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【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”

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保坂恵建築思索360°住宅図面あり東京保坂猛インタビュー
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”

「建築思索360°」は「360度カメラ RICOH THETA(リコーシータ)」と建築ウェブメディア「architecturephoto®」のコラボレーションによる特別連載企画です。現代社会のなかで、建築家として様々な試行錯誤を行い印象的な作品をつくる4組の建築家に、その作品と背景にある思索についてインタビューを行い、同時に建築・建設業界で新しいツールとして注目されているRICOH THETAを活用することの可能性についてもお聞きしました。さらに建築作品をRICOH THETA を用いた360度空間のバーチャルツアー「RICOH360 Tours」でもご紹介します。


保坂猛が2019年、都内に2度目の自邸として建てた「LOVE² HOUSE」は、床面積が18.84㎡の平屋というコンパクトさでありながら、不思議と狭さを感じさせない、実に心地よい空間だ。この「LOVE² HOUSE」はどのようなプロセスを経て生まれたのか。そして光や外部環境をうまく取り込む設計手法や発想の源泉となる建築めぐりの旅など、保坂の建築への姿勢について迫った。

※このインタビューは感染症予防の対策に配慮しながら実施・収録されました。


小さい空間にほしいものが全部ある

以下の写真はクリックで拡大します

【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「LOVE² HOUSE」(設計:保坂猛建築都市設計事務所、2019年)ファサード。部屋にいると近所の人達から気軽に話し掛けられるという。 photo©藤井浩司


360度カメラRICOH THETA Z1で撮影した画像データを埋め込み表示した、RICOH360 Toursの「LOVE² HOUSE」バーチャルツアー。画像内の矢印をタップすることで、空間を移動することができます。

――保坂さんご夫妻は以前「LOVE HOUSE」(2005年)を設計して住まわれていましたが、新たに「LOVE² HOUSE」(2019年)を建てて引っ越されたんですよね。どのような経緯だったのですか。

保坂猛(以下、猛):2015年に早稲田大学芸術学校の准教授に就任して、横浜から早稲田まで通うのが困難になったのがきっかけです。
引っ越し先を探すにあたって、これまで戸建てに住んでいたのに都内でマンション暮らしは想像できなくて、結局もう一度建てることにしました。

【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”建築家の保坂猛と恵夫妻。 photo©大原宗

――新しい敷地が決まって、すぐに現在の姿をイメージされたのでしょうか。

猛:結構な紆余曲折がありましたね。最初は2階建ての四角い建物のイメージで40案ぐらいスタディを繰り返していましたから。平屋案に変わっても四角いままで。鉄骨造で考えていた時期もありました。どうにかまとまって確認申請を出して施工会社と工事契約を結んでも「何か違うな」と思って。

そうこうしていたら結局、確認申請を3回出すことになってしまいました。施工会社との契約も1回目の契約はご破算にしてもらっています。

――何が原因で決まらなかったのでしょう。

保坂恵:(以下、恵):「LOVE HOUSE」があまりに好きだったので、引きずっていたのでしょうね。でも「せっかくだから全然違う方が面白いかも」と割り切ったら、いい方向にいったみたいです。

たとえば前回の住宅はそぎ落としていく楽しさを体感したので、今度は小さい空間にほしいものが全部あるのがいいと思いました。

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【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”トップライトから落ちる2本の光の移り変わりで時刻を知るという。 photo©藤井浩司
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”ファサード側には一枚ガラスの引き戸が立て込まれている。左手の隠れた位置にエントランスがある。 photo©藤井浩司
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”配置図兼平面図。 image©保坂猛建築都市設計事務所
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”断面図。 image©保坂猛建築都市設計事務所
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”キッチンは幅約1.8メートルと十分な広さ。セパ穴を利用したフックに調理器具などを掛けている。 photo©藤井浩司
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”デッキテラスの露天風呂には、季節や天気を問わずに年中入るそうだ。 photo©藤井浩司
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”屋根を少し膨らませることでつくられた大きさと高さの違う2つのトップライトからは、直射日光と直射月光が落ちる。 photo©藤井浩司

――確かに18.84㎡という延べ床面積から受けるイメージ以上に住み心地がよさそうですね。

猛:それはうれしいですね。前回の延べ床面積の半分なので、寸法的には置けるものが限られてくるはずなんですけど、水回りから何から、全てサイズが大きくなっています。

その分、ベッドの脇からシャワー室までの動線の床が幅20cm程度しかなかったり、シャワー室のドアも幅42cmだったりして。狭く感じるのではないかと不安でしたが、いざ住み始めたら彼女がすごく気に入ってくれました。

