篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側より見る。 photo©長谷川健太
篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図受付から展示室1側を見る。 photo©長谷川健太
篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図左:イントロダクションスペース、右:オープンギャラリー photo©長谷川健太
篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図展示室1 photo©長谷川健太
篠崎弘之建築設計事務所が設計した、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」です。
インド細密画を展示する施設等のプロジェクトです。建築家は、広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案しました。そして、美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図されました。施設の場所はこちら(Google Map)。
クライアントはインド細密画の画家である。
その画家の作品の収蔵室と展示室、カフェ、ヤギ庭、来客用駐車場が機能として求められた。豊かに広がる森の風景を眺める体験とは対照的に、細密画はとても小さく繊細でルーペを利用して鑑賞する絵画である。
極端な遠景と近景が交互に現れてくるような体験ができるように、駐車場は遠くに、美術館とカフェ、ヤギ庭は敷地高低差も利用して森の中に点在するように計画した。森を散策する中で、1mmから100mまでのスケール体験を動物や植物、美術作品を通じて体験できる森として、その仕掛けと建築の在り方を考えた。
美術館は既存のプレファブ建築を利用している。システム建築と呼ばれる鉄骨造のプレファブ建築は断面性能を最大限に活用し合理化されており、余剰耐力も限界計算まで達している。そのために今回は既存に余剰耐力を生み出すためにさらなる軽量化を図っている。
自立ガラス壁として大きな開口部をつくり外壁を減らし、内部の諸室も基礎から独立建屋として構成している。さらに既存の外壁には硬質発砲ウレタンフォームを仕上材として吹付け、自然発生的に膨らむ性質を利用し多様な凹凸が表情を作り出し、既存の印象を刷新している。表情を変えた既存枠と、入れ子状に配置された新規枠が、それぞれ森と展示室の境界を作りだし、それを体験として横断していく動線計画としている。
森と細密画を交互に体験していくために立ち上がる枠組みは、舞台の書割のような曖昧な色味と素材感で軽く、物質的な立ち方が相応しいと考えた。ガラリと変わったプレファブ建築は、見上げた最上の屋根天井面の素材から唯一感じることができる。
クライアント家族はこの森に住んでいる。森の中の自宅から、朝にはヤギを散歩させてから美術館を開館し、お昼前にはカフェを準備オープンして、夕方にはそれぞれ閉館してまたヤギを散歩させて自宅に帰る。
クライアント家族にとって森は日常の庭でありながら、来訪者にとっては那須の自然と細密画に触れ、非日常の体験ができる場所である。
そのような持続可能な関係性を持った場所が、那須のレジャー施設が点在するファミリーロードのこれからの風景として、相応しいのではないだろうか。
美術館
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篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南側よりエントランスを見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側より見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側より見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側より開口部を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側より開口部を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側よりエントランスを見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図エントランスから受付を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図受付から展示室1側を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図エントランスからオープンギャラリーを見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図オープンギャラリーから休憩スペース側を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図左:イントロダクションスペース、右:オープンギャラリー photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図イントロダクションスペースから開口部越しに展示室1を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図展示室1 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図展示室2から開口部越しに「展望廊下」を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図「展望廊下」 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図展望廊下から開口部越しに外部を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図休憩スペースからオープンギャラリーを見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図オープンギャラリーからエントランス側を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図ショップスペース photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南側より見る。夕景 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南西側より見る。夕景 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図配置図 image©篠崎弘之建築設計事務所

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図美術館の平面図 image©篠崎弘之建築設計事務所
カフェ
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篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、西側より見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南側より見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、南東側より見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、東側より見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、東側よりエントランスを見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図エントランスから待合スペース越しに客席を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図客席から開口部越しに外部を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図客席からキッチン側を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図床と開口部の詳細 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、西側より客席を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、東側より客席を見る。 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、ヤギ庭より見る、夕景 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図ヤギ庭 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図外観、東側より見る。夕景 photo©長谷川健太

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図カフェ平面図 image©篠崎弘之建築設計事務所
施工中の様子
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篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図施工写真(建築家による解説:硬質発泡ウレタンフォーム吹付) photo©宮沢建設

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図施工写真(建築家による解説:アクリルカチオン系フィラー吹付) photo©宮沢建設

篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・那須町の「Nasu Forest & Art Museum」。インド細密画を展示する施設等。広がる森と繊細な作品の“スケール”を体験する場として、遠景と近景が交互に現れるように機能を点在させる計画を考案。美術館は入れ子状の構成で“森と展示室の境界の横断”も意図施工写真(建築家による解説:アクリル樹脂系塗装吹付) photo©宮沢建設
以下、建築家によるテキストです。
森とファミリーロードのリノベーション
計画地は栃木県那須町のファミリーロードと呼ばれる、観光客向けのレジャー施設が点在する町道に接した約6,000㎡の森である。
その森の奥には昆虫博物館として利用されていたプレファブ建築がそのまま残されており、森はうっそうと荒れた状態であった。
レジャー施設が時代の変化とともに閉館し取り残されてしまった風景は、この那須のファミリーロードでも珍しくはない。そのような観光地のひとつの風景を新しく蘇らせるために、豊かな自然の風景を活かし体験できる、森とファミリーロードのリノベーションを目的としたプロジェクトである。
細密画と森をつなぐ
クライアントはインド細密画の画家である。
その画家の作品の収蔵室と展示室、カフェ、ヤギ庭、来客用駐車場が機能として求められた。豊かに広がる森の風景を眺める体験とは対照的に、細密画はとても小さく繊細でルーペを利用して鑑賞する絵画である。
極端な遠景と近景が交互に現れてくるような体験ができるように、駐車場は遠くに、美術館とカフェ、ヤギ庭は敷地高低差も利用して森の中に点在するように計画した。森を散策する中で、1mmから100mまでのスケール体験を動物や植物、美術作品を通じて体験できる森として、その仕掛けと建築の在り方を考えた。
軽さを利用してガラリと変える
美術館は既存のプレファブ建築を利用している。システム建築と呼ばれる鉄骨造のプレファブ建築は断面性能を最大限に活用し合理化されており、余剰耐力も限界計算まで達している。そのために今回は既存に余剰耐力を生み出すためにさらなる軽量化を図っている。
自立ガラス壁として大きな開口部をつくり外壁を減らし、内部の諸室も基礎から独立建屋として構成している。さらに既存の外壁には硬質発砲ウレタンフォームを仕上材として吹付け、自然発生的に膨らむ性質を利用し多様な凹凸が表情を作り出し、既存の印象を刷新している。表情を変えた既存枠と、入れ子状に配置された新規枠が、それぞれ森と展示室の境界を作りだし、それを体験として横断していく動線計画としている。
森と細密画を交互に体験していくために立ち上がる枠組みは、舞台の書割のような曖昧な色味と素材感で軽く、物質的な立ち方が相応しいと考えた。ガラリと変わったプレファブ建築は、見上げた最上の屋根天井面の素材から唯一感じることができる。
美術館にシーンの切り替えをつくる
既存のプレファブ建築の外壁は、自立ガラス用の鉄骨枠が補強としても機能するように既存鉄骨と照らし合わせながら開口部検討を行い、重量を徹底的に軽量化した内部の新規建屋も既存建物に負担を与えないよう、構造的に独立させた。内部建屋が既存建物を貫入するエントランス部は、触れる否か紙一重のクリア寸法を設定し、美術館のシーン展開に切り替えと緊張感を与えている。まるでボトルシップを作るような繊細な計画であった。
森のカフェ
美術館に併設するカフェはスタッフ一人でやりくりできる程の広さで、お客さんがやってくる様子や庭のヤギに目が届くような視野の広い計画が求められた。カフェは、核となる”キッチン”、 森とつながる”散策路”、森にひらく”客席”の3つの要素から構成した。森の散策路がカフェの中に入り込むことで、室内を動線と溜まりの場に緩く分け、外へ出ると散策路の周りにはテラス席が展開していく。
森に向けオープンな客席空間を実現するため、客席側はキッチンの軸から45度振った方向に1,820mmのグリッドを設定し、対角をなす2面をFIXガラスとすることで、森に向け視野が広がり、グラデーション状に風景に溶け込んでいくよう計画した。グリッドの交点には90角のアカマツ集成材の木柱を配置し、オイルステイン塗装にて周辺の樹木との調和を図った。
また、FIXガラスサッシ枠の内外には段差を設けず、シームレスな納まりとすることで外部との境界を曖昧にしている。森の空気や景色、体験が建築内へ入り込み、森へも新しい居場所が広がることで、訪れた人それぞれが森の中に心地よい席を見つけ、穏やかな時間をすごせるような場所となっていってほしい。
森で暮らす
クライアント家族はこの森に住んでいる。森の中の自宅から、朝にはヤギを散歩させてから美術館を開館し、お昼前にはカフェを準備オープンして、夕方にはそれぞれ閉館してまたヤギを散歩させて自宅に帰る。
クライアント家族にとって森は日常の庭でありながら、来訪者にとっては那須の自然と細密画に触れ、非日常の体験ができる場所である。
そのような持続可能な関係性を持った場所が、那須のレジャー施設が点在するファミリーロードのこれからの風景として、相応しいのではないだろうか。
■建築概要
題名:Nasu Forest & Art Museum
所在地:栃木県那須郡那須町高久丙1185-3
主用途:展示場・飲食店
意匠設計:篠崎弘之建築設計事務所 担当/篠崎弘之、増田裕樹、星野唯
構造設計:Q&Architecture 担当/中原英隆
サイン設計:篠崎弘之建築設計事務所 担当/増田裕樹
建築施工:宮沢建設 担当/増子健吾、君島真一
建主:モハメッド アリ カーン ゴーリ
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LAILA art Museum
構造:鉄骨造(一部木造)
階数:地上2階
敷地面積:2,594.61㎡
建築面積:378.93㎡
延床面積:426.52㎡
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Alma Cafe
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:566.32㎡
建築面積:47.78㎡
延床面積:46.13㎡
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設計:2021年1月~2023年5月
工事:2022年5月~2023年12月
竣工:2023年12月
写真:長谷川健太、宮沢建設