403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案 学生ホールの改修(第1期) photo©長谷川健太
403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案 学生ホールの改修(第1期) photo©長谷川健太
403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案 東屋の新築(2期工事)をホールから見る photo©長谷川健太
403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案 東屋の新築(2期工事) photo©長谷川健太
403architecture [dajiba] が設計した、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」です。
ホールの改修と外部の東屋の新築の計画です。建築家は、薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築しました。そして、東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案しました。施設の公式サイトはこちら 。
静岡理工科大学学生ホールの計画。プロジェクトは1期と2期で設計時期が分かれており、1期は既存建物の改修、2期は東屋の新築である。
既存の学生ホールは、授業時間外の学習や軽食のためのスペースとして活用されていたが、上階に南東角へ下がっていくすり鉢状の階段教室があるため薄暗く、事後的に整備された床下配線がつくる段差、またそれを原因とした転倒防止のための家具配置などの問題があり、雰囲気としても動線としても閉塞感のある、風通しの悪い環境であった。
1期ではそうした状況に対し、大学内で組織されたキャンパスマスタープランのためのワーキンググループの提言により、東側のメインストリートから西側の芝生広場への抜けが要望されていた。これを受けた改修の大きな方針は、以下の3点である。①可能な限り天井を躯体現しとして高さを確保し、付属物を取り付けない。②配線は床下を基本とし、段差をつくらない。③明るく開放的で、通り抜けることも滞在することも妨げない。
この実現のため、照明とコンセントへの給電、またテーブルの拠り所としての「柱」を24箇所に立てている。林立させた「柱」は鉄骨と木材のハイブリッドで、十字形断面のスチールは天井高に合わせておよそ4mから6mまでの長さがある。高さ2525mmまでは天竜杉を四方からボルトで緊結することで根巻きとして構造的に補強し、上部に照明を取り付けている。面取り部分が白い五寸柱のような構造物が一定以上の高さで光り輝くことで、明るさの重心を持ち上げながら、空間全体に拡散光が回るように計画している。また「柱」に対して取り付くようなテーブルも合わせてデザインすることで、PC作業のための電源を提供するインフラ的な役割を担っている。
2期工事は、1期工事によって人が流入しやすい場所となった学生ホールの西側に、さら屋外の滞在スペースをつくるため、屋根を掛けることが求められた。メインストリートのある東側から学生ホールを通過し、さらに西側へと学生の活動領域を展開させていくことが図られている。
西側外部空間には10m角ほどのコンクリートの土間が既にあり、その上に日差しと雨を防ぐ屋根を検討することとなった。学生の活動時間・時期と日射角度の関係、周辺環境や既存建物への応答、簡素な排水方式と動線の確保などを考慮すると、シンプルな形状の片流れの屋根とすることが合理的であった。しかし一方で、学生ホール内部からその天井面が大きく見えることになり、その存在感をどうするのか、という点がスタディの中心となった。学生ホール内部では開放感を高めることに注力したこともあり、その視界を単に阻害するようなものをつくるべきではないと考えたためだ。そこで検討したのが、天井面が黒く反射する、円形の屋根である。
学生ホールの改修 (1期工事)
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403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案 学生ホールの改修(第1期) photo©長谷川健太
403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案 photo©長谷川健太
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東屋の新築 (2期工事)
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図面
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以下、建築家によるテキストです。
一貫性を更新し続ける
静岡理工科大学学生ホールの計画。プロジェクトは1期と2期で設計時期が分かれており、1期は既存建物の改修、2期は東屋の新築である。
既存の学生ホールは、授業時間外の学習や軽食のためのスペースとして活用されていたが、上階に南東角へ下がっていくすり鉢状の階段教室があるため薄暗く、事後的に整備された床下配線がつくる段差、またそれを原因とした転倒防止のための家具配置などの問題があり、雰囲気としても動線としても閉塞感のある、風通しの悪い環境であった。
