SHARE 小野寺匠吾建築設計事務所による、東京・江東区の、集合住宅の一住戸の改修「Y邸」。玄関とリビングをつなぐ11cm幅の“機能のない隙間”が、景色や気配を伝え、空間の質を大きく変える
小野寺匠吾建築設計事務所が設計した、東京・江東区の、集合住宅の一住戸の改修「Y邸」です。玄関とリビングをつなぐ11cm幅の“機能のない隙間”が、景色や気配を伝え、空間の質を大きく変える役割を担っています。
東京にある築40年のアパートの一戸改修計画である。
一般的な集合住宅に、生活の中に多様なコミュニケーションを生み出す「機能のない隙間」をデザインした。施主要望は、友人を招いて食事やワインを楽しめるような場所と大きなキッチンが欲しいことなど、ごく一般的なものであった。ただ、今までに見たことのないような改修にして欲しいという大変な事を要求された。
スタディの段階では模型を使って様々な案を検討した。そしてあるとき、一度くっつけ合わせた居室同士を、試しに11cm離してみた。するとその瞬間、たったの11cmの隙間なのに、空間の質が大きく変わった気がした。
この隙間には特に機能はない。しかしこの隙間があることで、リビングの向こう側に見える景色が玄関まで届いたり、箱の向こうの人の気配を感じたりすることができる。
機能がない隙間だが、家が全体として一体となり、向かい合った部屋同士が繋がった感覚になったりする。そして各居室と隙間の壁には開口部をあけたことで、明かりが灯ったり、消えたり、家のどこにいても、生活の気配やパートナーの存在を感じることができるようになった。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
東京にある築40年のアパートの一戸改修計画である。
一般的な集合住宅に、生活の中に多様なコミュニケーションを生み出す「機能のない隙間」をデザインした。
施主要望は、友人を招いて食事やワインを楽しめるような場所と大きなキッチンが欲しいことなど、ごく一般的なものであった。ただ、今までに見たことのないような改修にして欲しいという大変な事を要求された。スタディの段階では模型を使って様々な案を検討した。そしてあるとき、一度くっつけ合わせた居室同士を、試しに11cm離してみた。するとその瞬間、たったの11cmの隙間なのに、空間の質が大きく変わった気がした。
この隙間には特に機能はない。しかしこの隙間があることで、リビングの向こう側に見える景色が玄関まで届いたり、箱の向こうの人の気配を感じたりすることができる。
機能がない隙間だが、家が全体として一体となり、向かい合った部屋同士が繋がった感覚になったりする。そして各居室と隙間の壁には開口部をあけたことで、明かりが灯ったり、消えたり、家のどこにいても、生活の気配やパートナーの存在を感じることができるようになった。
何気なく動かした、単なる隙間なのに、何かが起こりそうな予感がした。それは答えのない仕掛けのようなものであった。これは生活の中に多様なコミュニケーションを生み出す「機能のない隙間」であり、設計者の意図を超えていくような「仕掛け」である。
■建築概要
所在地:東京都江東区
主要用途:住宅(改修)
建築主:個人
設計:小野寺匠吾建築設計事務所
施工:株式会社七保
床面積:61m2
設計期間:2020.6 – 2020.7
工事期間:2020.8 – 2020.11
写真:三嶋一路、小野寺匠吾建築設計事務所
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・床 | 玄関・SIC床 | モルタル金鏝仕上げ+防塵塗装マットクリア(アシュフォードジャパン) |
内装・床 | 廊下・サロン・LDK床 | フレキシブルボード(チヨダウーテ)+防塵塗装マットクリア(アシュフォードジャパン) |
内装・床 | WIC・寝室床 | |
内装・床 | 洗面室・トイレ・パントリー床 | |
内装・壁 | 壁 | PB+AEP(エスケー化研) |
内装・天井 | 天井 | PB+AEP(エスケー化研) |
内装・キッチン | 天板 | SUSバイブレーション仕上げ |
内装・キッチン | 扉面材 | タモ突板柾目 |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません
This is a renovation project of a 40-year-old apartment in Tokyo.
We designed a “non-functional gap” that creates various communications in our daily lives in a general apartment building.
The client’s requests were very common, such as a good space to enjoy food and wine with friends, and a large kitchen. However, we also received an unusual request and it was to design something that we had never seen before.
At the study stage, various ideas were examined by using models. Then, at one point, we tried separating the rooms – that were once attached – by 11cm. At that moment, we felt that the quality of the space had heightened significantly, even though the gap was only 11cm.
There is no particular function in this gap. However, the scenery seen on the other side of the living room can reach the entrance, and you can feel the sign of a person on the other side of the box. It’s a non-functional gap, but the house as a whole becomes one, and it feels like the rooms facing each other are connected. By putting windows in the walls of each room and the gap, the lights can be turned on and off, and you can feel the signs of life and the presence of your partner or friends no matter where you are in the house.
Although we moved it without any intention, and it was a mere gap, we got a feeling that this was the beginning of something. It was like a gimmick without an answer. This is a “non-functional gap” that creates diverse communication in our lives, and is a “device” that goes beyond the designer’s intentions.
Apartment-Y
LOCATION: Tokyo, Japan
PROGRAM: Apartment (Renovation)
CLIENT: Private
ARCHITECT: Office Shogo Onodera
CONTRACTOR: Nanaho Co., Ltd.
TOTAL AREA: 61sqm
DESIGN PERIOD: Jun – Jul. 2020
CONSTRUCTION PERIOD: Aug – Nov. 2020
PHOTO CREDIT: Ichiro Mishima, Office Shogo Onodera