細尾直久による、京都市の「洛和会京都看護学校」。“不規則で特徴のある輪郭”の敷地。風景との“滑らかで密接な繋がり”を求め、土地の形を“建築を構成する線”として導入。道路側から中庭まで層を作る様に諸機能を配置して“学びの場に必要な静けさ”も生み出す外観、西側の道路より見る。 photo©山岸剛
細尾直久による、京都市の「洛和会京都看護学校」。“不規則で特徴のある輪郭”の敷地。風景との“滑らかで密接な繋がり”を求め、土地の形を“建築を構成する線”として導入。道路側から中庭まで層を作る様に諸機能を配置して“学びの場に必要な静けさ”も生み出す2階、廊下からアトリウムを見る。 photo©山岸剛
細尾直久による、京都市の「洛和会京都看護学校」。“不規則で特徴のある輪郭”の敷地。風景との“滑らかで密接な繋がり”を求め、土地の形を“建築を構成する線”として導入。道路側から中庭まで層を作る様に諸機能を配置して“学びの場に必要な静けさ”も生み出す2階、廊下 photo©山岸剛
細尾直久による、京都市の「洛和会京都看護学校」。“不規則で特徴のある輪郭”の敷地。風景との“滑らかで密接な繋がり”を求め、土地の形を“建築を構成する線”として導入。道路側から中庭まで層を作る様に諸機能を配置して“学びの場に必要な静けさ”も生み出す2階、図書室 photo©山岸剛
細尾直久による、京都市の「洛和会京都看護学校」。“不規則で特徴のある輪郭”の敷地。風景との“滑らかで密接な繋がり”を求め、土地の形を“建築を構成する線”として導入。道路側から中庭まで層を作る様に諸機能を配置して“学びの場に必要な静けさ”も生み出す3階、廊下 photo©山岸剛
細尾直久 / HOSOO architectureとTT Architectsが設計した、京都市の「洛和会京都看護学校」です。
“不規則で特徴のある輪郭”の敷地でのプロジェクトです。建築家は、風景との“滑らかで密接な繋がり”を求め、土地の形を“建築を構成する線”として導入しました。そして、道路側から中庭まで層を作る様に諸機能を配置して“学びの場に必要な静けさ”も生み出しました。
京都の山科地区に拠点を構える医療法人が新築する、看護学校を設計した。
地域との密接な繋がりが感じられ、そこで学ぶ学生だけでなく周辺に暮らす人々にとっても心の拠り所となる建築を志向した。
敷地は交通量の多い国道に近接している。周辺にはチェーンの飲食店や量販店、大きな看板広告、近代的なバラックが連なる典型的なロードサイドの風景が広がっている。
こうした風景は日本の随所に見てとることができるが、一見均質に見える風景の中にも、それぞれの地域の特性は控えめに存在している。
看護学校の敷地はきちんとした矩形ではなく、不規則で特徴のある輪郭を持っている。
このような敷地に対して、幾何学的で整然とした形状の校舎を建てるのではなく、むしろ敷地の所与の形を、建築自体を構成する線として有機的に取り入れることで、地域の風景との滑らかで密接な繋がりを表現した。
学校に沿って走る流線形の道路を北側に進むと、医療法人の病院群が広がっている。校舎を流線型の道路形状に沿って造形し、道路の方向性を際立たせることによって、新しい看護学校と、北側に広がる病院群をシームレスに架橋した。
流線型に造形されたタイルの外壁は、ロードサイドの風景にはためく「旗」のようにも見立てることができる。
国旗やレインボーフラッグがそうであるように、旗は場所や属性、アイデンティティを指し示す象徴としての働きを持つが、均質に見える寄る方のない風景の中にこそ、立ち帰るべき場所を指し示す旗が必要とされるのではないか。
不規則な敷地の輪郭に建築をフィットさせるために、3層の織物を着重ねしたような構成を持っている。
1層目:倉庫や更衣室、トイレなど、窓のない諸室を集中させた外側(道路側)の層
2層目:主動線の役割を持つ、チューブ状の中間層
3層目:実習室や講義室など、開放的な窓のある諸室を集中させた内側(中庭側)の層
世間の喧騒からは一枚隔てられた静けさが、学びの場所には必要とされる。
賑やかな道路に面する層には、あえて窓を必要としない諸室を集中させ、逆に中庭に面した層には、窓のある開放的な諸室を集中させた。開放的な諸室に面した中庭には、タイサンボクの並木を背にした石畳を据えた。たたずんだり、談笑したり、学生達や職員が自由に過ごすことができる「アジール」としての中庭を、学校の中心に設けている。