SHARE 岸本和彦 / acaaによる神奈川県茅ヶ崎市の住宅「木箱の家」
all photos©上田宏
岸本和彦 / acaaが設計した神奈川県茅ヶ崎市の住宅「木箱の家」です。
敷地の周囲は既存住宅が建っているため、通風と採光を十分に確保するアイデアが必要だった。我々の提案は、建築のアウトライン(外壁)を隣地境界線から可能な限り離しつつ、建築を敷地の中央付近に配置し、要求される住宅の容積にしたがって形態を導き出すことだった。つまり、周囲の住宅とこの住宅の間に生まれた外部空間は、結果的に生まれた消極的な残地ではなく、計画的に生成した外部空間であることが重要であった。それは日本における一般的な住宅の配置計画(敷地の北側に住宅を寄せて配置し、敷地の南側に空地を確保するという計画)が問題視された結果である。
※以下の写真はクリックで拡大します
以下建築家によるテキストです。
■設計コンセプト
海に近い住宅街の一角に建つ住宅。敷地の周囲は既存住宅が建っているため、通風と採光を十分に確保するアイデアが必要だった。我々の提案は、建築のアウトライン(外壁)を隣地境界線から可能な限り離しつつ、建築を敷地の中央付近に配置し、要求される住宅の容積にしたがって形態を導き出すことだった。つまり、周囲の住宅とこの住宅の間に生まれた外部空間は、結果的に生まれた消極的な残地ではなく、計画的に生成した外部空間であることが重要であった。それは日本における一般的な住宅の配置計画(敷地の北側に住宅を寄せて配置し、敷地の南側に空地を確保するという計画)が問題視された結果である。我々は、住宅を取り巻く4方向(東西南北)の全てが、通風、採光、プライバシーの確保、さらに外観のデザインにおいて大切だと考えている。
■デザイン性
1階の平面計画において空間の拡張を計画した。理由は、建物周囲に設けた空地との関係をより積極的なものとするためである。通常、建築の領域は外壁で規定されるが、本計画では、建築を浮かして1階の外壁を無くし、さらに敷地全体を覆う樹木と、内外を連続する様に計画されたウッドデッキを媒介し、建築の領域を外壁のさらに外側へと拡張した。生活が屋内外を問わず敷地全てをステージとして展開していく。
■省エネルギー・環境性
一番低い場所である地下のキッチンに蓄熱式暖房器具を設置した。外断熱されたキッチンの基礎や耐圧盤は、夜と昼の温度むらを最小限に抑えるための蓄熱体として機能している。また発生した対流を下に戻すための天井ファンも設置し、省エネルギー性と快適な住環境を両立した。1階の大開口部は、張り出した2階床が庇の役割を担い夏の熱線カットに役立っている。外壁はレッドシダーとし、新建材に頼らず自然な経年変化を楽しめる家を心がけた。
■住宅性能(断熱・機密性など)
最上部のロフト空間など、傾斜天井の欠点である夏の熱輻射を最小限に押さえるために発砲ウレタン断熱を採用した。またアルミサッシにはペアーがラスを、南に向いた全解放を目的とした大開口部には木製建具を用い、隠し框による2重のエアーパッキンと引き寄せ金物による高い水密気密性能を実現した。
■先進性・その他
敷地という抽象概念は、敷地の中だけで完結した閉塞的計画を導いてしまう可能性がある。この住宅の建つ茅ヶ崎という気候風土に適した柔らかい殻という発想から、家を取り囲むウッドデッキ全てが生活の場という計画が生まれた。東西南北に展開するその場所は、季節や時間に応じて様々な生活のシーンを描くためのステージとなる。
■建築概要
計画地:神奈川県茅ヶ崎市
用途:住宅
構造:木造
規模:2階建て
敷地面積:100.02㎡
建築面積:33.74㎡
延床面積:67.48㎡
竣工年:2010年
外部仕上げ:外壁:レッドシダ-
屋根:ガルバリウム鋼板
デッキ材:マニルカラ
内部仕上げ:内壁:P.B. EP
床:モルタル金鏝押え、杉板 OF、ピンカド OF
構造設計:諏訪部 高広(諏訪部建築事務所)