中村竜治建築設計事務所の会場構成による、21_21 DESIGN SIGHTでの展覧会「Material, or 」です。
マテリアルについての再考を促す展示の為に計画されました。建築家は、“素の状態”で物や作品に向合う状況を目指し、出来る限り“展示っぽさ”を排除する設計を志向しました。そして、既存平面を“半ば無視した”壁を配して施設を廃墟の様な無意味な場所に戻す事も意図されました。展覧会の公式ページはこちら。
21_21 DESIGN SIGHTの企画展「Material, or 」の会場構成です。
本展では「マテリアル」と「素材」という言葉をあえて使い分けています。「マテリアル」が物質そのものだとすると、「素材」はそれを使おうとする者の意味が付与されたものです。そして、マテリアルが素材化される以前に焦点を当てることで、マテリアルについて改めて考えるという展覧会です。人や動物のマテリアルに対する向き合い方、意味付け、衝動に出会うことができます。
会場構成では、物や作品にできるだけ素の状態で向き合ってもらうために、展示っぽさというものを極力なくしていくということをやっています。例えば、「展示台やケースをつくらない」、「むやみに壁に展示しない」、「順路をつくらない」、「部屋単位で展示しない」などです。それらは、物や作品を観せられるのではなく、あたかも鑑賞者が散策しながらたまたま物や作品に出会うというような体験を生みます。
そして、会場である安藤忠雄さんの設計した21_21 DESIGN SIGHTからも馴染みのある展示施設としての意味を剥ぎ取り、洞窟や廃墟のような無意味な場所に戻すことを試みています。
具体的には、展示室だけでなくロビーや廊下を含めた空間全体に、高さ1.2mの壁を元々のプランを半ば無視しながらグリッド状に立てています。グリッド状の壁に切り取られた空間は、普段の使い勝手から切り離され、純粋な形として浮かび上がり、意味付けされる前のマテリアルに還元されるのではないかと考えました。
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以下、建築家によるテキストです。
無意味な空間のつくりかた
21_21 DESIGN SIGHTの企画展「Material, or 」の会場構成です。
本展では「マテリアル」と「素材」という言葉をあえて使い分けています。「マテリアル」が物質そのものだとすると、「素材」はそれを使おうとする者の意味が付与されたものです。そして、マテリアルが素材化される以前に焦点を当てることで、マテリアルについて改めて考えるという展覧会です。人や動物のマテリアルに対する向き合い方、意味付け、衝動に出会うことができます。
会場構成では、物や作品にできるだけ素の状態で向き合ってもらうために、展示っぽさというものを極力なくしていくということをやっています。例えば、「展示台やケースをつくらない」、「むやみに壁に展示しない」、「順路をつくらない」、「部屋単位で展示しない」などです。それらは、物や作品を観せられるのではなく、あたかも鑑賞者が散策しながらたまたま物や作品に出会うというような体験を生みます。
そして、会場である安藤忠雄さんの設計した21_21 DESIGN SIGHTからも馴染みのある展示施設としての意味を剥ぎ取り、洞窟や廃墟のような無意味な場所に戻すことを試みています。
具体的には、展示室だけでなくロビーや廊下を含めた空間全体に、高さ1.2mの壁を元々のプランを半ば無視しながらグリッド状に立てています。グリッド状の壁に切り取られた空間は、普段の使い勝手から切り離され、純粋な形として浮かび上がり、意味付けされる前のマテリアルに還元されるのではないかと考えました。
そのようにして自然の洞窟のように無意味になった場所に、物や作品が展示されるというよりは、転がるように、あるいは、置き忘れたようにしてあります。そんな無意味な空間や状態が、物や作品とのフラットな向き合い方を生みます。
■建築概要
展覧会タイトル:Material, or
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
会場構成:中村竜治、若木麻希子(中村竜治建築設計事務所)
施工:HIGURE17-15cas
展覧会ディレクター:吉泉聡(TAKT PROJECT)
企画協力:石倉敏明、亀井潤
グラフィックデザイン:三澤遥(日本デザインセンター)
テキスト:山田泰巨
コピーライティング:磯目健(日本デザインセンター)
会期:2023年7月14日~11月5日(火曜休館)
撮影:中村竜治