大野力 / sinatoが設計した、東京・新宿区の、JR新宿駅前のロータリーを再整備した広場「Shinjuku Station East Square」です。アーティスト松山智一の彫刻と円形テーブル等の関係性でこの場所固有の体験や居心地をつくることを目指しました。
ニューヨークを拠点に活動するアーティストの松山智一氏と共に、JR新宿駅前のロータリーをパブリックアートのある広場として再整備した。
元々ロータリーには直下にある地下街の為の排煙塔が設置されており、通行人が立ち入らぬよう柵で囲われていたが、その排煙性能を損なわずに、道路交通上の安全性や地域の方の要望を満たす新たな居場所をどうつくるか、またそこにアートをどう共存させるかが主題となった。
僕らは既存の排煙塔を解体し、松山氏による高さ7mを超える彫刻の台座を兼ねた巨大な円形テーブルを設置することにした。テーブルには新たな排煙機構を設け、彫刻を支持するのに必要な構造を備えた。
テーブルの席に着く人々は、自ずと中央に立つ彫刻と至近距離で向き合うこととなる。また座る位置によって彫刻は姿を変え、その日の天気や時間帯によっても異なる表情を見せる。つまりテーブルは人々の滞留を促すストリートファニチャーであると同時に、人々と彫刻を繋ぐ体験装置でもあるのだ。
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以下、建築家によるテキストです。
都市での新たな居方をつくる
ニューヨークを拠点に活動するアーティストの松山智一氏と共に、JR新宿駅前のロータリーをパブリックアートのある広場として再整備した。
元々ロータリーには直下にある地下街の為の排煙塔が設置されており、通行人が立ち入らぬよう柵で囲われていたが、その排煙性能を損なわずに、道路交通上の安全性や地域の方の要望を満たす新たな居場所をどうつくるか、またそこにアートをどう共存させるかが主題となった。
僕らは既存の排煙塔を解体し、松山氏による高さ7mを超える彫刻の台座を兼ねた巨大な円形テーブルを設置することにした。テーブルには新たな排煙機構を設け、彫刻を支持するのに必要な構造を備えた。
テーブルの席に着く人々は、自ずと中央に立つ彫刻と至近距離で向き合うこととなる。また座る位置によって彫刻は姿を変え、その日の天気や時間帯によっても異なる表情を見せる。つまりテーブルは人々の滞留を促すストリートファニチャーであると同時に、人々と彫刻を繋ぐ体験装置でもあるのだ。テーブル周囲には、ベンチや植栽を内包した2枚の曲面壁を交差させるようにして配置した。それによりロータリー周囲の車道と広場を分節し、彫刻を含めた広場の振る舞いを都市の喧騒から緩やかにトリミングしている。
アートを単なるシンボルとして扱うのではなく、人々の居方と密接に関係づけ、この場所固有の体験や居心地をつくることを目指していた。駅前道路上で、人々がアートと混ざり合って滞留する状況が新宿の新たな風景となり、地域内外様々な方から愛される公共財として機能することを期待している。
(大野力 / sinato)
■建築概要
所在地:東京都新宿区
用途:広場
工事種別:新築
面積:385.44m²
構造 / 規模:鉄骨造
施主:東日本旅客鉄道 / ルミネ
設計協力:JR東日本建築設計
構造設計:JR東日本建築設計
照明設計:FDS
アートディレクション:戸塚憲太郎
アート監修・制作:松山智一
建築施工:安藤・間
空調換気設備施工:新菱冷熱工業
給排水衛生設備施工:西原衛生工業所
電気設備施工:ウスキ電機
植栽施工:東邦レオ
彫刻施工:ビーファクトリー
竣工:2020年7月
撮影:太田拓実