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以下、建築家によるテキストです。

学びを誘発する遊びの丘
周囲を何棟もの団地に囲まれ、唯一西側に向けて緑地が続く場所に建つ築50年の幼稚園をこども園とする建替計画となる。
緑地を望む丘を作るように園舎を設計することで、子どもたちが緑に囲まれて、遊びを通して学び、元気に育つ場としたいと考えた。

走り回ったり、駆け上ったりするのが大好きな子どもたちのために、緑地に向け片流れ屋根の丘を配置した。森の中の遊び場を丘の屋根の上に散りばめ、丘を掘り込むようにして内外の空間をつなぐ。丘の屋根の下には保育室と森のホールを緑地に向かって並べることで、団地内にありながら、室内からは緑地の景色だけが見え、森の中に佇むような環境となるようにした。

丘の遊び場は、「明るく丈夫なこども」、「よく考え工夫するこども」という園の教育理念につながる場でもあり、実際に、子供達が元気に遊びながら自ら順番を作ったり、年下の子と手をつないで登ったり、自発的にに協調性・社会性を育む場となっている。
コロナ禍の開園となったが、外で好奇心のままにのびのび遊びまわれる場や、折戸を全開放し換気できる森に向けた開口が、結果的にコロナ対策としても活用される場となった。

繋がる森のホール
ホールをエントランスと隣接させ、園舎の中心に配置することで、気軽に立ち寄ることができる触れ合いの場として活用されている。
折戸を開放して園庭と一体的に使用したり、音楽会や発表会の場として使用したり、お迎えの場や子育て相談の場など、年間を通して多様に利用できる場となっている。地域住民や親同士を繋ぐコミュニティづくりにも寄与する多機能な役割を果たす。

風と光が抜ける園舎
丘のような片流れ屋根の形状を活かし、中間期は空間の高低差を利用した重力換気による通風、冬季は東向きのハイサイド窓から自然光を取り入れ、園児たちの登園前から室内を暖めるなど、エアコンに頼らない明るく快適な室内環境を実現した。
目に見える形で自然エネルギーを最大限活用し、ランニングコストを抑えると共に、子供たちに自然エネルギーへの関心を高める教育の場としても利用している。

構造
厳しい予算と4月の開園に向けた約5か月という厳しい工期を達成可能な適材適所の合理的な木造在来工法を採用した。
廊下・トイレ・エントランス等のサービス系諸室は必要最低限の天高とし、保育室、ホールは⼀般的な片流れ屋根工法を採用し、高さのあるのびやかな空間となるようにした。そして、片流れ屋根を地面まで延ばすことで、上部が丘の遊び場となるようにした。長スパンのホールの梁は方杖により、隣接する保育室に荷重を分散させ屋根を反り上げて天高を確保している。春には桜が満開となる向かいの緑地の景色を取り込む大開口の空間とした。

■建築概要

所在地：千葉県千葉市
用途：認定こども園
構造：木造
構造設計：井上健一構造設計事務所
設備設計：武井設備研究所
施工：木村建設工業株式会社
敷地面積：2820.72㎡
延床面積：848.02㎡
竣工：2020年2月
写真：GRAPHY Inc. 新井達也

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