SHARE 戸田智建築設計事務所による、兵庫・西宮市の住宅兼店舗「3in1」
戸田智建築設計事務所が設計した、兵庫・西宮市の住宅兼店舗「3in1」です。
夫婦と2匹のミニチュアダックスフントのための建物。
住居に加え、彼らの仕事場であるヘアサロン、そして、数台のバイクの保管場所とその整備スペース(ホビールーム)が求められた。
また、店舗としての「顔」をつくることも要望のひとつであった。敷地は交通量の多い幹線道路から少し街区に入った、所々に店舗が点在する都市部と住宅街の境界のような場所に位置していた。
元々の計画地は要求に対して小さすぎた為、隣接する両親宅から庭の一部を借受けて可能な限り広くなるように境界線の再設定を行った。
その結果、変形したL型形状となった敷地に性格の異なる3つのスペースをどのように計画するかが主題となった。
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以下、建築家によるテキストです。
夫婦と2匹のミニチュアダックスフントのための建物。
住居に加え、彼らの仕事場であるヘアサロン、そして、数台のバイクの保管場所とその整備スペース(ホビールーム)が求められた。
また、店舗としての「顔」をつくることも要望のひとつであった。
敷地は交通量の多い幹線道路から少し街区に入った、所々に店舗が点在する都市部と住宅街の境界のような場所に位置していた。
元々の計画地は要求に対して小さすぎた為、隣接する両親宅から庭の一部を借受けて可能な限り広くなるように境界線の再設定を行った。
その結果、変形したL型形状となった敷地に性格の異なる3つのスペースをどのように計画するかが主題となった。
まず、限られた接道面で住居、店舗、バイク、車(駐車場)という4つの動線を効率的に解決するため、住居を屋外階段によって完全な2階とした。
住居は、L型の敷地内で確保出来る最も大きな整形平面の中心に光庭を置き、明るさと回遊性を持たせつつ、玄関から寝室まで徐々にプライバシー性が増すよう居住空間を配置することで、来客にもスムースに対応出来る構成とした。
1階ではL型の直角部に入口を設け、片方に店舗、もう片方にホビールームを配置した。前面道路に面する店舗には入口とは別に内部が窺える大きな開口部を設け、それを引き戸として設えることでホビールームへのバイクの出入りを可能としている。
外観においては、店舗として生活感の表出を避ける目的から、接道面には一般的な整形の開口部を設けないようにした。
代わりに、採光のためのハイサイドライトを計画したが、高度斜線の影響で屋根形状はうねりながら上方に伸びることになり、開口は鋭角を伴う形状となった。そこで、この形をモチーフとして店舗部分の開口形状にも適用することで、3つのスペースを包み込むファサードに全体的なまとまりを与えている。同時に、店舗の「顔」としての特徴を得ることも意図した。
対話の中で徐々にわかってきたことは、3つのスペースの明確な分割が望まれていることだった。用途が混在することで期待される快活な状態では無く、それぞれの目的を満たす静謐な関係性が要求されていた。その為、独立した空間として設えることは自明となったが、目的と空間が1対1対応になるその構成はいかにも機能主義的であることが気に掛かった。そこでそれぞれのスペースに空間的な個性を与え、例え目的が失われたとしても別の使い方が見出せるような、つまり空間個々が持つ魅力が不変のものとなるような在り方を目指した。
具体的には、法的に規定される外形と内部空間の要求のせめぎ合いによって生まれるレベル差、及び、開口部がつくりだす視線の抜けを用いて空間としての差別化を図っている。その上で、当初の目的に相応しい仕上げをそれぞれのスペースに施すことで個性ある3つの空間が一つのヴォリュームに内包されることとなった。
目的の異なるそれぞれのスペースには固有の時間が流れているが、建主は自由にその境界を行き来しており、職+住+趣味一体の生活を楽しんでいるように見える。同じ場所にあることの利便性を享受しつつも、空間の独立性を合わせ持つことによって、この建物は将来も含めた複数の時間軸を潜在的に抱えている。そこに現代の都市型住宅としての、一つの可能性があるのではないかと考えている。
■建築概要
所在地:兵庫県西宮市大島町
主要用途:住宅兼店舗
構造規模:木造/地上2階
敷地面積:142.22㎡
建築面積:71.68 ㎡
延床面積:143.36㎡
構造:片岡構造
施工:株式会社池正
竣工:2018年11月
撮影:笹の倉社 / 笹倉洋平