恵:出かける前から帰りたくなるほどです(笑)。

猛:実際、家に露天風呂があるので、温泉旅館で露天風呂付きの客室に泊まっても「あれ、うちと一緒だな」と思ってしまいました(笑)。

恵:わざわざ出かける必要がないんです。たとえばベッドから天井のトップライトを眺めていると夜は星が見えます。他にも雷がピカーっと光るのを目撃すると面白かったり、満月の日に室内を真っ暗にしていると満月の光が入ってくるのがすごく楽しかったり。

あと引っ越してきた日の翌朝にパッと目が覚めたら、自分の目の前で青い空に白い雲がサーッと通っていったんです。それを見たときに「ああ、引っ越してきてよかった」と本当に思いました。


コンパクトな住まいのヒントは『方丈記』にあり

――天井やトップライトのスケール感や寸法を、どのようにして決められたのか大変興味があります。何か過去に見た建築などから参照した部分はあるのでしょうか。

猛:まずトップライトは図面で3階建ての隣家の窓の位置を正確に描いて、その窓際から家の中が見えないような高さに決めています。これ以上低くすると隣家の窓から見えてしまうし、かといって高くすると屋根勾配がきつくなって、入った光も届かない部分がふえてくるので。

上から光を入れるというとローマのパンテオンを思い出す人がいるかもしれませんが、「LOVE HOUSE」でトップライトの経験があり、朝から夜までの日射の動きは分かっているので、建築的な参照元はあまりなかったですね。

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【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「LOVE HOUSE」(保坂猛建築都市設計事務所)2階のリビング・ダイニング。冬以外は建具を開けっ放しで生活していた。 photo©ナカサアンドパートナーズ

恵:暮らし方を説明する時は鴨長明の『方丈記』を引き合いに出していますね。

猛:そうですね。文中に出てくる「方丈庵」は、四畳半の中にあれやこれや自分の好きなものがつまっていて、面積が小さくても楽しんで住めるという世界観がすごくいいんです。

――いつごろから関心をもったのでしょうか。

猛:「LOVE HOUSE」に住んでから小さい建物について関心を持ち始めました。

――その影響もあるのでしょうか。木造建築が得意とするような、そっと暮らしに寄り添う住宅を、「LOVE² HOUSE」は鉄筋コンクリート造で実現しているんですね。造り付け家具の役割を打ち放しコンクリートの壁や段差が担っているから、ダイナミックな吹き抜け空間から生活の細かな部分にいたるまでシームレスになっていて、それをコンクリートで表現していることに感激しました。

猛:ペンを置く場所やLPレコードをしまう場所までコンクリートでつくるので、躯体図を描く段階から、ここで展開される暮らしを読み込んでおく必要がありました。躯体工事が終わったら即ホームセンターで買ってきた板をのせて置き場が完成するようなつくり方です。

細かいところでは、壁のPコンを残しておいて、そこに片側がメネジで反対側がオネジのボルトをはめ込んで、先端をフック代わりにしています。


360度カメラRICOH THETA Z1で撮影した画像データを埋め込み表示した、RICOH360 Toursの「LOVE² HOUSE」バーチャルツアー。画像内の矢印をタップすることで、空間を移動することができます。

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【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”キッチンには恵さんとの約束通り大型冷蔵庫が置けるスペースを確保。戸外には私道脇に植えたユーカリとアカシアが覗く。 photo©藤井浩司
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”リビング・ダイニングスペース。開口部の型枠を工夫しつくったコンクリートの段々に、板を渡して棚を作成した。愛読書の『方丈記』もここに並ぶ。 photo©藤井浩司

――海外の方々にとってもインパクトが強かったのか、一条という中国のメディアがYou Tubeにアップした「LOVE² HOUSE」の動画が注目されたようですね。

猛:再生回数が370万回ぐらいになっています。

――小さな土地でもこれほど豊かに暮らせるという点に、日本らしさ、東京らしさを感じられるのでしょうか。

猛:そうかもしれませんね。

恵:カナダのテレビ局からも、東京オリンピックが開催される前に写真を貸してくださいと言われました。オリンピック番組で、東京を象徴するものの一つとして紹介すると聞きました。


