SHARE 元木大輔 / DDAAによる、TAKAIYAMAの個展の会場デザイン「TAKAIYAMA inc. EXHIBITION 3F/B.C.G」
元木大輔 / DDAAによる、TAKAIYAMAの個展の会場デザイン「TAKAIYAMA inc. EXHIBITION 3F/B.C.G」です。TAKAIYAMAは山野英之によるグラフィックデザイン事務所です。
グラフィックデザイン事務所TAKAIYAMAの山野さんから、個展をするから会場をデザインしてほしい、という依頼を頂いた。会場はデザイン小石川という2018年まで運営されていたスペースだ。実は僕らが設計をはじめたときすでに、建築家の中山英之さんが書いた「デザイン小石川とグラフィックデザイン」というテキストがあった。山野さんのグラフィックデザインと会場になるデザイン小石川を起点にしつつ、建築とグラフィックデザインのとても重要な接点「グリッド」についての文章だ。これがとても面白く、僕らの計画もこのテキストに引っ張られながら「グリッドをどう扱うか」ということを大きな要素の一つとして考えはじめたのだった。
建築とグラフィックデザインにおけるグリッドには決定的に違うことがひとつある。グラフィックデザインのグリッドシステムはあくまでもシステム上の罫線で実際には見えてこないのに対して、建築のグリッド(通り芯)の交点には「柱」がおちてくるという点だ。建築のグリッドは目に見えるのだ。ただ、むしろこの違いはうまく使えるのではないかという気もしていた。なぜならグラフィックデザイナーが使いこなしているグリッドを可視化することで、彼らの作業の背景そのものを展示できるのではないかと思ったからだ。
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以下、建築家によるテキストです。
グリッドシステムとドミノシステム
グラフィックデザイン事務所TAKAIYAMAの山野さんから、個展をするから会場をデザインしてほしい、という依頼を頂いた。会場はデザイン小石川という2018年まで運営されていたスペースだ。実は僕らが設計をはじめたときすでに、建築家の中山英之さんが書いた「デザイン小石川とグラフィックデザイン」というテキストがあった。山野さんのグラフィックデザインと会場になるデザイン小石川を起点にしつつ、建築とグラフィックデザインのとても重要な接点「グリッド」についての文章だ。これがとても面白く、僕らの計画もこのテキストに引っ張られながら「グリッドをどう扱うか」ということを大きな要素の一つとして考えはじめたのだった。
建築とグラフィックデザインにおけるグリッドには決定的に違うことがひとつある。グラフィックデザインのグリッドシステムはあくまでもシステム上の罫線で実際には見えてこないのに対して、建築のグリッド(通り芯)の交点には「柱」がおちてくるという点だ。建築のグリッドは目に見えるのだ。ただ、むしろこの違いはうまく使えるのではないかという気もしていた。なぜならグラフィックデザイナーが使いこなしているグリッドを可視化することで、彼らの作業の背景そのものを展示できるのではないかと思ったからだ。
そこで、会場にあらわれているグリッドをさらにはっきりとさせるべく柱を増殖させることにした。もともと会場には3本の650mm角の柱がたっていた。フェイクの柱を13本増やし、16本の柱がにょきにょきとはえる構成にした。約7メートルのスパンだった柱と柱のスパンを3.5mのグリッドにひきなおした。そしてそれぞれ1柱に対して1コンテンツ展示するというルールをつくり、展示内容の詳細をTAKAIYAMAに詰めていただいた。
また、柱の入り口方向から見える2面には最終的な成果物をギャラリーのように陳列し、裏の2面にはアウトプットに至る考え方やスタディなど雑多な情報を展示した。そうすることで空間としてはひと続きでありながら「ホワイトキューブのような展示」と「情報量の多い展示」が同時に実現できる。グラフィックデザイナーの考え方や構造、骨格を説明しつつ、最終的なアウトプットもきれいに展示することができる。
そしてよく見てみるともう一つ会場にグリッドがあった。床のPタイルを剥がした痕だ。会場のサイン計画はこのグリッドを使うことにした。もちろんサインのグラフィックデザインはTAKAIYAMAによるものだ。床の痕なので普段は罫線として見えなくなってしまうグリッドがそのまま残っている。実は壁面に展示してある写真や印刷物は、この床のグリッドをてがかりにレイアウトされている。この展示の構成そのものが、会場に存在するグリッドをつかったTAKAIYAMAによるグラフィックデザインになっているのだ。
■建築概要
TAKAIYAMA inc. EXHIBITION 3F/B.C.G
施主: TAKAIYAMA inc.
所在地: 東京都文京区
主用途: 展覧会会場
設計:元木大輔/DDAA
延床面積: 243m²
完成: 2017年9月
撮影: Ogawa Masaki