末光弘和+末光陽子 / SUEP.による、福岡県八女市の住宅「傘の家」
サムネイル:末光弘和+末光陽子 / SUEP.による、福岡県八女市の住宅「傘の家」

末光弘和+末光陽子 / SUEP.による、福岡県八女市の住宅「傘の家」

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北側からの俯瞰

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アプローチ all photos©中村絵写真事務所

末光弘和+末光陽子 / SUEP.が設計した、福岡県八女市の住宅「傘の家」です。

この建物の特徴は、大きな屋根を支える木造の架構である。フラットな大屋根は、母屋と離れの2カ所で、大小2つの傘状の構造体になっている。高く持ち上げられた傘の下には、家族が集まる場が広がっており、母屋の傘は家族がくつろぐリビングダイニングが、離れの傘にはゲストを招くための土間と茶室となっている。

この2つの傘は、場をつくるフレームであり、同時に日照時間が多いこの地域に適した家の環境装置にもなっている。勾配屋根で暖められた空気は、傘に沿って上昇し中央のトップライトで集められ、鉄骨柱を通してファンで床下に送り込まれる。250m2近くもある大きな屋根で得られた日射エネルギーは、床下の蓄熱体に蓄えられる。晴れた日には冬でも50℃近くまで暖まる屋根の空気が送り込まれることで、床からは暖房器具のような温風が吹き出す。床温度は常に2-3度くらい温かく、夜間の冷え込みも防止している。夏の日射はオーバーヒートを防ぐため、トップライト内で排気している。

※以下の写真はクリックで拡大します

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母屋から離れをみる

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母屋リビング

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母屋ダイニング

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傘のトップライト

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浴室

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離れ入り口から水盤をみる

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離れ

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離れ夕景

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平面図

以下、建築家によるテキストです。


「傘の家」Double umbrella house

福岡県八女市に建つ平屋の木造住宅。日常の喧噪を忘れられる、自然豊かなプライベート空間が求められた。敷地は、接道したふたつの土地が背中合わせに繋がっている変形土地で、それぞれの敷地に配置した母屋と離れがひとつの屋根で一体的に接続されている。

この建物の特徴は、大きな屋根を支える木造の架構である。フラットな大屋根は、母屋と離れの2カ所で、大小2つの傘状の構造体になっている。高く持ち上げられた傘の下には、家族が集まる場が広がっており、母屋の傘は家族がくつろぐリビングダイニングが、離れの傘にはゲストを招くための土間と茶室となっている。

この2つの傘は、場をつくるフレームであり、同時に日照時間が多いこの地域に適した家の環境装置にもなっている。勾配屋根で暖められた空気は、傘に沿って上昇し中央のトップライトで集められ、鉄骨柱を通してファンで床下に送り込まれる。250m2近くもある大きな屋根で得られた日射エネルギーは、床下の蓄熱体に蓄えられる。晴れた日には冬でも50℃近くまで暖まる屋根の空気が送り込まれることで、床からは暖房器具のような温風が吹き出す。床温度は常に2-3度くらい温かく、夜間の冷え込みも防止している。夏の日射はオーバーヒートを防ぐため、トップライト内で排気している。

建物の配置と屋根形状の決定には様々な検討を行い、太陽のエネルギーを最大限活用できるようにしている。敷地南側に隣接した公園には、小さな城跡である丘と高木があり、敷地南端では日射が望めないため、日射を受けやすいよう、南北の敷地に股がるように建物を配置した。家族があつまる傘の部分は、受熱量を最大化するように高さと勾配を決めている。南面からの日照が望めないため、中央にトップライトを設けて採光を確保している。

北側の広い庭には、日射が大きいため、井戸水を掘って水盤をつくり、日射をキャンセルし、夏の涼を取りながら、美しい眺めとアプローチをつくっている。水盤には川砂利を敷き、庭と連続した遠浅のような断面とした。北側の庭は、茶室から見たときに南からの光が当たり、室内からのよい眺望をもたらしている。

2つの傘は、家族のよりどころをつくり出す2本の大木のように、自然に寄り添う静かな住環境をつくり出している。(末光弘和)

■建築概要
設計者:末光弘和+末光陽子/SUEP.
所在地:福岡県八女市
主要用途:専用住宅
敷地面積 795.32m2
建築面積 193.58m2
延床面積 156.09m2
階数:地上1階
構造:木造
竣工:2016年3月
写真:中村絵写真事務所

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  33 株式会社 SUEP.
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