伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 玄関からリビングを見る。(建築家による解説:円環の本棚は迎え入れるキャノピーとして浮かび上がる) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング。(建築家による解説:ぐるりと一周する本棚。本棚の中に開口、動線を組み込むことでリズムを作っている。本棚上部に伸びる円環のフィンには照明・空調機器や透明度を操作するカーテンが取り付く) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 左:セカンドリビング、右:リビング。(建築家による解説:円環の本棚に背をもたれるように、夫婦のワークスペースを配置。雁行する既存の空間性を活かし、パーソナルなコーナーをニッチに作り出した) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studio と風間健が設計した、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」です。
改修済みの空間を部分的に再改修する計画です。建築家は、愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案しました。また、既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容することも意図されました。
本を開くと、頭の中をぐるぐると言葉が巡り、窓を開くと、街と街をぐるぐると鉄道や車が駆けている。内と外は一体に繋がって活動を続けている。非所有が推し進む世の流れの中で、過去の自分を引き摺りながら蓄積した愛着のあるものに囲まれた設計者自邸を計画した。
敷地はスカイツリーふもとの密集住宅地にあり、マンション一室の部分改修プロジェクトである。
マンションの一室でありながら、目の前を幹線道路が通り、部屋と同じレベルを鉄道が走るなど、都市交通の動きをダイレクトに感得できる位置にある。
既存はすでに買取再販不動産会社によって改修がなされており、規格化された仕様は築20年超の一室を手際よく整えてはいたが、独特な平面形状がもつポテンシャルを抑え込んでいるような印象も与えた。
今回の改修では、すでにリノベーションされた仕上げ面までをある一つの地形・コンテクストとして捉え、その中で寄生するように最低限の操作で空間全体に最大限影響を及ぼしながら、都市活動全体の一部として拡がっていく私的な居住空間の在り様を模索した。
住み手の現住居には多くの書籍が蓄積し、その物量に手をこまねきながらも、思い入れのある様々な物に囲まれた暮らしを要望していた。そこで、間取りの中央に円環の本棚を計画し、文字通りぐるりと360度包み込まれた空間の中心部をリビングとすることで、物と住み手が臨場感のある暮らしを展開できると考えた。
以下の写真はクリックで拡大します
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 玄関からリビングを見る。(建築家による解説:円環の本棚は迎え入れるキャノピーとして浮かび上がる) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング。(建築家による解説:ぐるりと一周する本棚。本棚の中に開口、動線を組み込むことでリズムを作っている。本棚上部に伸びる円環のフィンには照明・空調機器や透明度を操作するカーテンが取り付く) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 正面:リビング、右:キッチンに繋がる建具 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、本棚を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、開口部と本棚を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、本棚の詳細 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビングからセカンドリビング側を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 左:リビング、右:書斎。(建築家による解説:円卓を取り囲む円環の本棚とその先を駆ける鉄道。雁行しながら繋がる空間の中を鉄道が横断する。リビングは様々な行為で溢れ、本棚はそれを受け入れる骨格となる。お子さん用の小さな絵本・ピシッと揃った文庫・大きな美術本など、本の多様なスケールと表情をゾーン毎に割り付けた) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 書斎 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 書斎、家具の詳細 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビングからセカンドリビング側を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビングから開口部を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 左:セカンドリビング、右:リビング。(建築家による解説:円環の本棚に背をもたれるように、夫婦のワークスペースを配置。雁行する既存の空間性を活かし、パーソナルなコーナーをニッチに作り出した) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 セカンドリビングからリビング側を見る。(建築家による解説:マンション外壁の曲線を内部空間へ引き込むことで作られる間取りの骨格としての円環) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、天井付近を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、テーブルの詳細。(建築家による解説:雁行しながらつながる空間と円環の本棚が交わる中央にφ1200の円卓を造作した。