SHARE 鈴木理考建築都市事務所による、福岡市の住戸「エル・ビル」
鈴木理考建築都市事務所が設計した、福岡市の住戸「エル・ビル」です。
福岡市内にある、築25年RC造集合住宅の、最上階のワンフロアを全て一新し、建物所有者の新たな住居とした計画。古いものを適宜残しながらの「リノベーション」ではなく、構造躯体は既存資源として利用するものの、施主の要望もあり、環境性能や仕上などの全てを完全に刷新し、「リファイン」した。プランは原型をとどめず、一部は外壁の位置すらも変え、サッシ寸法も全てやり直した。
「/」を 「ほどく」
現代の産業化された建物の多くは、その窓や外壁によって生活環境を密閉し、「建築/自然」「内/外」と明確に分けて、「/」の部分において自然排除的(あるいは他者排除的)に機能している。そのように単純な切断面、あるいは硬い殻のようになってしまっているこの「/」を、複層的で曖昧な存在に「ほどく」ことによって、自然を排除せず、暮らしが何気なく自然の中へ誘われて、楽しくそして豊かにそれらと一体となって生活できる、そのような建築はできないだろうかと考えた。今回はそういったことを大都市の、特に屋外との接触の少ない集合住宅の改修の中で試みた。
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以下、建築家によるテキストです。
福岡市内にある、築25年RC造集合住宅の、最上階のワンフロアを全て一新し、建物所有者の新たな住居とした計画。古いものを適宜残しながらの「リノベーション」ではなく、構造躯体は既存資源として利用するものの、施主の要望もあり、環境性能や仕上などの全てを完全に刷新し、「リファイン」した。プランは原型をとどめず、一部は外壁の位置すらも変え、サッシ寸法も全てやり直した。
「/」を 「ほどく」
現代の産業化された建物の多くは、その窓や外壁によって生活環境を密閉し、「建築/自然」「内/外」と明確に分けて、「/」の部分において自然排除的(あるいは他者排除的)に機能している。
そのように単純な切断面、あるいは硬い殻のようになってしまっているこの「/」を、複層的で曖昧な存在に「ほどく」ことによって、自然を排除せず、暮らしが何気なく自然の中へ誘われて、楽しくそして豊かにそれらと一体となって生活できる、そのような建築はできないだろうかと考えた。今回はそういったことを大都市の、特に屋外との接触の少ない集合住宅の改修の中で試みた。
テラス ― 複層的で曖昧な「/」として
まずは、構造躯体以外のすべてを取り払い、温熱環境や設備機器などを一新した上で、外部である2つの大きなテラス(「南側テラス」と「北側テラス」)を新設した。(これによって新しく、「母屋と離れ」のような平面となった。)
「南側テラス」は、居間に隣接しており、既存外壁と新設の木製建具との間にできた屋外の空間と、そのさらに外側の空間との2層の屋外空間でできている。
2層のうち、内側にある層には、フローリングに合わせたデッキを敷き、壁も室内と同仕上とした。大型の木製の引違いを開けると、居間と一体化する。そこには小さなラウンジもあり、食事をしたり寛いだりできる場所である。
外側の層では、床にタイルを敷き、既存柱や外壁の小口には鏡面材を貼り、手摺や既存外壁の上部には照明を組み入れた。
これらの操作により、内部空間がテラスへと連続し、鏡面材には内部が映り込み、夜には手摺や外壁が新たな境界のように浮かび上がる。内/外の境界が曖昧となり、暮らしが何気なく外部へと誘われ、自然に建具を開け放ち、大気の中へと生活の領域が拡がっていく。
洗面、浴槽、物干し場などのある「北側テラス」は可動羽のルーバーにより、隣接建物からの視線は遮りながらも、光や風は取り込める。朝の大気の中で洗面をしたり、露天感覚で入浴することができる。ルーバーの背面の建具を閉じると屋内化することもでき、季節によって、あるいは時間によって、外としたり内としたり自由に切り替えられる場所としている。
■建築概要
工事種別:改修
設計:2013-2014年
竣工:2015年11月
用途:住宅(集合住宅の6階ワンフロア)
改修部分床面積:178.84㎡
写真:矢野紀行(一部、鈴木理考)
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・床 | ウッドデッキ | |
外装・壁 | 外壁 | 漆喰 パラリ仕上(荒木富士男) |
外装・建具 | アルミサッシ | |
外装・建具 | 木製サッシ | |
外装・その他 | 軒天 | |
内装・床 | 床 | |
内装・壁 | 壁 |
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