SHARE ノイズがファサード等のエクステリアデザインを手掛けた、台湾の「工業技術研究院中分院(ITRI)エクステリア・デザイン」
all photos©Daici Ano
ノイズがファサード等のエクステリアデザインを手掛けた、台湾の「工業技術研究院中分院(ITRI)エクステリア・デザイン」です。
台湾・南投市の工業技術研究院中分院(ITRI)は台湾の産業技術のイノベーションを推進することを目的とする公共研究施設であり、中部サイエンスパークの中核となる施設です。ノイズは台湾のBio Architecture Formosanaと協同で2010年に同研究施設の建築コンペに勝利しました。ノイズはファサード、ルーフスケープ、ランドスケープを含むエクステリア・デザイン全般を手がけ、Bio Architecture Formosanaが建築計画を担当しました。実施設計中に建設用地の変更がありましたが、2015年にオープンを迎えました。
工業技術研究院中分院(ITRI)にはラボラトリー、ライブラリー、最新技術の展示エリア、研究用の温室、カフェなどの様々なプログラムが収容されています。台湾の建築環境評価の最高基準であるDiamond classを獲得しています。最新技術を積極的に導入し、サイエンスパークの中核施設にふさわしい高度な環境を備え、また台湾の技術革新を象徴する研究施設を実現しました。
※以下の写真はクリックで拡大します
all drawing credit:noiz arcihtects
以下、建築家によるテキストです。
ファサード・デザイン
この研究施設では、ラボラトリーごとに必要な条件によって異なる明るさが求められます。しかしラボラトリーごとに開口部の大きさや形状を変えて明るさを調整することは不可能であり、そのような解決法では結果として無秩序な外観を生み出し、好ましくありません。加えて、研究施設に必要な諸機能を満たすために高度な設備サービスが求められ、非常に多くのダクトやパイプがファサード上に露出して設置されており、将来においてさらに増設する可能性もあります。
これに対する解決法として、私たちは4000枚のフィンで構成される柔らかいヴェールのようなファサードのレイヤーをカーテンウォールから離して設け、ダブルスキン構成の外装システムをデザインしました。ダブルスキン構成によって間の設備スペースを隠ぺいでき、ランドマークである研究所の外観を損なわずに、将来のパイプやダクトの増設に対応できる柔軟性を確保できます。 私たちは様々なコンピューテーショナルスタディーを行い、環境・経済・機能面で最大限効果を発揮するフィンの3Dパターンを決定しています。内部空間の光環境はフィンの密度や角度を調整することにより調節でき、また同時にフィンのシステムによって、施設の外観に統一感がもたらされています。
これらのフィンは魚群のようにも見えます―様々な角度で設置されていながらも、全体として大きな流れをつくりだし、建物にダイナミックな印象を与えています。
はアルミのエキスパンドメタル製のフィンはファサード全体の軽い印象をつくりだしており、同時に内部から外部の眺望もある程度のぞむことができます。
デザインプロセス
支柱の位置、動線、接する各室に必要な自然光の条件などの様々なルールに基づいて、フィン生成プログラムを作成しました。さらに減額のため、外観のバランスと建設費といった追加のパラメーターを含めた最適化プログラムを作成しました。最終的には3タイプのフィンで構成されるファサードを実現することに成功し、大幅な減額を達成できました。
それに加えて、私たちは年間環境負荷を低減すると同時に技術革新を祝福するような素晴らしい演出効果をもたらすため、ファサードの構成全体を変化させる可動式ファサードを提案しました。ファサードのメカニズムは上部に電気モーターが内蔵された垂直支持材で構成される比較的シンプルな システムになっており、全体の動きはギア比を調整することで調節できます。ノイズはアラップと協同で施工図の段階まで可動式ファサードの設計を進めてきましたが、コスト的な条件から実現することができませんでした。 今回は動くインタラクティブなファサードシステムの実現はできなかったものの、私たちはそういったシステムによって建築環境および機能を改善するとともに、もっと人間的で豊かなインタラクションが活性化されると信じており、FLIPMATA等の別のプロジェクトで、このコンセプトをさらに追求し続けています。
私たちはプロジェクション・マッピングの技術を使って施工時のフィンの位置のマーキングシステムも開発しました。施工時にはある程度の間違いや寸法の誤差などは避けられません。フィン設置の精確な位置出しをするには建物の精度の高い計測が必要ですが、複雑な形状をもつ建物はかなりの作業が必要になります。
加えて、フィンの位置決めを図面の数値をもとに現場でひとつひとつ実測して行うのは、膨大な時間と労働がかかります。しかし、プロジェクトマッピングの手法を用いてカメラで精確な位置を投射して、効果的に簡単に位置決めができます。 しかし作業時間や精度を検証できなかったため、今回の実行は見合わせることになりました。 しかし近い将来にはこの手法を実用化できるだろうと予測しています。
■建築概要
タイトル:工業技術研究院中分院(ITRI) エクステリアデザイン
所在地:台湾南投市
用途:研究施設
竣工:2014年12月
プロジェクトチーム:豊田啓介(パートナー)、蔡佳萱(パートナー)、大野友資、堀川淳一郎、李俊瑋、アレックス・ニゾ /noiz
写真:阿野太一
協同:Bio-Architecture Formosana