SHARE 小石川建築 / 小石川土木による、宮城県石巻市の「石の祈念堂」
photo©藤井浩司/ナカサアンドパートナーズ
小石川建築 / 小石川土木による、宮城県石巻市の「石の祈念堂」です。
石巻山腹の森の中に震災死者・行方不明者1万8千人の祈念の場所をつくるという計画である。
広範囲に渡る震災であったため、一人一人に対して、また、東日本全域に対しての祈念ができる場所を実現しようとした。
石巻は大震災の被害が非常に大きかっただけでなく、被害があった全域の中で地理的な中心地に当たる。そのため特定の地域だけでなく、被害地域全域に対して祈ることができるよう、形状自体が方角を指し示すようにした。平面形状は円形で北端は久慈、南西端は名取とし約210°の扇型としている。この場所を訪れる人々が甚大な被害を受けた方角を指し示している祈念堂の前に立ち、自然と祈りの方角へ手を合わすことができるように考えた。
祈念堂の材料や工法は、計画地が未整備な場所であること、復興事業の影響から工事種別が限られてくることなどから人手で運搬や施工が可能、かつ地元で手に入る材料での構成を考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
石の祈念堂
石巻山腹の森の中に震災死者・行方不明者1万8千人の祈念の場所をつくるという計画である。
広範囲に渡る震災であったため、一人一人に対して、また、東日本全域に対しての祈念ができる場所を実現しようとした。
石巻は大震災の被害が非常に大きかっただけでなく、被害があった全域の中で地理的な中心地に当たる。そのため特定の地域だけでなく、被害地域全域に対して祈ることができるよう、形状自体が方角を指し示すようにした。平面形状は円形で北端は久慈、南西端は名取とし約210°の扇型としている。この場所を訪れる人々が甚大な被害を受けた方角を指し示している祈念堂の前に立ち、自然と祈りの方角へ手を合わすことができるように考えた。
祈念堂の材料や工法は、計画地が未整備な場所であること、復興事業の影響から工事種別が限られてくることなどから人手で運搬や施工が可能、かつ地元で手に入る材料での構成を考えた。
石巻は日本でも有数の石の産地であり、登米・雄勝玄昌石と呼ばれる特色ある材料が手に入る。しかし現在玄昌石の採掘は再開しておらず入手が困難であったため、この地域の建物屋根・壁解体時に出る材料を集め再利用することとした。解体した玄昌石の状態は様々で、それらを有効に使うため垂直面は小端積、水平面は屋根葺の工法を採用した。これら玄昌石を死者・行方不明者数と同数の枚数以上使用し被害の大きさを表した。廃棄する建材を再度生かす行為は、過去から未来への希望を見い出すことのできる最適な方法と考えた。
毎年3月11日から少し経って春が訪れるころには、付近の桜が咲き、祈念堂のステンレス盤にその風景が映し込む。1年の中でも春になると起こる現象により、震災の記憶を継承していきたいと考えている。
一人一人の祈念、そして東日本全域への祈念とその事実を遠い後世に残すという想いと意志を積層した石空間に託している。
■建築概要
監修:東京大学 生産技術研究所 准教授 川添善行
所在地:宮城県石巻市皿貝 鎮魂の桜の森内
用途:祈念堂、納骨堂
構造:石造
建築:4.07㎡
竣工:2014.12
写真:藤井浩司/ナカサアンドパートナーズ
製作協力:株式会社北嶋絞製作所、新星商事株式会社
location:miyagii,Japan
use:Memorial place
structure:Stone
building area:4.07㎡
photo:Koji Fujii/Nacasa & Partners