SHARE 畝森泰行による、愛知淑徳大学での建築展「ゆっくり庭をつくるように」の会場写真。建築家と学生が協働して作る展覧会。“総体的な建築体験”を与える会場を目指し、8つの木造フレームを用いて空間と展示物が緩やかに一体化する構成を考案。代表作の一部を再現した“原寸”モックアップ等も展示
- 日程
- 2023年9月2日(土)–9月17日(日)
畝森泰行による、愛知淑徳大学での建築展「ゆっくり庭をつくるように」の会場写真です。
建築家と学生が協働して作る展覧会です。建築家と学生は、“総体的な建築体験”を与える会場を目指し、8つの木造フレームを用いて空間と展示物が緩やかに一体化する構成を考案しました。また、代表作の一部を再現した“原寸”モックアップ等も展示されています。会期は、2023年9月17日まで。展覧会の公式ページはこちら。
畝森泰行によるステートメント
私たちは建築の全てを把握できません。その物理的な大きさや複雑さゆえに、一度に全体を眺めるのは難しく、また設計中に模型や図面を使ってどんなに想像しても、どこか理解できない余白が残ります。また建築はたくさんの人が時間をかけてつくります。その過程で個人の考えや当初のイメージから変わっていくことがあり、それらの理由で建築は、強く固定的な存在でありながらも、曖昧で他律的な側面をもつと言えます。
私はそういう建築の不確かな部分に惹かれます。朧げで変わりうるところがあるからこそ、緩やかに動く自然や異なる他者と結びつく可能性をもつのであり、それがいま、バラバラな個人をつなぎ、早すぎる時間を緩め、閉じた世界をほぐすことになるのではないだろうか、そう期待するのです。この不確かで曖昧な存在を今回私は「庭」と呼ぼうと思いました。
会場は愛知淑徳大学の学生と協働して考えました。その試行錯誤も私たちが思う庭となってそこに現れることを期待しています。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、関係者によるテキストです。
愛知淑徳大学 清水裕二によるテキスト「デザインワークショップについて」
愛知淑徳大学建築・インテリアデザイン専攻の3年前期授業「デザインワークショップ」は、日本を代表する建築家の展覧会の会場デザイン、施工、サイン計画、広報、運営などを学生たちが主体となって行う授業です。
今回の畝森泰行展「ゆっくり庭をつくるように」は、畝森泰行建築設計事務所と学生の共同設計という形で進められました。畝森さんの建築は「Small House」のような小さな都市住宅から「須賀川市民交流センター tette」のような大規模な公共建築まで様々なスケールにわたっており、他の建築家や大手の設計事務所などとのコラボレーションも多く手がけています。
畝森事務所のオフィス「BASE」は1階が地域のコミュニティースペースとなっていたり、他の設計事務所(teco)とスペースをシェアしたり、そういった開かれた設計プロセスやスペースのあり方が現代性を示しているように感じます。
彼らが学生達とどのような化学反応を起こしてくれるのか、その成果を皆さんがこの展示で体感していただけることを期待しています。
畝森泰行によるテキスト「会場構成について」
この会場は、60mm角の木造フレームを組み合わせてできている。
高さやスパンの異なるこのフレームは8つあり、それらをずらしながら会場全体に配置した。
さらにルーバー天井とし、補強も兼ねた薄い展示壁を取り付けている。まるで小さな建築群であり、その境界によって内外を微かに分け、またスケールの変化や光の強弱を生もうと考えた。そういうさまざまな展示環境を頼りに図面や写真を貼り、言葉を掲げ、模型を置く。展示物と空間が緩やかに一体化し、それらを巡ることで生まれる総体的な建築体験を目指した。
一方でこの会場は、当初私が考えたイメージと大きく異なるものになった。
愛知淑徳大学の学生が発案し、その後に一緒に計画したこの空間は、個人がつくるものとは異なる開放性を持ったように思う。そういう複数の個性や他者との協働によって生まれる場所は、そのプロセスも含めてタイトルに掲げた「庭」とどこかつながるように思うのであり、そのことに私は可能性を感じる。
愛知淑徳大学 学生によるテキスト「設計を通じて」
高さ、壁、フレーム、外と内、時間など様々な「変化」を含んだ会場になったと思う。それはタイトルの「ゆっくり庭をつくるように」を具現化したものであるように思う。それと同時に、スタディを繰り返すことにより前進したり、後退したりして変化してきた会場案、そしてそれに伴い変化してきた私たちの考え。そういった設計プロセスも形となり表れているように思う。
図面から模型やCADデータ等の3Dに立ち上げる時、想像は加速する。だが、リアリティを追い求めている模型や3Dデータは自分より小さい。今回そのリアルな想像が自分より大きなものとなり目の前に在る。そこでは想像に包まれたような不思議な感覚を覚えた。その想像に包まれた感覚はどこか寂しく、だが心地よく感じた。想像とリアルな想像、そしてその先には想像に包まれた感覚があった。これは大きな学びだった。
畝森さんをはじめとする畝森泰行建築設計事務所の方々との共同設計により、建築の考え方、矛盾の考え方等いくつものことを学んだ。それらは私たち学生がこの先何年もの時間をかけて学ぶことだったように思う。それほどに濃密な時間だった。
■展覧会概要
畝森泰行展「ゆっくり庭をつくるように」
開館日時:2023年9月2日(土)~9月17日(日)10:00-19:00 入場無料
会場:愛知淑徳大学 長久手キャンパス 8号棟5階プレゼンテーションルーム
〒480-1197 愛知県長久手市片平二丁目9
名古屋市営地下鉄東山線「本郷」駅より名古屋市営バス「猪高緑地」行き終点下車
主催:愛知淑徳大学 創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻
愛知淑徳大学創造表現学会
協力:日本デザインセンター 色部デザイン研究所/株式会社アケボノアートワークス
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展覧会へご来場の際は、一旦[正門守衛室]へお立ち寄り下さい。
来場者用駐車場[北門]の駐車台数には限りがありますので公共交通機関をご利用下さい。
展覧会会場にはブックショップ(正文館書店)を併設予定です。