SHARE 森本建築事務所 / 森本雅史+森本景二+森本昭博による、三重・伊賀市の、事務所兼用住居「伊賀上野のオフィス」
株式会社森本建築事務所 / 森本雅史+森本景二+森本昭博が設計した、三重・伊賀市の、事務所兼用住居「伊賀上野のオフィス」です。
「城下町伊賀上野の地域特性を活かした新しい風景のデザイン、景観地域でのオフィスと住居の在り方を追求する」ことをテーマに計画した。
伊賀上野の景観区域に建つオフィス兼住まいの計画である。伊賀上野は城下町として栄え、お城に近い通りから順に本町通り・二之町通り・三之町通りの三筋があり、敷地が接道する「三之町通り」は、かつては武士や商人が住んでいた面影を残す歴史ある街並みに敬意を払いながら計画を進めた。
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以下、建築家によるテキストです。
「城下町伊賀上野の地域特性を活かした新しい風景のデザイン、景観地域でのオフィスと住居の在り方を追求する」ことをテーマに計画した。
伊賀上野の景観区域に建つオフィス兼住まいの計画である。伊賀上野は城下町として栄え、お城に近い通りから順に本町通り・二之町通り・三之町通りの三筋があり、敷地が接道する「三之町通り」は、かつては武士や商人が住んでいた面影を残す歴史ある街並みに敬意を払いながら計画を進めた。
私たちは「通りに面して土塀や門、外壁によって壁面ラインをそろえる」という伊賀上野の城下町の街並みや骨格を維持しつつ、現代の生活にも対応した建物を計画した。オフィスと来客・住居用の駐車場を建物の一部として取り込み、全体を瓦屋根で覆うことで屋根軒線の連続性を保ち、都市景観の骨格を生かしたシンプルな構成とした。瓦の大屋根と桧格子による外観がオフィスのサインとなり、景観を損ねる看板サインがなくても認識されているという。そして道路に面して平屋のオフィス・駐車場を配置し、2つの中庭を挟んだ奥に住居を計画することで、街の骨格を守りながら道路とオフィス、オフィスと住居がそれぞれ適度な関係性を保つことができた。
住まいは共働きと職住近接を考慮してキッチンを中心にした最短距離での家事動線となるように計画した。木デッキの住居用中庭と床石と敷瓦による事務所庭を設置して、プライバシーの確保とともに2種類の庭を楽しむ贅沢な空間となった。中庭を設けることでリビングダイニングや子供室などの各部屋に光と風を呼び込み、快適な住まいとした。
構造材・造作材をはじめ外壁・軒裏・格子など使用した木材は可能な限り県産材を用いることで、環境への配慮とともに地元林業の活性化に寄与している。また可能な限り職人の手加工による仕事を残すことで伝統技術の継承につなげたいと思った。
「周辺環境との調和・オフィスの防犯・光と視線の調整」の3つの機能をもつ桧格子(30×90@100)は、実寸のモックアップをつくって、寸法や固定方法などを大工とともに検討した。また軒樋は必要な勾配を確保しながら屋根の軒線ラインを水平に通すために2重樋とした。
敷地周辺を含む「伊賀上野城下町の文化的景観」は「日本の20世紀遺産20選」に選定施されている。戦災を免れたため、城下町開設時の町割が現在も保たれていることが大きな要因という。しかし 家屋の建替えが進み、その多くは道路側に駐車場を確保するために建物が道路から後退している。またかつて武家屋敷だった大きな区画が無造作に数区画に分割され、分譲された箇所も見られる。そのため瓦屋根の軒先、格子、土塀による沿道景観が崩れ、個性が失われつつある。
こうした中で景観を守り、先導していくために建築・デザインが持つ責任は大きい。本計画が崩れつつある伊賀上野の城下町景観を取り戻すきっかけになることを祈っている。
■建築概要
名称:伊賀上野のオフィス
所在地:三重県伊賀市
主要用途:事務所兼用住居
設計・監理:株式会社森本建築事務所/森本雅史・森本景二・森本昭博
施工:株式会社福田豊工務店
面積
敷地面積:639.81㎡
建築面積:331.72㎡
延床面積:391.52 ㎡
階数:地上2階(一部平屋)
高さ
軒高:6.4m
最高高さ:8.29m
構造:在来木造工法 基礎 べた基礎(地盤改良)
期間
設計期間:2016年1月~2016年12月
施工期間:2017年1月~2017年11月
写真:鳥村鋼一
受賞:
令和元年度日事連建築賞(小規模建築部門)「奨励賞」
日本建築家協会 優秀建築選2018
第7回チルチンびと住宅建築賞 若手建築家部門「最優秀賞」
第37回三重県建築賞「知事賞」
第10回建築コンクール-醸しだす建築-「佳作」