窓を開けて風を通したい

――こうして実際に訪れてみると、想像以上に抜け感がありますね。視線が止まらずどこまでも抜けて、緑も見えるし。

猛:そうですね。全体がワンルームの空間なので、風通しがすごくいいし、どこにいても全体を感じていられます。

――猛さんのつくる空間はいつも上手に外部を内部空間に取り込んでいるイメージがあります。その感覚はどこで身につけられたのでしょうか。

猛:僕が生まれ育ったのは山梨の田舎で、家のまわりに祖父がやっている畑があるような場所でした。

大学生になって都会で一人暮らしを始めたら、ワンルームマンションでは自然が感じられなくて。で、耐えられず木賃アパートに引っ越したら、ワンルームマンションと違ってあちこちに窓があって、風も通るし、すごくほっとしました。

その頃には建築を設計し始めていたので、次第に屋外と屋内の関係を意識するようになりました。

今でも疑問に思うのですが、窓が全てフィックスガラスでエアコンに頼り切りの建物ばかりなのはどうしてだろうと。「自然通風にすればいいのに」と、どこに行っても感じます。

――時代が猛さんの考えに追いついてきたのか、オフィスビルでも最近は自然換気すべきだと考える設計者が少しずつ出てきていますね。

猛:それは良いですね。富士山のふもとにある、「ほうとう不動 東恋路店」(2009年)ではエアコンを付けず、自然通風だけでまかなっています。

以下の写真はクリックで拡大します

【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「ほうとう不動 東恋路店」(保坂猛建築都市設計事務所、2009年)。厚さ60mmの発泡ウレタン吹付けの外断熱を取り入れた。四方に幅8mもの開口部を設置し、夏には全開にして自然換気を行う。 photo©ナカサアンドパートナーズ

いつでも図面を描いている

――スタディは平面計画から始めるのでしょうか。それとも断面なのか立面なのか。

猛:すべて同時です。

――では、かなり具体的なイメージで検討されているのですね。

猛:はい。スタッフがすぐ模型をつくれるようなスケッチや図面を次々と描きます。モタモタしているとすぐ10案ぐらいたまってしまいます。

恵:新幹線の中からスケッチの写真が送られてきて「帰るまでに模型をつくっておいて」というメッセージが添えられていることもよくあります。

――最近の20代、30代の設計者と話すと、最初に形を描くのではなく議論をして、ある程度固まってきたら図面を描くタイプも多いようですが、猛さんは逆に形が自然と湧いてくるという感じなのでしょうか。

猛:言葉のキャッチボールは彼女(恵)と頻繁にするし、スタッフともするし、もちろんクライアントにも事前に相当聞いた上でやっています。スケッチや案をつくっている間も1案できるたびにキャッチボールを繰り返して。そうするとポイントがどこにあるのか徐々に分かってくる感じです。

――スタディを経て案が固まったら、実施設計の図面を描くのはスタッフですよね。

猛:展開図や建具表、電気配線図なども含めて、工務店に渡す図面は今でも自分で描いています。全部で40枚あるとしたら15枚ぐらいは私が描いて、後半の25枚をスタッフが描きます。

――そうなんですか。スタッフを何人も抱えている設計事務所の所長さんがそこまで描くって、最近あまり聞きませんよ。

猛:本当ですか?

恵:ようやく取れた休みで出かけても、夜はホテルの部屋でノートパソコンを開いて描いていますね。

猛:図面を描くのは速いので、私が2日で描けるところまで描いて残りをスタッフに渡した方が全体としてはスムーズなんです。


公私にわたる最高のパートナー

――現場監理はどうされているのですか。

猛:私も結構行きますが、彼女が2004年からのすべての案件でクライアントとの打ち合わせに出て、現場も行っているので、任せておけばほとんど何とかなるんですよね。スタッフも同行しますけど。

――それはすばらしいですね。恵さんとの対話から、クライアントの求めているものが明らかになって図面に反映されることもあるのですか。

猛:かなりありますね。

恵:私としては日頃から「趣味=猛」と言っているぐらいなので、描きたてのスケッチを見せてくれるのが、すごく楽しいです。朝起きると、スケッチがテーブルにのっていることもあるんです。それに私がコメントを書いた付箋を貼ったりして。

猛:スタッフだったら言いにくいことも言ってくれます。
「LOVE² HOUSE」の最初の案は動物園の猿舎みたいと言われましたし、この間も案が決まりかけていたのに、「忍者屋敷っぽくない?」と言われてしまいました。

