トラフのウェブサイトに、滋賀の「開かれた家/大津の住宅」の写真が9枚掲載されています。
SE構法(木造ラーメンのシステム構法)を開発したエヌ・シー・エヌが2014年に主催したMAKE HOUSE展において、同構法のパーツ化というテーマの元、私たちは「開かれた家」というコンセプトを提案した。
部材のパーツ化と、金物のジョイントによる工法の単純化で、構造現しの意匠が容易になり、住み手に建物の構造を理解しやすくし、家をつくるという専門領域を開くことができる。また、シンプルな軸組と工法は将来的な増改築が容易になり、部屋の組み換えや家の境界も自由にでき、多彩な住まい方をもたらす。例えば1階をギャラリーや教室として、街に対して開かれた家をつくることもできる。
この「開かれた家」というコンセプトに共感したクライアントのために、4人家族のための住宅を計画した。敷地は、琵琶湖を望むひな壇状に造成された傾斜地で、定期的に行われる料理教室のための大きめなキッチンと、空気がゆるやかにつながる一体的な空間をのぞまれた。
隣家を避けて眺望が確保できるように、敷地の中で大きく角度を振る配置とした。1階は、アイランドキッチンのカウンターを拡大した大きなダイニングテーブルを中心に、広い土間空間と連続するリビング、水回りが取り巻く、おおらかなワンルームの空間になっている。2階は中央の吹き抜けを介してつながっており、格子状の構造グリッドを用いた段差で、スキップフロアのような構成を持つ。寝室、子供部屋、将来的な余白のスペースを、その段差がゆるやかに仕切り、1階と同様にひとつながりの空間となっている。
柱・梁の基本パーツと、小梁などの追加パーツに分け、基本パーツで骨組をつくり、追加パーツを使って床を取り付けている。MAKE HOUSE展で提案した「開かれた家」のとおり、ライフスタイルの変化に対応するオープンなシステムにすることで、家をつくる行為そのものを開かれたものにしつつ、料理教室を通じ、街に対しても開かれた家になる。
将来的な余白を残した無垢の構造体が、住み手をおおらかに受け止める。