篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 鳥瞰、北側より見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 俯瞰、北西側より宿泊棟A区画を見下ろす。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、リビングから開口部越しにスカイガーデンを見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、スカイガーデンからリビングとガゼボ(半屋外食事室)側を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所 が設計した、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA / ナガラミリゾート匝瑳」です。
砂丘の背後の広大な土地に計画されました。建築家は、砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向しました。そして、敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案しました。施設の場所はこちら (Google Map)。
千葉県・九十九里浜に面する1.2haの敷地に、わずか4区画の分棟型ホテルと管理棟を新築する計画である。
都市計画区域外のため、敷地周辺には原野や保存林など多くの自然が残る一方、敷地と海岸の間には高さ8mの砂丘があり、津波等の自然災害から砂丘背後地を守りつつも海への視線を遮断していた。クライアントが望むオーシャンビューの実現には建築を中高層化する必要があったが、景観への配慮や、低層階は依然として眺望以外の価値付けが必要等の課題があり、商業的には不利な状況だった
一方で、砂と空と原野しかない環境は、原初の大地に対峙するような豊かさもあるように思われた。ホテルと宿泊者という関係を超え、より大きなスケールで人と自然が密に関わり、その動向を刻明に感じられる環境を、GL+0レベルでつくれないかと考えた。
はじめに、原野の中で自らの位置を測る基準として、各真方位に向いた十字壁を配置した。それを反復すると、大小/開閉の様々な庭ができた。十字壁の交点上に方形屋根をかけると、1枚の屋根の下には4分割された内/半外/外の区別ができる。最後に4区画の陣取りを行い、複雑な区画形状が決定された。
このプロセスから、1区画につき1つの母屋・2つの離れ・4つの庭・7つの部屋で構成される。ホテルとして明確にプライバシーは確保しながらも、自由な区画取りにより1枚の屋根を2区画で共有する部分もあり、本来無縁の宿泊者同士が同じ自然を共有して観測する者同士として、暗に共同体のような状態を形成している。
宿泊者は十字壁を基準として、ある時間・ある方位に、ある部屋・ある庭へと巡りながら、その時々の自然の移ろいを感じて過ごすことができる。1区画は延床面積100㎡・区画面積700㎡程度とし、屋外で過ごす時間の方が長くなるよう想定されている。敷地境界を超えて、大地のもつ時間や風景を感じて佇むことのできる建築を目指した。
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篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 鳥瞰、北側より見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 鳥瞰、南側より見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 鳥瞰、敷地上空より見下ろす。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 鳥瞰、敷地上空より見下ろす。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 外観、南側より見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 外観、北側より宿泊棟D区画側を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 俯瞰、北西側より宿泊棟A区画を見下ろす。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 外観、北西側のメインアプローチより見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、左:ホール、右:玄関1 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、ホールからリビングを見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、リビングから開口部越しにスカイガーデンを見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、正面:リビング、右奥:ガゼボ(半屋外食事室)、右手前:スカイガーデン photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、スカイガーデンからリビングとガゼボ(半屋外食事室)側を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、ガゼボ(半屋外食事室)から開口部越しにリビング側を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、リビングから開口部越しにスパテラス側を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、和室から開口部越しにグラスガーデンを見る。 photo©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、リビングからホール側を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、ホールから玄関1を見る。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画、洗面室 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 俯瞰、南側より見下ろす。 photo©中村絵