悔しいけれども言われてみると「そうだよな」となって。そういうグサッとくる言葉でいい方向に進むことが何度もありました。だからすごく必要な人なんです。

恵:悪気はないんです。それに、何でも面白がって聞いてくれますから。

――恵さんが建築教育を受けていない強みがあるのでしょうか。教育で植え付けられた価値観とは違う生活者からの視点で的確に指摘し、それを猛さんがポジティブな形で設計内容に反映するという関係性があるんですね。

猛:おっしゃる通りです。クライアントに説明する時も、この関係が役に立っています。彼女が違う角度から「ここがいいんだ」と言ってくれることで、すごく安心してもらえますから。

【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「LOVE² HOUSE」にてお二人に話を伺った。 photo©大原宗

一つの場所に長くいるのが保坂流“旅の極意”

――旅先ではどのようなやり取りをされているのでしょう。

猛:旅先でも思わぬ言葉が返ってきますね。
フランスのマルセイユでル・コルビュジエの「ユニテ・ダビタシオン」(1952年)を見た時は「昔の市民病院みたいじゃない?」なんて言っていました。言われてみると確かに、中廊下で暗くて自然光も通風もないので、そんな気がしてきます。

恵:毎回コメントを聞いてくれるんです。
南フランスにある「カップ・マルタンの休暇小屋」(1951年)へ行ったときは地中海が初めてだったのですが既視感があって、パッと浮かんだのが「何だ、熱海と一緒じゃん」って。静岡出身なので親しみがある場所なんですよ。

猛:地中海まで連れて来たのに熱海と言われて、さすがに落ち込みましたけどね(笑)。

恵:オーストラリアのシドニーに5日間行った時は着いた日から帰る日までオペラハウス漬けでした。ヨーン・ウツソンが設計した「シドニー・オペラハウス」(J.ウツソン+Oアラップ、1973年)が大好きなので。

建築家の妻が得だなと思うのは、全部解説してくれるじゃないですか。「見る位置によってこんなに違うんだよ」とか教えてくれるから本当に面白いんですよね。買ってきたサンドウィッチを基壇に座って食べたり、ちぎってカモメに投げたりしながら、ずっと眺めていました。

猛:ローマに3日間滞在しているときも10回ぐらい、いろんな時間の「パンテオン」(118-128年)に行きました。

恵:最後は夜にも行きました。

猛:閉館時間で照明を消す瞬間に月の光が入ってくるのが見たいと思って。
すぐ追い出されましたけどね。

恵:2人でいると目立つから、広場のレストランで「テラス席でワインとムール貝でも食べてなよ」と言われて。そこからずっと見ていたら引きずり出されるように追い出されて、それでも粘ってまだ写真を撮ろうとしていましたね。

猛:真っ暗になった「パンテオン」を見た人はなかなかいないと思うんですよ。

恵:アメリカに行ってもそうだったよね。

猛:ルイス・カーンも好きだから、カリフォルニアの「ソーク生物学研究所」(1966年)に3日間ぐらい行きました。

恵:その時は、普段そんなに朝早くないのに、朝5時ぐらいから「ソークの朝を楽しんでくるから、ゆっくり起きたら朝おいで」と起こされて。

きっと面白いものが見られるかもしれないと思って6時頃出ていくと、ずっと写真を撮っているんです。それを離れたところから見るのがすごく面白くて。7時ぐらいになると研究所の人たちが売店でサンドウィッチを買って食べているので、私たちもそれを真似て。

猛:とにかく建築に長い時間いようと心がけています。
2~3時間の滞在では写真を撮っておしまいだから、その場所を体験したとは言えなくて、「もうちょっといればよかったな」と後悔するんです。

何も大きな体験ばかりでなくて、小さな発見でいいんです。その少しずつのストックが自分にとっては収穫になるので。

以下の写真はクリックで拡大します

【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「シドニー・オペラハウス」(J.ウツソン+Oアラップ、1973年)。保坂さんは丸5日間入り浸っていた。食事も周辺で済ませるので、サンドイッチを買って基壇に座り、カモメに投げながら食べることもあったそうだ。 photo courtesy of 保坂猛建築都市設計事務所
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「パンテオン」(118-128年)。照明を消す瞬間に月の光が入ってくるのが見たくて、閉館時間ギリギリまで粘り夜の内観を撮影した。 photo courtesy of 保坂猛建築都市設計事務所
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「キンベル美術館」(ルイス・カーン、1972年)。夕暮れ時にはハイサイドライトから入ってくる光でコンクリート壁が紺色に照らされる。 photo courtesy of 保坂猛建築都市設計事務所

