SHARE 吉岡徳仁による、京都 将軍塚青龍殿の大舞台で公開中の「ガラスの茶室 − 光庵」
吉岡徳仁がデザインして、京都 将軍塚青龍殿の大舞台で公開中の「ガラスの茶室 − 光庵」です。
この作品の展示情報はこちらに掲載されています。
2015年春、構想から5年の時を経て、京都・フィレンツェの姉妹都市提携50周年を記念し、京都の重要文化財にも指定される天台宗青蓮院門跡境内、将軍塚青龍殿の大舞台にて世界で初めて本作品が完成を迎え、披露されることとなりました。
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以下、デザイナーによるテキストです。
京都・フィレンツェ姉妹都市提携50周年 特別展覧会
「吉岡徳仁 ガラスの茶室 – 光庵」
日本人は、自然の中に超自然的な生命や神秘をみる感覚があり、それはオーラのようなエネルギーを、空間から感じることから始まります。このような本質的な自然美の認識と独自の解釈は、日本古来から受け継がれる茶道における思想に通じるものがあると考えられます。
「光庵」透明なガラスで構築された茶室。その小宇宙的な空間から、自然の要素を感知し、自然と一体化することで、感覚の中に存在する日本文化の本質を見ることができるでしょう。
「ガラスの茶室 – 光庵」は、2002年に構想された「透明な日本家屋」の建築にはじまり、2011年に開催されました第54回ヴェネツィア ビエンナーレ国際美術展Glasstress 2011にて日本文化を象徴する茶室建築プロジェクトとしてそのデザインが発表されました。
2015年春、構想から5年の時を経て、京都・フィレンツェの姉妹都市提携50周年を記念し、京都の重要文化財にも指定される天台宗青蓮院門跡境内、将軍塚青龍殿の大舞台にて世界で初めて本作品が完成を迎え、披露されることとなりました。
京都 将軍塚青龍殿は、標高220メートルの大舞台に建設され、京都市街を一望することができます。青龍殿には日本三大不動の1つに数えられる国宝 青不動明王が奉納されており、その三大不動の中でも藤原時代の気品に満ちた平安仏画の最高傑作と賞賛されています。
このプロジェクトで私が試みたことは、茶道という日本文化がなぜ生まれたのかを考えることであり、単にデザインによって歴史の再生と新しい表現を試みたのではありません。日本文化の本質は、私たちの中に存在する感覚と自然との関係性を見つめることによって浮き上がってくるのではないでしょうか。
「ガラスの茶室 – 光庵」は日本文化の原点を振り返るきっかけとなることでしょう。
元来、茶道は閉じられた小宇宙という空間の中で生み出されました。
「ガラスの茶室ー光庵」のプロジェクトはこの茶道の文化の延長線上にある様式的な茶室ではなく、なぜこのような日本人が持つ特有の文化が生み出されたのかという根源を問うものです。自然と共に生み出される時間を知覚化することであり、それは物質的なもののデザインから解放され、自然と一体となり、光そのものを感じることだと思いました。
光庵には、掛け軸や、花、畳はありません。
しかし床には、水が造り出す美しい波紋を連想させるような煌めきが広がり、また、ある時間になると天井からは太陽の光とプリズムによって虹色の光が現れ、光の花が茶室を美しく彩ります。
京都の青蓮院門跡境内にある将軍塚は、延暦13 年(794 年) に桓武天皇が訪れ、京都盆地を見おろしながら、京都こそが都の場所にふさわしいと確信し、それをきっかけに都の建設に着手したという、日本の文化を象徴する京の都がはじまった場所とも言えます。
その由緒ある京都から、世界へ巡回し、世界中の方々にも体験して頂ければと考えています。今後も日本文化の原点を考えるような作品づくりをしながら、沢山の方々に新しい体験をもたらすことができればと思っています。