトリエ一級建築士事務所が設計した愛媛の「八幡浜市道の駅みなっと トイレ棟」です。
以下、建築家によるテキストです。
本施設は愛媛県八幡浜市の道の駅に付随して建てられたトイレ棟である。道の駅は八幡浜市のほぼ中心部、九州への航路として四国の西の玄関となっている八幡浜港地区に計画された。それに伴い、だれもが使いやすく、親和性があり、地域・エリアの景観にマッチするトイレの設置を目的として2012年3月に八幡浜市主催の公開設計コンペが開催され、当案が採用された。
八幡浜は海際まで迫る山々に市の名産である蜜柑の段々畑が連なる景観が特徴的な街であり、道の駅からもそれを眺めることができる。
市内外から様々な利用者が訪れる道の駅のトイレは、小さくとも利用頻度の高い公共施設である。新しく設置されるトイレが地域特性を表すアイコンのようになり、利用者が滞在時に少しでもこの場所性を感じられる場とすることができないかと考えた。
八幡浜の代表的な景観である蜜柑の段々畑をモチーフとした段々形状の天井でトイレを覆い、建物の中心に中庭を据えた。建物はこの中庭を中心に、待ち合いスペース、手洗いスペース、その外側を便所ブースやパウダーコーナーが取り囲む「回」の字型の平面構成となっている。中庭は男女のエリア双方にまたがり、建物内への採光、通風、換気を促す。建物の上半分はガラス窓となっており、機能上閉じる必要のある箇所以外はこの窓を通して外部が感じられるようになっている 。このガラス窓により段々天井は外からも視認出来る形となっている。
段々天井は道の駅の来訪者に対するアイキャッチとなり、かつ内部にいる利用者の視線を外の段々畑をはじめとする八幡浜の景観にいざなう。また、中央に向かって勾配の下がった形状により、昼間は外からの光が建物内にまんべんなくとり入れられる。夜間はアッパー照明により照らされた段々天井が暗闇に浮かび上がり、建物が周囲に対する行灯となる。本トイレは24時間使用であり、内外を共に照らすことでの防犯、犯罪抑止効果を狙っている。
八幡浜の新たな顔となり、多数の利用者が行き交う道の駅のなかで、本施設がトイレとしての機能を超えて建物内外への働きかけを行う存在であり続けてほしい。
■建築概要
場所:愛媛県八幡浜市
延床面積:159.44㎡
最高高さ:4.375m
構造:地上1階 鉄骨造
竣工:2013年3月
設計:bUdアトリエ一級建築士事務所
構造:中畠敦広構造設計事務所