片田友樹 / micelleが設計した、鹿児島の食品工場「KOTOBUKI cheese factory」です。
イベント空間も備えた施設です。建築家は、施主の中古コンテナ使用の要望に、建築の基本単位としてコンテナを扱い其々の隙間を操作する事で多様な空間を構築しました。また、再利用ならではの固有な表情を内装にも活かす事も意図されました。施主企業の公式サイトはこちら。
チーズ製造と食肉加工のための工場。
廃業した旧百貨店の立体駐車場を取り壊し、地産の乳牛から作るチーズと肉牛の食肉加工のための加工場を作り、そこに第六次産業化や食育の拠点や、イベントを行ったり訪れた人がゆったりとした時間を過ごせる空間を組み込むことを考えた。
輸出入も行う施主から、中古の海上コンテナ使えますか?という話をされた。
この地域では農場や郊外のあちらこちらで海上コンテナを倉庫がわりに使用していて、緑の中にシルバーの建物と褪せたコンテナが置かれている風景がしばしば見られた。非常に印象的な「日本の田舎」の風景なのだと何となく納得していたし、実際コンテナはとても日常の素材だった。
そこで、将来の拡張性、必要寸法、採光・熱・換気など工場としての環境をコントロールするため、建築の一つのモジュールとして海上コンテナを用い、そのモジュールの隙間を操作することで、環境をコントロールしつつ、どこにでも同じシステムで、その場に対応した空間を生み出せるようなものとして計画を行った。
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以下、建築家によるテキストです。
チーズ製造と食肉加工のための工場。
廃業した旧百貨店の立体駐車場を取り壊し、地産の乳牛から作るチーズと肉牛の食肉加工のための加工場を作り、そこに第六次産業化や食育の拠点や、イベントを行ったり訪れた人がゆったりとした時間を過ごせる空間を組み込むことを考えた。
輸出入も行う施主から、中古の海上コンテナ使えますか?という話をされた。
この地域では農場や郊外のあちらこちらで海上コンテナを倉庫がわりに使用していて、緑の中にシルバーの建物と褪せたコンテナが置かれている風景がしばしば見られた。非常に印象的な「日本の田舎」の風景なのだと何となく納得していたし、実際コンテナはとても日常の素材だった。
そこで、将来の拡張性、必要寸法、採光・熱・換気など工場としての環境をコントロールするため、建築の一つのモジュールとして海上コンテナを用い、そのモジュールの隙間を操作することで、環境をコントロールしつつ、どこにでも同じシステムで、その場に対応した空間を生み出せるようなものとして計画を行った。
モジュールを並行に並べ、平面的に地であるモジュールの隙間に、工場のノコギリ屋根のように、片流れの小屋組を架け、穏やかな北側の採光・排熱・排気などを環境調整を担わせた。両端においては、その幾何学的な小屋組を突出させ、柱のような竪樋を設置した。
この2本の竪樋と小屋組による古典主義的な設えによって、平面図上では図と地の関係になっていたものを、立面的にコンテナ-小屋組-コンテナ-小屋組-コンテナという図の連続とし、さらには具象-抽象-具象-抽象-具象というコントラストも加えて、立面的な主従関係を無くした。
図式的になりすぎないよう、コンテナに釣り合うように適度に記号的な部分の集まりとして作ったことで、この建築はバラバラだが妙に統合された日本の街並みに、コントラストを持って融和できた。
屋内ではモジュールを横断して平面計画を行い、可能な限り自由な平面としている。
結果、モジュールが断片化して室内空間に現れた。使用したユーズドの海上コンテナは同じ規格だが、塗装の塗り重ねや傷、継ぎ接ぎ、ステッカーなど、その辿ってきた歴史の違いをもっており、それらのいろいろな表情を室内空間に取り込んだ。
サイン計画において、新しいステッカーを抜き文字で重ねて貼り付けることで、元々の文字とはコントラストをもちつつもコンテナの表情を活かした。
なお、一般に使用されている海上コンテナはそのままでは法規上鉄骨造の建築とは認められないため、内装を行う内装の下地を構造体と認識するという発想で、木造建築としている。この木造とコンテナの冗長的な構成が、モジュールによる構造を表現したような一見マッチョな建築を、断片化して街の中や室内空間に溶け込ませた奇妙な風景生み出していると考えている。
■建築概要
場所:鹿児島県
設計:micelle ltd. / katada tomoki
構造設計:田中哲也建築構造計画
施工:上之段建設
構造:木造
延床面積:239.43m2
竣工:2016年12月~2018年5月
撮影:Lemmart