恵:ルイス・カーンの設計では、テキサスの「キンベル美術館」(1972年)にも3日間いたら、だんだんスタッフの人たちと仲良くなりました。
「Husbandはどうしたの?」みたいなことから始まって、「日本にいたことあるよ」「日本に今息子が住んでるんだよ」なんて話を聞いて、すごく楽しいです。

猛:私はその間、ずっと光の動きを見ていました。
夕暮れ時の「キンベル美術館」の様子なんて長い時間いないと分かりませんから。夕暮れ時はハイサイドライトから入ってくる光でコンクリート壁が紺色に照らされるんです。ちょうど閉館して人がいなくなったタイミングでしたが、追い出されずに誰もいないところで目撃することができました。

恵:たまたま市民オペラらしきものを上演していて、その後パーティーがあるからいていいよと言われて。閉館した後もいさせてくれました。3日間いると“プチ住んでる感じ”になって、だいぶ分かってきますね。建築家の妻の旅行ってめちゃくちゃ楽しいです。

――国内の旅行で印象的な出来事はありましたか。

恵:姫路城に行って鉄砲窓を見た時が大ヒットで、「鉄砲窓をどこかでつけたい」と言ったら「わかった、どこかで鉄砲窓をつけよう」と言ってくれて。

ちょうど「GARDEN HOUSE」(2007年)という住宅で「風抜きに小さな窓が欲しい、でも外から見えると嫌だな」と言われたのでお互い顔を見合わせて「鉄砲窓じゃない?」と思いついて、小さな風抜き穴をつくったんです。クライアントもすごく喜んでくれました。


ボランティアの防災施設設計

――フィリピンのナボタスで災害時に使う避難ビルを、ボランティアで設計されたそうですね。

猛:貧困層が水上生活を送っているビーチハウスがたびたび流されるので、高潮が来る前に避難するためのコンクリートブロック造4階建ての建物を建てたいという相談を受けたんです。

恵:高潮と台風が一緒に来ると、2,000人亡くなることもあるそうです。設計料は出ないし旅費も自腹なのですが、私はカトリックの家庭で育っているので、人の生命を建築が救えるのなら、やるべきではないかと。

猛:というわけで、年末年始の休みの間に図面を描きました。現地に行くのも旅行だと思って。

恵:現地はフィリピンでは最下層のスラムでした。
でも子どもたちは明るくて可愛くて。日本人が珍しいのか、私たちを神父さんと修道女だと思って、祝福してもらおうと私たちの手を自分の頭にのせるんですよ。可愛いでしょう。

私たちが引き受けたことを現地のボランティア団体の皆さんがすごく喜んでくれて。ナボタスの市長さんも地鎮祭に来て「建築家が子どもたちの命を助けてくれるんだ」と言ってくれました。

――それは建築家冥利に尽きますね。

恵:フィリピンの人たちの大らかさも良かったよね。
当然、建設のためのお金がないのですが、現地の関係者から「私たちはこの建物を建てたい。だからまず祈ろう」と言われて。そのうち「祈ったらお金ができたので、1階部分をつくり始めました」って。

しばらくして「祈ったら3階部分までできたのでビルをオープンします」と言われて。4階をつくっている最中ですがオープンしているんです。日本だったら絶対工事中には引き渡さないですよね。

またある日、現地のボランティア団体の方が訪ねて来て「猛ごめんね。みんな、ここはピンクがいいって言ってピンクに塗っちゃった」って。「どうぞどうぞ、みんなでやって」みたいな。そんな出来事も含めて楽しんでいます。

――現代日本が失ってしまった大らかさですね。


360度カメラRICOH THETAを設計者が使いこなすには

――360度カメラRICOH THETA(リコー シータ)の建築設計における可能性について、(株)リコーTHETA マーケティング担当の平川さんと一緒にお聞きします。今回、感想をお聞かせいただくためにテスト使用をお願いしましたが、どのような使い方をされているのでしょうか。

恵:新居を計画中のクライアントの場合、最初に現在のご自宅に伺い、暮らしの様子やお持ちの家具・食器類などを調べさせていただきます。その時にTHETAを活用しました。1回で360度全方向を撮れるのがいいですね。人のお宅をジロジロ見ながら何回もシャッターを押すのは気がひけますから。

