前田茂樹 / ジオ-グラフィック・デザイン・ラボが設計した、大阪・泉大津市の高架下につくられた広場「もんとぱーく」です。
もんとぱーくは、泉大津市の掲げる、「アビリティタウン」(健康を「アビリティ」と捉え、市民一人ひとりが「能力」、「技量」、「才能」を伸ばすまちづくり)構想の、実証フィールドとして、南海電鉄の南海本線高架下につくられた広場です。広場の土地は、所有する南海電鉄が泉大津市へ無償貸与し、市が広場整備費負担・管理・運営を行っています。ジオ-グラフィック・デザイン・ラボへの、泉大津市と南海電鉄の要望は、「今後の泉大津駅-松ノ浜駅間の高架下を活用する、市民共創のまちづくりの実証フィールド」「使い方の決まった遊具を配置するのではなく、子どもたちが自ら遊び方を考え出せるような場所」でした。
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以下、建築家によるテキストです。
子どもたちのアビリティを伸ばす居場所づくり
もんとぱーくは、泉大津市の掲げる、「アビリティタウン」(健康を「アビリティ」と捉え、市民一人ひとりが「能力」、「技量」、「才能」を伸ばすまちづくり)構想の、実証フィールドとして、南海電鉄の南海本線高架下につくられた広場です。広場の土地は、所有する南海電鉄が泉大津市へ無償貸与し、市が広場整備費負担・管理・運営を行っています。ジオ-グラフィック・デザイン・ラボへの、泉大津市と南海電鉄の要望は、「今後の泉大津駅-松ノ浜駅間の高架下を活用する、市民共創のまちづくりの実証フィールド」「使い方の決まった遊具を配置するのではなく、子どもたちが自ら遊び方を考え出せるような場所」でした。
柱を木立、高架を屋根に見立てる
高架を支えるコンクリートの柱を、ただ柱と見れば公園にはジャマな存在かもしれませんが、高架に十分な高さがあるので、日光が入って明るい木立に見立てれば、子どもにとって魅力的な空間に変わります。また屋根付きの屋外空間であり、天候に左右されずにイベントの予定が立つ利点があります。私たちは、「広場」に「高架下の柱がある」矛盾を、柱や屋根があるからこそ成立する、遊びたくなる広場空間の可能性へと、想像力で読み替えました。
高架下が変わったことを印象付ける
アーチ広場、芝生ステージ広場、芝生広場の3つの広場から構成され、アーチ広場では、森のような柱とアーチが入り混じった空間を活用して、子どもたちが大人には思いつかないルールを作って遊びを楽しんでいます。アーチのグリーンとライトグリーンは黒板塗料なので、イベントの際にはチョークで落書きを楽しめます。アーチの高さに合わせて、高架の柱にも2.5mまでの高さで、ベージュの配色を施したことや、アーチの合間に仕込んだ照明で、夜間は高架下面を間接的に照らすことで、周囲から高架下が広場に変わったことが遠目にも伝わります。
新しい生活様式に必要な場所
芝生ステージ広場は、キッチンカーが乗り入れ可能な仕様としており、イベント開催時の中心的な空間となることが想定されています。運営を直営で行っている市は、例えばキッチンカーを1日(数時間)出店して300円など、イベントでの施設利用料は低価格に抑えていく方針です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりイベント延期が続いていますが、毎週土曜にはマルシェが開かれるなど、定期的な催しが根付けば、感染症と共に生きる時代に、この開放的な屋外広場の存在は、市民に欠かせないものに育っていきます。
市民共創で育てていく場所
芝生広場は、子育て世帯が子どもを見守りながら、雨天でも芝生空間で幼児を遊ばせることの出来る空間となっています。 泉大津市には、気軽に子育て世代が来れる公園・緑地が少なく、屋外空間が気軽に腰を下ろせる段差があり、本の読み聞かせや(子供が会社経営を体験する)子ども商店プロジェクトなどで利用してみたいとの反響がありました。
広場の名称は、今後の高架下の玄関となるという意味で、門(もん) と 広場(ぱーく)の造語から、市民投票で名付けられました。つくって終わりではなく、ここからがスタートです。未来の広場は、豊かな生活文化をシェアするため、官民市民がみな少しづつお互いの持ち物を出し合って、共に考え創り上げる場所になるだろうと考えています。私たちのチームは、その場所のポテンシャルを見出し、プロとしての知見を持って、共に考え創り上げる一人となるように引き続き支援をしていきたい。
■建築概要
設計:ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ
構造設計:tmsd萬田隆構造設計事務所
グラフィック:UMA / design farm
施工:ビームスコンストラクション
所在地:大阪府泉大津市
時期:2020年3月
撮影:笹の倉舎 / 笹倉洋平