宮城島崇人建築設計事務所による、北海道の既存建物を改修した、牧夫のための住宅「丘の家/牧場に建つ家 no.1」 photo©阿野太一
宮城島崇人建築設計事務所 による、北海道の既存建物を改修した、牧夫のための住宅「丘の家/牧場に建つ家 no.1」です。
サラブレッド牧場を取り巻く豊かな環境を活かしながら、牧場機能を整備するプロジェクトが進行中である。そこでは、漠然とした環境に輪郭を与え、そこに暮らす人間と環境との新たな関係を生みだすような建築群を思考している。この度、牧夫のための小さな住宅が竣工した。15年程放置されていた木造住宅の基礎と軸組みを活かした全面的な改修である。
小さな住宅だが、外部に広がる風景や環境と響き合うことで、周辺環境そのものの大きさや広がりの中で生活するような空間がつくれないかと考えた。そこで、主な生活空間ができるだけ外部に面するよう、水回りと寝台のコアを入れ子状に配置し、ロの字型をしたひとつながりの廊空間をつくった。玄関とテラスの両方からアクセスできる回遊性のあるプランは、住宅と牧場を往復する牧夫の生活に適したおおらかなプランである。山で大量発生する虫の侵入を拒むため、通気層の不要な外断熱EPSボード透湿性左官仕上げとし、大工が製作した木サッシの水平連窓を南面に設け、牧場の風景と向き合わせた。
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宮城島崇人建築設計事務所による、北海道の既存建物を改修した、牧夫のための住宅「丘の家/牧場に建つ家 no.1」 photo©阿野太一
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宮城島崇人建築設計事務所による、北海道の既存建物を改修した、牧夫のための住宅「丘の家/牧場に建つ家 no.1」 image courtesy of 宮城島崇人建築設計事務所
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改修前の写真。
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以下、建築家によるテキストです。
丘の家/牧場に建つ家 no.1
HOUSE on the Hill / HOUSE no,1 in THOROUGHBRED FARM
サラブレッド牧場を取り巻く豊かな環境を活かしながら、牧場機能を整備するプロジェクトが進行中である。そこでは、漠然とした環境に輪郭を与え、そこに暮らす人間と環境との新たな関係を生みだすような建築群を思考している。この度、牧夫のための小さな住宅が竣工した。15年程放置されていた木造住宅の基礎と軸組みを活かした全面的な改修である。
小さな住宅だが、外部に広がる風景や環境と響き合うことで、周辺環境そのものの大きさや広がりの中で生活するような空間がつくれないかと考えた。そこで、主な生活空間ができるだけ外部に面するよう、水回りと寝台のコアを入れ子状に配置し、ロの字型をしたひとつながりの廊空間をつくった。玄関とテラスの両方からアクセスできる回遊性のあるプランは、住宅と牧場を往復する牧夫の生活に適したおおらかなプランである。山で大量発生する虫の侵入を拒むため、通気層の不要な外断熱EPSボード透湿性左官仕上げとし、大工が製作した木サッシの水平連窓を南面に設け、牧場の風景と向き合わせた。
廊の部分は、水平方向に広がる周辺環境へ意識を向かわせるように天井を下げる。一方、コアの上部は屋根なりの天井とすることで、高さ方向に広がりをもたせ、採光と換気を担うトップライトを設けた。このハットのような形の天井は、周辺環境への意識と、住宅の”内向きの奥行き”とでも言うものへの意識をバランスさせる。同時に、吹き出し温度の高いFFストーブの温風を遠くまで届けたあと、上部に暖気をためることに寄与する。集めた暖気は、ファンを用いて床下に送風し、空気を循環させている。コアと天井の間には200mmの隙間があり、柱間910や1820といった凡庸で小さなスケールに揺さぶりをかける。
プロポーションの異なる廊空間は、四周に広がる環境と響き合い、多様な空間となる。緩やかな牧草地の連なりを感じられる、水平連窓を持つサンルームのような廊や、地窓のある静謐な廊、山に正対する廊などが連続、曲がり角でシーンが切り替わる。牧夫は、周辺環境に色付けされたこの多様な廊の中に居場所を見出し、生活を営む。環境と人間の生活の間にみずみずしい関係を築きたい。
■建築概要
場所:日高郡新ひだか町三石歌笛
設計:宮城島崇人建築設計事務所
設計期間:2015年3月〜2015年12月
竣工:2017年3月
主な用途:牧夫用住宅
用途地域:都市計画区域外
建築面積:54.65㎡
延床面積:54.65㎡
構造階数:木造平屋
施工:新興建設
撮影:阿野太一