リコー平川:ありがとうございます。そのようなかたちで、最初の現場調査でTHETAを活用いただく建築家も多くいらっしゃいます。お客様の都合などで一度しかできない場合の撮り逃しを防ぐため、THETAで360度画像を撮影して、設計時の参考にしていただいているようです。保坂さんは数年前、初期のRICOH THETAを使っていただいたとお聞きしました。

猛:当時、たまたま電器店でTHETAを知って、購入しました。現場で自分が撮影した360度画像を事務所のメンバーと共有できたら、情報共有に便利かなと思って。ただ撮影した画像をスマートフォンのTHETAアプリで閲覧してスクリーンショットで切り出すと、空間の線が曲線になってしまうでしょう。それだと部分的に切り取って使いたくても、普通の写真のようには使いにくいかな、と思っていました。

平川:そういったご意見は、建築関係など空間を扱う業務の方からよく伺います。そのような場合、専用の編集用スマートフォンアプリ、THETA+(シータプラス)をお使いいただき、「ストレート」表示にして切り出すことで、歪まずまっすぐな静止画として部分的に切り出すことができます。ぜひ試してみてくださいね。

以下の写真はクリックで拡大します

【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”保坂さんにはRICOH THETA SC2のテスト利用をお願いした。 photo©大原宗
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”RICOH THETA SC2で撮影した「LOVE² HOUSE」のデータをスマートフォンのTHETA アプリ、THETA+(シータプラス)から見せていただく。 photo©大原宗
【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”スマートフォンのTHETA アプリ、THETA+(シータプラス)で「ストレート」表示にした画面。一部を切り出して、普通の写真のように扱うことも可能。

猛:それは知りませんでした。それですと360度画像で撮影しておいて、そのうち必要な箇所を資料用の写真にそのまま使えて便利そうですね。ぜひ試してみたいと思います。

平川:また、RICOH 360 Projectsという、現場の様子をTHETAで撮影した360度画像を使い、図面と照らし合わせながらより簡単に整理・共有するためのクラウドサービスもあります。コロナ禍における現場の情報共有にも便利だとご好評をいただいています。

猛:それはぜひ試してみたいですね。ちょうど海外での建築案件があるのですが、コロナで海外出張に行くことがなかなかできないため、現場の状況確認の方法を考えていました。そこではTHETAを活用して、360度画像を使った情報共有もトライしてみたいと思います。
過去の旅行も全部THETAにしておけばよかった。

平川:今回の「LOVE² HOUSE」のバーチャルツアー画像は、THETA Z1という一型センサー搭載の上位機種で撮影させていただきました。コロナ禍でより高画質な物件のバーチャルツアーを撮影したいというニーズが増え、特に海外でも人気の機種です。

猛:もっとこういったバーチャルツアーを活用する情報が増えるといいですね。物件だけでなく、土地の様子も360度で見られるようになると便利だと思います。 土地の雰囲気って、一部を切り取った2~3カットの写真では全然分からないんです。これなら1カットで分かりますからね。

平川:現場の周辺環境調査でも、活用いただいているようです。THETAは静止画だけでなく360度動画も撮影できるのですが、設計士が調査の際、歩きながら動画を撮影し、後で交通量や人通りの雰囲気も含めて確認に活用されることもあるようです。

猛:じわじわ浸透しているんですね。周辺の様子も分かれば、なおいいですね。
動画で360度撮れるなんて、未体験の領域です。

平川:ぜひ試してみてください。お聞かせいただいたご意見は今後の開発に活かしたいと思います。ご利用いただき、どうもありがとうございました。

(企画・インタビュー:後藤連平・矢野優美子/文章構成:矢野優美子・中村謙太郎)


RICOH THETA(リコーシータ)の公式サイトはこちらから
ricohimagingstore.com

保坂猛(ほさか たけし)
1975年山梨県生まれ。横浜国立大学工学部建設学科建築コース卒業。2001年横浜国立大学大学院修士課程修了。大学院在学中に建築設計SPEED STUDIOを共同設立、主宰し設計活動を始める。2004年に保坂猛建築都市設計事務所設立、代表。現在、早稲田大学芸術学校准教授。日本建築学会・日本建築家協会・東京建築士会所属。