本棚の水平フィンと同じフィレットした断面形状とし、ぐるりとどこにでも椅子を配置できるよう中央一本足のデザインとした) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、本棚の詳細 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビングから玄関側を見る。円環の本棚の背景には各部屋がまとわりつき、様々な奥行きを与える。カーテン、開き戸、引戸等の設えの差がリビングに表情を作る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビングから玄関側を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、天井付近を見る。 photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、照明の詳細。(建築家による解説:円環の本棚の上部となるFL+1900より上は設備を組み込んでいる。円環の本棚と均衡を保つように、大梁に沿わせて金属曲げ材の造作照明を計画した) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 リビング、照明の詳細。(建築家による解説:雁行する空間性をより強調するように対角に伸びていくパンチングパターンを施した) photo©中村晃
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 平面図 image©HAMS and, Studio+風間健
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 断面図 image©HAMS and, Studio+風間健
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 本棚断面図 image©HAMS and, Studio+風間健
伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健による、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」。改修済みの空間を部分的に再改修。愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案。既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容 ダイアグラム image©HAMS and, Studio+風間健
以下、建築家によるテキストです。
本を開くと、頭の中をぐるぐると言葉が巡り、窓を開くと、街と街をぐるぐると鉄道や車が駆けている。
内と外は一体に繋がって活動を続けている。非所有が推し進む世の流れの中で、過去の自分を引き摺りながら蓄積した愛着のあるものに囲まれた設計者自邸を計画した。
敷地はスカイツリーふもとの密集住宅地にあり、マンション一室の部分改修プロジェクトである。
マンションの一室でありながら、目の前を幹線道路が通り、部屋と同じレベルを鉄道が走るなど、都市交通の動きをダイレクトに感得できる位置にある。
既存はすでに買取再販不動産会社によって改修がなされており、規格化された仕様は築20年超の一室を手際よく整えてはいたが、独特な平面形状がもつポテンシャルを抑え込んでいるような印象も与えた。
今回の改修では、すでにリノベーションされた仕上げ面までをある一つの地形・コンテクストとして捉え、その中で寄生するように最低限の操作で空間全体に最大限影響を及ぼしながら、都市活動全体の一部として拡がっていく私的な居住空間の在り様を模索した。
住み手の現住居には多くの書籍が蓄積し、その物量に手をこまねきながらも、思い入れのある様々な物に囲まれた暮らしを要望していた。そこで、間取りの中央に円環の本棚を計画し、文字通りぐるりと360度包み込まれた空間の中心部をリビングとすることで、物と住み手が臨場感のある暮らしを展開できると考えた。
既存マンションは区画整備の中で出来た鋭角の辺を持ち、デッドスペースの最小化と交差点からの景観の観点から、外壁が一部Rを描いている。外壁に用いられた特徴的なRの線をミラーし、内部空間へき込むことを考えた。外壁から内部にかけて連続するRの円環の本棚が骨格となり、そこに動線や建具、ベンチ等を組み込ませることで、既存の小部屋、廊下、キッチン、洗面、腰窓が本棚に絡みつくような関係を持たせた。
事業優先の既存リノベーションを下地とし、最大限既存を生かしながら、少ない操作で居心地の良い空間を獲得しようとするのはある種矛盾を孕んでいる。そこで、既存の仕上げ面に施された新調のビニルクロスや新調の木調フロアタイルの微細な凹凸もしくは平滑面を本計画の地形や下地として捉え、新築やフルリノベーションでは起こり得ない様相を積極的に受け入れた。
例えば、既存のビニルクロス面の上に塗装を加えている部分と、新設ボード面の上に塗装を加えている部分が同一面に併存している。その新旧2つを跨ぐように左官塗装を施すことで、ある種のムラの一部として繋げながら、既存の間取りが浮かび上がる陰影として捉えている。
お子さんへの配慮として本棚の小口はR形状とし、水平基調をより強調するためにベニヤ材を使用した。棚板は垂直支持材より50mm勝たせている。水平ラインを強調し伸びやかさを作りながら、コーヒー等を置けるさりげない場所として暮らしの拠り所とした。リビングと各室を繋ぐ動線部は吊り戸棚となり、上部にはぐるりと一周、照明を配置している。吊り戸棚にはカーテンレールを組込み、空間を仕切る機能を持たせている。
リノベーションが一般化された現在、更新期を迎える目ぼしい中古マンションは買取再販不動産会社によって次々と画一的な改修が行われてしまう現状がある。本計画は、時間的・空間的な都市の隙間を縫う部分的な改修でありながら、そこに立脚し、愛着ある物にぐるりと囲まれた自分達ためだけの空間を勝ち取る切実な想いから派生している。部分改修の新たな手法のとして一端を担う計画としたい。
■建築概要
題名:切断の諸相05「A Round and Around」
所在地:東京都
主用途:住宅
設計:伯耆原洋太 / 一級建築士事務所HAMS and, Studio+風間健
施工:Roovice 担当/武井空以
造作金物:小塚製作所
構造:SRC造
延床面積:62.44㎡
設計:2023年8月~2023年11月
工事:2023年11月~2023年12月
竣工:2024年1月
写真:中村晃