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 配置図 image©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟A区画 平面図 image©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟B区画・C区画 平面図 image©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 宿泊棟D区画 平面図 image©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 施工中の様子 photo©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 施工中の様子 photo©篠崎弘之建築設計事務所
篠崎弘之建築設計事務所による、千葉・匝瑳市の宿泊施設「NAGARAMI RESORT SOSA」。砂丘の背後の広大な土地に計画。砂と空と原野のみの環境にある“豊かさ”に着目し、“大地のもつ時間や風景”を感受できる存在を志向。敷地を“十字壁”で分割し屋根を掛けて部屋と庭を巡りながら過ごす建築を考案 施工中の様子 photo©篠崎弘之建築設計事務所
以下、建築家によるテキストです。
なにもない環境の中で現在地を測るための、羅針盤としての建築
千葉県・九十九里浜に面する1.2haの敷地に、わずか4区画の分棟型ホテルと管理棟を新築する計画である。
都市計画区域外のため、敷地周辺には原野や保存林など多くの自然が残る一方、敷地と海岸の間には高さ8mの砂丘があり、津波等の自然災害から砂丘背後地を守りつつも海への視線を遮断していた。クライアントが望むオーシャンビューの実現には建築を中高層化する必要があったが、景観への配慮や、低層階は依然として眺望以外の価値付けが必要等の課題があり、商業的には不利な状況だった。
一方で、砂と空と原野しかない環境は、原初の大地に対峙するような豊かさもあるように思われた。ホテルと宿泊者という関係を超え、より大きなスケールで人と自然が密に関わり、その動向を刻明に感じられる環境を、GL+0レベルでつくれないかと考えた。
はじめに、原野の中で自らの位置を測る基準として、各真方位に向いた十字壁を配置した。それを反復すると、大小/開閉の様々な庭ができた。十字壁の交点上に方形屋根をかけると、1枚の屋根の下には4分割された内/半外/外の区別ができる。最後に4区画の陣取りを行い、複雑な区画形状が決定された。
このプロセスから、1区画につき1つの母屋・2つの離れ・4つの庭・7つの部屋で構成される。ホテルとして明確にプライバシーは確保しながらも、自由な区画取りにより1枚の屋根を2区画で共有する部分もあり、本来無縁の宿泊者同士が同じ自然を共有して観測する者同士として、暗に共同体のような状態を形成している。
宿泊者は十字壁を基準として、ある時間・ある方位に、ある部屋・ある庭へと巡りながら、その時々の自然の移ろいを感じて過ごすことができる。1区画は延床面積100㎡・区画面積700㎡程度とし、屋外で過ごす時間の方が長くなるよう想定されている。敷地境界を超えて、大地のもつ時間や風景を感じて佇むことのできる建築を目指した。
各方位の風景にひらく
十字壁はRC造の高基礎、方形屋根とそれを支持する袖壁は木造とした。各諸室は、真方位に対し45°振れて三角形や五角形の平面形状であり、風景や光に向かって広角な視界を確保している。壁はまた、沿岸部の強い横風を遮る防風壁や、光を反射するスクリーンとしても機能している。
諸室の配置は、宿泊者の体験タイムラインの設計と共に決定された。チェックイン~アウトまでの間、どの時間帯・どのような光や風景・どのような体験の中で過ごすか。例えば半屋外の食事室であるガゼボは、沈む夕景を見ながら晩食につけるよう、南西の風景に開かれている。浴室は、朝日や月光に照らされたヤシの木を眺めて湯に浸かれるよう、北東に向けられた
群落的な風景といくつもの庭
東西南北に向く十字壁は、母屋・離れ・隣棟を連続的に繋ぎながら、同時に幾つもの庭を生み出している。明るく開放的な庭、プライバシー性の強い陰りのある小庭など、大きさと方位で差異をもつ。庭の風景は、自分の屋根と隣地の屋根・自分の庭と隣地の庭のヤシの木でつくられる。庭は矩形であり、その4隅に棲みつくように軒下や部屋があるため、それぞれの部屋は庭を共有しながら程よい距離感を保っている。
長期滞在中、一人で過ごしたい時でも家族で集まりたい時でも快適に過ごせるよう、多様な居場所の選択肢を用意した。リゾート系宿泊施設という一時のエンターテイメントを超えて、恒久的な自然現象やそこに暮らす共同体が顕在化されるような環境を目指した。
■建築概要
題名:NAGARAMI RESORT SOSA/ナガラミリゾート匝瑳
所在地:千葉県匝瑳市野手
主用途:ホテル(区画貸し型)
意匠設計:株式会社 篠崎弘之建築設計事務所 担当/篠崎弘之、増田裕樹、Frans Jonathan、谷拓也
構造設計:有限会社 オーノJAPAN 担当/大野博史、穀野直貴
建築施工:さくら住建 株式会社 担当/出口誠悟、加藤隆司
事業者:株式会社 富士テクニカルコーポレーション
サイン設計:篠崎弘之建築設計事務所 担当/篠崎弘之、増田裕樹
構造:木造(一部RC高基礎)
階数:地上1階
室数:全4区画(母屋4棟+離れ5棟+管理棟1棟)
敷地面積:11,747.44㎡
建築面積:598.45㎡
延床面積:476.48㎡
設計:2023年3月~2023年8月
工事:2023年9月~2024年4月
竣工:2024年4月
写真:中村絵、篠崎弘之建築設計事務所