ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、西側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北東側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北側より見る。夕景 photo©ToLoLo studio
野中あつみ+三谷裕樹 / ナノメートルアーキテクチャー が設計した、大阪・関西万博の「時木(とき)の積層(サテライトスタジオ東)」です。
放送スタジオが3つ入る建築です。建築家は、“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案しました。また、短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いています。施設の場所はこちら (万博公式PDF)。
また、こちらのページでは、「困った木」が本建築になるまでの過程 がまとめられています(困った木のリストと解説 はこちらのページに)。加えて、万博の施設・設備・什器の移築・リユースに関しては、「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」という専用ページ も存在しています。
様々な人間の都合で不要となった「困った木」を日本全国から収集し、柱に用いたサテライトスタジオ東には、テレビ局の放送スタジオが3つ入っている。いろんな種類の木が縦に積み重ねられ、円盤状の屋根を支える。
プロポーザル提案時から案は変わらず、実施設計期間から約1年かけて困った木を集めた。普段は製品化された木を扱うため、建材としての木という認識が根付いていた。
紆余曲折を経て建築の世界に入った私達は、建築を考えながらその外側から見て、また中に入り、行ったり来たりを繰り返して思考している節がある。しかしながら建材素材ではなぜか決まったものから選ぶクセと言うか、コストやルールからそうなってしまう現状があり、それに疑うこともなくなっていたように感じる。
すっかり建築の内側でしか考えられないようになってしまっていた、と言っても過言ではないかもしれない。
しかし木の取得では建材になる前の木や身近にある木の意味に触れた。木をきっかけに、その裏側にある社会問題や環境・産業問題、また良い面としての木から学ぶ活動に気付かされた。建築の外側に足を踏み出し、視野が広がったような感覚がある。
壁材には「苫編み」という技法で編んだ稲わらを取り付けた。外壁に求められるのは耐久性である。しかし苫は1年で更新されるような材料で、現代の材料とは真逆の特徴を持つ。半年という会期だからこそたどり着いた材料だ。
また茅葺きの葦は取得が簡単にはできないが、稲わらは日本全国どこからでも毎年手に入るお手軽材料である。苫を今後も外壁として提案し続けるわけではないが、素材の寿命やサイクル、入手といった経路についても考えを改めるきっかけとなった。
誰もが関わりやすい素朴なものをきっかけに、積み柱という木造の新しい工法の再編にアプローチすると同時に、自身と関係があるかもしれない背景にある社会課題を認識できるようにする試みである。
以下の写真はクリックで拡大します
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 鳥瞰、敷地上空より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北東側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、柱の詳細 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、軒裏と柱の詳細 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、西側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北西側より見る。 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、柱と壁の詳細 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 左:スタジオ1、右:軒下空間 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる スタジオ1 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北側より見る。夕景 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 外観、北側より見る。夕景 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 軒裏と柱の詳細。夕景 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 柱と床の詳細 photo©ToLoLo studio
ナノメートルアーキテクチャーによる、大阪・関西万博の「時木の積層(サテライトスタジオ東)」。放送スタジオが3つ入る建築。“社会課題”の可視化も意図し、人の都合で不要となった木々“困った木”を集めて“積み柱”とする建築を考案。短い会期を逆手に取って外壁には“稲わら”も用いる 平面図 image©ナノメートルアーキテクチャー
以下、建築家によるテキストです。
様々な人間の都合で不要となった「困った木」を日本全国から収集し、柱に用いたサテライトスタジオ東には、テレビ局の放送スタジオが3つ入っている。いろんな種類の木が縦に積み重ねられ、円盤状の屋根を支える。
プロポーザル提案時から案は変わらず、実施設計期間から約1年かけて困った木を集めた。普段は製品化された木を扱うため、建材としての木という認識が根付いていた。
紆余曲折を経て建築の世界に入った私達は、建築を考えながらその外側から見て、また中に入り、行ったり来たりを繰り返して思考している節がある。しかしながら建材素材ではなぜか決まったものから選ぶクセと言うか、コストやルールからそうなってしまう現状があり、それに疑うこともなくなっていたように感じる。
すっかり建築の内側でしか考えられないようになってしまっていた、と言っても過言ではないかもしれない。
しかし木の取得では建材になる前の木や身近にある木の意味に触れた。木をきっかけに、その裏側にある社会問題や環境・産業問題、また良い面としての木から学ぶ活動に気付かされた。建築の外側に足を踏み出し、視野が広がったような感覚がある。
壁材には「苫編み」という技法で編んだ稲わらを取り付けた。外壁に求められるのは耐久性である。しかし苫は1年で更新されるような材料で、現代の材料とは真逆の特徴を持つ。半年という会期だからこそたどり着いた材料だ。
また茅葺きの葦は取得が簡単にはできないが、稲わらは日本全国どこからでも毎年手に入るお手軽材料である。苫を今後も外壁として提案し続けるわけではないが、素材の寿命やサイクル、入手といった経路についても考えを改めるきっかけとなった。
誰もが関わりやすい素朴なものをきっかけに、積み柱という木造の新しい工法の再編にアプローチすると同時に、自身と関係があるかもしれない背景にある社会課題を認識できるようにする試みである。
「困った木」を集めたその先にぼんやりと見えてくる未来について意識を向けることができるだろうか。見えなかった課題に出会うことで未来は明るくなると感じている。
■建築概要
題名:時木(とき)の積層(サテライトスタジオ東)
所在地:大阪府此花区夢洲 2025年日本国際博覧会会場内
主用途:テレビスタジオ
意匠設計:ナノメートルアーキテクチャー 担当/野中あつみ、三谷裕樹、原田祥吾
構造設計:EQSD
設備設計:明和技術管理事務所
木材調達協力:SHARE WOODS
施工:宮崎工務店
WEB・コンテンツ制作:KIDZUKI
積算:棟建築企画
木材提供:UR都市機構、ノッティーハウスリビング、豊橋市役所都市計画部公園緑地課、ヤトミ製材、名古屋鉄道、藤寿産業、いふくまち保育園、ReBuilding Center JAPAN、SHARE WOODS、国土交通省中部地方整備局 豊橋河川事務所、熱田神宮、森庄銘木産業、玉川学園、木原木材、片桐銘木工業
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:448.78㎡
建築面積:259.75㎡
延床面積:252.30㎡
設計:2022年3月~2024年6月
工事:2024年7月~2025年4月
竣工:2025年4月
撮影:ToLoLo studio