■建築概要
「LOVE² HOUSE」
設計:保坂猛建築都市設計事務所
構造設計:NAWAKENJI-M 名和研二 

用途: 専用住宅 

所在地:東京都
構造・規模:RC造・平屋建

延べ床面積:18.84m2

竣工:2019年


■シリーズ・建築思索360°のアーカイブ

  • 第2回 川島範久が語る“REVZO虎ノ門”・“GOOD CYCLE BUILDING 001”と“建築思索”
  • 第1回 ツバメアーキテクツが語る“BONUS TRACK”と“建築思索”

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保坂猛建築都市設計事務所による、東京・文京区の、設計者の自邸「LOVE² HOUSE」
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    中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす
    photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三

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    日程
    2021年10月9日(土)
    –
    12月26日(日)
    architecture|exhibition|feature
    小林紗織山本高之山崎阿弥百瀬文小島美羽川内倫子岡﨑莉望大森克己田中みゆきHIGURE 17-15 cas渋谷区会場構成東京中山英之
    中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
    中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす川内倫子《無題》(シリーズ「はじまりのひ」より)(2018年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
    中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
    中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす会場風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三

    中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」です。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだしています。会期は2021年12月26日まで。展覧会の公式サイトはこちら。

    こちらは、実際に会場を訪問したアーキテクチャーフォトによるレビューです

    この展覧会の、特に会場構成自体を作品として紹介する際には「東京都渋谷公園通りギャラリー」の背景を共有することが必須であるように思う。このギャラリーは、渋谷区立勤労福祉会館という建物内の1階に位置しており、2020年2月にアール・ブリュット等の振興の拠点として設立された施設である。

    実際にギャラリーを訪問して分かるのは、このギャラリーや入居している建物が、新築時に展覧会を行う事を前提に建てられたわけではないという事である。同じフロアには、時間貸しのワークスペースが入居していたりとビル内にはギャラリーと日常が混在しているような印象である。加えて、ギャラリーの展示スペースが、廊下やホールなどを介しフロア内に点在していることも特徴だと感じた。これは建物内の違う用途で使われていたスペースを活用したギャラリーである事を想起させる。建物内に足を踏み入れた瞬間に、美術作品をみるのだという気持ちが切り替わるように考えられているそれ専用に建てられた美術館と比較すると、ある種の作品を展示することに対する難易度が高いギャラリーだと言うことが出来るだろう。

    実際に展覧会を訪れて、作品を眺めながら会場をぐるりと一回りした。そこでの経験を振り返ると、先に書いたような展示空間が、フロア内に点在しているにもかかわらず、ひとつづきの展覧会のまとまりとして経験した感覚が残っているのである。これはまず、中山が今回の展示にあたり苦心した部分だと感じた。具体的には、展示の最初のスペースと二番目のスペースに移動するには、ホールと廊下を通過するのだが、この細長い廊下部分を作品展示スペースとしている。これによって、各展示空間の距離が縮まり、一連の展覧会として認識されやすくなっている。アートに対峙するという経験に出来る限りノイズが入らないように設計されているのである。

    また、外部に最も近い公園通りに面した展示スペースのつくり方にも注目したい。ネットなどで他の展覧会期間の写真を見てもらうと明確に分かるのだが、このスペースは道路側がすべてガラス面であり内部の様子が通り側から見られることを意図してつくられた場所なのである。もともとがギャラリーである事を想定していなければ、合理的なつくりであるし、展覧会の性質によってはこの空間がそのまま生かされる場合もあるだろう。後述しているが、本展では出展作家が多様だ。その為に展示壁面を増やす必要があったと思われる。と同時に作品によっては光を許容するものと受け付けないものがある。そんな状況において、中山は、ガラス面から少しのクリアランスをとって新たな展示壁面をつくった。これにより、室内側は川内倫子の作品スペースが生まれ、ガラス面側には、大森克己の展示スペースが生まれる。これだけでも素晴らしいアイデアなのだが、ガラス面側の奥行きの浅さによって、そこが街中にあるショーウィンドウに擬態しているのである。この効果により大森の作品は渋谷の街中において鑑賞すべきものとして通りを行きかう数多の人々の記憶に刻まれることになるのである。

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    小林紗織山本高之山崎阿弥百瀬文小島美羽川内倫子岡﨑莉望大森克己田中みゆきHIGURE 17-15 cas渋谷区会場構成東京中山英之
    2021.11.19 Fri 06:31
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    2021.11.18Thu
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