1期ではそうした状況に対し、大学内で組織されたキャンパスマスタープランのためのワーキンググループの提言により、東側のメインストリートから西側の芝生広場への抜けが要望されていた。これを受けた改修の大きな方針は、以下の3点である。①可能な限り天井を躯体現しとして高さを確保し、付属物を取り付けない。②配線は床下を基本とし、段差をつくらない。③明るく開放的で、通り抜けることも滞在することも妨げない。
この実現のため、照明とコンセントへの給電、またテーブルの拠り所としての「柱」を24箇所に立てている。林立させた「柱」は鉄骨と木材のハイブリッドで、十字形断面のスチールは天井高に合わせておよそ4mから6mまでの長さがある。高さ2525mmまでは天竜杉を四方からボルトで緊結することで根巻きとして構造的に補強し、上部に照明を取り付けている。面取り部分が白い五寸柱のような構造物が一定以上の高さで光り輝くことで、明るさの重心を持ち上げながら、空間全体に拡散光が回るように計画している。また「柱」に対して取り付くようなテーブルも合わせてデザインすることで、PC作業のための電源を提供するインフラ的な役割を担っている。
「柱」は一見ランダムに見えるが、既存の回り階段の中心を原点とした、極座標上に均等に配置している。この既存の回り階段は、上階の階段教室のすり鉢状の中心に対して、ちょうど対角線上の反対側にある。既存建物の図面を調べると、興味深いことにこれは実施設計段階で突如現れた(基本設計では直階段だった)もので、勾配天井がつくる強烈な存在感に対して、カウンターとしてバランスを取ろうとしたものと思われる。「柱」を極座標上に配置することは、こうした既存建物の設計者の意図を勝手に読み取り、さらに操作として強調するためである。
さらに、トイレの前には円弧状にカーブした目隠し壁があり、既存建物のなかでも不思議な存在感を放っていた。改修では床仕上げの切り替えラインをこの延長とすることで、円とその中心のありかを強調している。その他の照明や空調ダクト、あるいはソファベンチ、テーブルなどの家具も、こうした2つの中心に対して呼応させた配置としている。
いわば、既存建物がそもそも備えていた強烈なすり鉢状の中心と、それを崩すような2つの「別の中心」に対して、後者を強調することでバランスさせようとしたわけである。学生ホール全体に差異や濃淡はありながらも、ヒエラルキーをある種の過剰さによって解体し、フラットな状態を仮設することで、学生ののびやかな活動を受け入れることをめざした。
2期工事は、1期工事によって人が流入しやすい場所となった学生ホールの西側に、さら屋外の滞在スペースをつくるため、屋根を掛けることが求められた。メインストリートのある東側から学生ホールを通過し、さらに西側へと学生の活動領域を展開させていくことが図られている。
西側外部空間には10m角ほどのコンクリートの土間が既にあり、その上に日差しと雨を防ぐ屋根を検討することとなった。学生の活動時間・時期と日射角度の関係、周辺環境や既存建物への応答、簡素な排水方式と動線の確保などを考慮すると、シンプルな形状の片流れの屋根とすることが合理的であった。しかし一方で、学生ホール内部からその天井面が大きく見えることになり、その存在感をどうするのか、という点がスタディの中心となった。学生ホール内部では開放感を高めることに注力したこともあり、その視界を単に阻害するようなものをつくるべきではないと考えたためだ。そこで検討したのが、天井面が黒く反射する、円形の屋根である。
黒く反射する面は、時間帯や角度によっては周辺の風景を写し込んだり、あるいは奥行きがはっきりせず、空中に穴が空いているようにも見える。そうなると、学生ホール内部からどのように見えるのかがスタディの大きな要件となる。つまり、新築の建物であると同時に、既存建物の窓の改修でもあるような、両義的な存在として検討をすすめた。
屋根を支える柱は、1期の極座標グリッドの延長上に同様のルールでプロットしている。屋根はそれとは無関係に、日照条件等から位置と勾配を決定しており、両者はたまたま結びついている。そのため構造力学的に最適化された形態ではなく、であるがゆえの不自然さがある。この不自然さが柱と屋根を切り離し、それぞれの「中心」の存在、純粋性を保っている。
こうした構造的な合理性からの「ずれ」を許容しながらも平滑な面をつくるため、天井面をつくるフレームは工場溶接によってパネル化し、現場ではそれらをつなぎ合わせる方式としている。パネル割とはずれた位置にある柱を接合するため、あらかじめ補強材をパネルに組み込んでおき、柱頭では個別設計の受けのプレートを溶接しておくことで精度を確保している。
1期から展開している円と中心のルールは平面上のものだが、新築の傾いた円は、それを切断面とする球を想起させ、その径は一意には定まらない。屋根がつくる新たな「中心」は、既存とはずれた次元に軸を持ち、新築独自のアプローチを採っている。
時期をずらして複数回設計し、改修と新築を組み合わせてアプローチするにあたって、通常では取るに足らないような些細な状況から純粋な幾何学までを等価に扱い、何が主体なのかを次々と移行していく視点が必要であった。こうした一貫性をその都度再考するような計画が、多様な学生生活を受け止める寛容さと、どっしりと構えて支えるような確からしさにつながっていくのではないかと期待している。
■建築概要
名称:静岡理工科大学学生ホール
所在地:静岡県袋井市
主用途:大学
設計監理:403architecture [dajiba](彌田徹+辻琢磨+橋本健史)
監修(基本構想、設計監修):総務課(深澤直人、佐藤博紀)+建築学科(田井幹夫、脇坂圭一)
構造設計:yasuhirokaneda STRUCTURE / 金田泰裕
照明設計:岡安泉照明設計事務所 / 岡安泉
植栽計画:マインドスケープ / 大西瞳
施工:石川建設株式会社
竣工:2019年9月(1期)、2021年3月(2期)
写真:長谷川健太