SHARE 中村拓志&NAP建築設計事務所による、神奈川・箱根町の「火の山のツリーハット/Tree Hut on Volcano」。自然を愛する施主が販売する家の第一号として計画、建物を約5mの高さに浮遊させ世俗から離れた空間を実現、内部では神殿を参照して自然との繋がりと地域の人々の山への想いを反映
中村拓志&NAP建築設計事務所が設計した、神奈川・箱根町の「火の山のツリーハット/Tree Hut on Volcano」です。自然を愛する施主が販売する家の第一号として計画、建物を約5mの高さに浮遊させ世俗から離れた空間を実現、内部では神殿を参照して自然との繋がりと地域の人々の山への想いを反映しました。この建築は宿泊も可能となっています。
自然をこよなく愛す建主夫婦は、いつも身軽で旅するように暮らしてきた。彼らは自然や地域と深い繋がりをもった最小限の空間があれば人生は十分だと考えており、その生活の実践のための小さな家の販売会社を立ち上げ、我々にモデルルームとなる第一号の家を依頼した。
敷地は噴煙満ちる大涌谷から2kmほどの山中で、沢が流れる急峻な北傾斜の南角地である。この場所には大涌谷や神山が聳える南面に意識を向け、なおかつ冬季に暖かな日差しを取り込む窓が必要と考えたが、道路からの視線が問題だった。また、大地を這うように流れてくる硫化水素や湿気を含む重い空気を避けるためにも、約19㎡の建物を地表から5mほどの高さに浮遊させることで、世俗から離れた空間と大きな窓を可能にした。
室内は狭くとも、自然との豊かな繋がりと地域の人びとの神山への想いを反映させるべく、中央の空間は神殿に似た形式とした。高窓から崇高な光が降りそそぐ4.9mの吹抜け空間を4本の柱で囲い、中心に特注の暖炉を設けて、大涌谷や神山に火を捧げる空間とした。シンメトリーに配置した北側の2本の枝付き丸太柱は鳥居のようで、向こうに神域があることを示している。部屋奥から眺めると、台形プランのパースが補正されて正方形の空間が現れ、そこに護摩焚きや御神火神事に相当する拝火台が鎮座す
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
自然をこよなく愛す建主夫婦は、いつも身軽で旅するように暮らしてきた。彼らは自然や地域と深い繋がりをもった最小限の空間があれば人生は十分だと考えており、その生活の実践のための小さな家の販売会社を立ち上げ、我々にモデルルームとなる第一号の家を依頼した。
箱根では約3000年前に神山の斜面で水蒸気爆発が起こり、それにより芦ノ湖や大涌谷が形成された。大いなる存在への畏怖からか、古来より神山に火を捧げて山を鎮める祭礼(御神火祭)が行われてきた地域である。
敷地は噴煙満ちる大涌谷から2kmほどの山中で、沢が流れる急峻な北傾斜の南角地である。この場所には大涌谷や神山が聳える南面に意識を向け、なおかつ冬季に暖かな日差しを取り込む窓が必要と考えたが、道路からの視線が問題だった。また、大地を這うように流れてくる硫化水素や湿気を含む重い空気を避けるためにも、約19㎡の建物を地表から5mほどの高さに浮遊させることで、世俗から離れた空間と大きな窓を可能にした。
木々の間の僅かな空き地を見つけて、森に溶け込む直径15cmの無垢の鉄骨柱のフレームと階段を設置。その上に木造の小屋とミズキが貫通したデッキを載せ、夏は木陰、冬は落葉して日光を室内に取り込む環境装置とした。3本の柱は風が吹いたり自分が動いたりすると僅かに揺れるように設計。家の原型のひとつといわれる、樹上住居への遡行である。
室内は狭くとも、自然との豊かな繋がりと地域の人びとの神山への想いを反映させるべく、中央の空間は神殿に似た形式とした。高窓から崇高な光が降りそそぐ4.9mの吹抜け空間を4本の柱で囲い、中心に特注の暖炉を設けて、大涌谷や神山に火を捧げる空間とした。シンメトリーに配置した北側の2本の枝付き丸太柱は鳥居のようで、向こうに神域があることを示している。部屋奥から眺めると、台形プランのパースが補正されて正方形の空間が現れ、そこに護摩焚きや御神火神事に相当する拝火台が鎮座する。
中国の陶淵明や白楽天の隠棲から連なる、西行、鴨長明、芭蕉、良寛と続く方丈(3m四方)の草庵に住まう感性とは何か。彼らはかつて旅人で、場所やモノを所有することに執着しなかった。そういえば、この建築はトーベ・ヤンソンのムーミン谷を訪れるスナフキンの帽子のような小屋であるが、彼もまた永遠の吟遊詩人である。これは自然に対する繊細な感受性と信仰に似た謙虚さの中で、質素な生活を送ることの「豊かさ」についての試行である。
(中村拓志)
■建築概要
題名:火の山のツリーハット/Tree Hut on Volcano
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町
敷地面積:999.26㎡
床面積:19.72㎡
設計監理:NAP建築設計事務所
企画・販売・運営:小さな家 寺田和弘
プロデュース:トランジットジェネラルオフィス 岡田光
施工:ダブルボックス
構造設計:yAt構造設計事務所
構造:木造 一部鉄骨造
竣工年月:2020年10月
竣工写真:Koji Fujii / TOREAL
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | 外壁 | スギ t=12 縦羽目 無公害塗装 |
外装・屋根 | 外部屋根 | |
内装・床 | 火の間、リビング床 | チークフローリング[HsTeak127](望造) |
内装・壁 | 火の間、リビング、トイレ洗面壁 | スギt=12 縦羽目 |
内装・天井 | 火の間、リビング、トイレ洗面天井 | |
内装・床 | 洗面・トイレ、シャワールーム床 | |
内装・壁 | シャワールーム壁 | |
内装・天井 | シャワールーム天井 | FRP防水トップコート |
内装・壁 | キッチン壁 | |
内装・造作家具 | 造作家具 | 製作(コルボワット) |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません