
SHARE 魚谷繁礼・森田一弥・塚本由晴による書籍『新・都名所図会 京都のリアル・アーバニズム』をプレビュー。プレゼント企画も実施。“新感覚の街案内”の視点で、生きた歴史都市として京都“らしさ”を捉え直す内容。“新京極ゲーセンコンプレックス”などの83事例をドローイング・テキスト・写真で紹介

魚谷繁礼・森田一弥・塚本由晴による書籍『新・都名所図会 京都のリアル・アーバニズム』をプレビューします。
また、本書籍を抽選でプレゼントいたします。“新感覚の街案内”の視点で、生きた歴史都市として京都“らしさ”を捉え直す内容です。“新京極ゲーセンコンプレックス”などの83事例をドローイング・テキスト・写真で紹介しています。
プレゼント企画の応募締切は、2026年10月16日(金)13時まで(応募はお一人様1回までとさせていただきます。複数回ご応募いただいた場合も、抽選対象は1件として扱います)。こちらのフォームからご応募ください。厳正な抽選を行い当選された方にはメールにてご連絡いたします(メール送付を当選発表にかえさせていただきます)。本書籍のオンラインでの販売ページはこちら(amazon)。
住宅地に潜む古墳、駐車場に残された地蔵、元はプールだった疎水等、何気ない生活と歴史のレイヤーこそがこの街の面白さだ。江戸の都名所図会の手法を用いた83の図会からは、気候や地形、祭礼、条例、開発が複雑に絡まる街が見えてくる。生きた歴史都市として京都「らしさ」を捉え直す、地元民とマニアに贈る新感覚の街案内。
以下に、プレビュー画像を掲載します。
『新・都名所図会 京都のリアル・アーバニズム』のプレビュー画像
以下の写真はクリックで拡大します








目次
はじめに
1 積層する地形
1 巨椋池ジャンクション
2 浄土ビュー墓地
3 前方後円住宅墳
4 横たわる御土居
5 御土居稲荷
6 御土居島
7 御土居観覧席
8 御土居上の宅地
9 聚楽第の堀跡
10 桃山城滑り台
11 北山丸太の乾燥小屋
12 街区内の微かな断崖
論考1 素材と意匠の積層がつくる京都の「奥行き」―森田一弥2 盛衰する水
13 純粋欄干
14 疏水の水引
15 疏水白川の立体交差
16 白川の遊泳場
17 街頭の名水3 大衆化する遊興地
18 愛宕山遊園地の夢跡
19 保津川スプラッシュマウンテン
20 芸能神社
21 パスティーシュ・ターミナル
22 嵐山の遊歩食堂4 賑わうキワ
23 花街横の市場
24 二条洛外の教習所
25 新京極ゲーセンコンプレックス
26 新京極映画街の浪漫跡
27 木屋町の川床と料理旅館
28 五條楽園
29 七条の金網街5 切断されるグリッド
30 後院ブロードウェイ
31 ヘタ地の洋館
32 隅切り町家
33 隅切放射状の市場跡
34 洋風仮面の切断町家
35 三条京津線路跡の住宅
36 ツイスト町家
37 マンションロードウェイ
38 ペラペラ不動産6 定着する辻商い
39 辻の銭湯
40 辻の床屋
41 辻の煙草屋
42 辻のコンプレックス7 侵食するマンション
43 十字架マンション
44 街区突き抜けマンション
45 屏風マンション
46 侵食マンション
論考2 生き続ける都市 歴史都市には何が積み重なってきたのか?―魚谷繁礼8 京都を纏うビル
47 土蔵ビル
48 和洋分裂マンション
49 横顔マンション
50 町家張付ホテル
51 格子壁ホテル9 使い倒される町家
52 建具町家
53 駐輪町家
54 スカイ町家
55 ガレージ長屋
56 会館建築町家10 生き残る社寺
57 錦天神
58 菅大臣社
59 五條天神宮
60 立本寺
61 跨がれ参道
62 塞がれ参道
63 アミューズメント寺
64 癌封じ喫煙所
65 置き去り門11 潜在する祭礼
66 鬼門除け
67 御旅所の土産店
68 開閉式アーケード会所
69 マンション会所
70 山鉾の礎石
71 大文字の送り火12 流転する祠
72 出逢い祠
73 ビルトイン地蔵
74 ヘタ地地蔵
75 ロンリー地蔵
76 左官地蔵
77 ラジオ灯籠
78 校舎上の望火楼13 途切れなかった道
79 六道の辻
80 参道交差点
81 新町クランク群
82 鎮守杜ゴルフ場
83 東本願寺の押し出され道
論考3 京都の叙事詩を読む―塚本由晴歴史の積層図
8つのキーワードで読む歴史の積層あとがき
まえがき
京都には、「歴史都市」としての顔以外にも様々な都市としての顔が重層的に共存している。そしてその重なりは、町の中にふとしたかたちで現れることがある。
平安京以来1200年の歴史をもち、年間5000万人を超える観光客が訪れる観光都市としての京都だが、明治維新以降、琵琶湖疏水という近代日本の幕開けとなる大土木事業を皮切りに、水力発電の導入、市電の開通など、近代都市としての顔も併せもってきた。また、今なお多くの仏教宗派の総本山や著名な神社が集積する宗教都市である。加えて、京都市民の1割を大学生が占めるという、日本有数の学生のまちとしての一面も有している。そして言うまでもなく、150万人の市民が日常生活を送る、現代都市でもある。
こうした多様な都市としての性格と町のかたちは、各時代の都市形成の積み重ねによって生み出された。たとえば、室町時代に豊臣秀吉によって築かれた京都の城壁「御土居」。その多くが近代化の過程で失われ、観光地としては顧みられることも少ない。しかし、スプロール化した(郊外に無秩序に拡大した)住宅地の中に埋もれるように残っていたり、学校のプールサイドの観客席に姿を変えていたりと、今なおひっそりと町の中に息づいている。このように、文化財のような古いものだけでなく、何気ない都市の風景のなかにも、歴史の痕跡を発見できる点にこそ、「京都のリアルな面白さ」がある。現代、京都には様々なメディアが発信する「京都らしさ」のイメージが氾濫している。しかしそれらは、この町がもつ多様な側面のごく一部を反映しているに過ぎず、もはや京都に暮らす人々にとってのリアルな「京都らしさ」からは、かけ離れたものになりつつあるのではないだろうか。
名所図会という手法で見える町
本書では、2021年からの京都府立大学森田研究室、京都工芸繊維大学魚谷研究室 + KYOTO Design Lab、塚本由晴による共同リサーチによって「発見」された80あまりの事例を、ドローイング・テキスト・写真の三点セットで紹介している。リサーチでは、まず事例の候補を出し合い、実際に現地に赴き、そしてそのような事例が形成されるにいたった歴史関係を確認し、それらをドローイングで表現している。候補に挙がったにもかかわらず、ボツになった事例も少なくない。本書で採り上げた83事例の倍をはるかに超える数の事例が検討されたのではないだろうか。当初は、ただ表層的な京都らしさを表現した建築なども候補に挙がっていた。議論を繰り返すなかで、歴史的に様々な事象が繰り返し関係し合った結果として、今に現れているものを対象としたい、という価値観が共有されるに至った。現地調査では、茹だるような酷暑のなか、2つの山を上り下りした日もあれば、うっかり本来は入ってはいけないところに大人数で入り込んでしまい、こっぴどく叱られたこともあった。歴史的経緯を確認するに当たっては、既往研究に当たるのはもちろん、専門家や関係者へのヒアリングを行ったり、時には歴史資料館に籠って膨大な絵図を当たることからはじめることもあった。
なぜ現代都市を記述する方法として「ドローイング」を選んだのか。1つには、私たちが建築の専門家であり、その視点を表現するには、三次元的な図面表現であるアクソノメトリック図(アクソメ図)が適していると考えたからである。もう1つは、複雑な都市環境のなかから、私たちが注目する要素だけを抜き出して表現することができる点に、ドローイングの大きな利点があるからだ。そのうえで、本書のドローイング表現は、江戸時代に庶民の観光案内図として広まった『都名所図会』を踏襲している。『都名所図会』は、1780年に刊行された、京都とその周辺の名所案内であり、『京童』など、それまでも京都の名所案内は既に存在していたが、『都名所図会』は、文章だけでなく、絵も一緒に大きく掲載されたのが画期的であった。その絵の特徴として、鳥観図という本来見えない視点からの1枚の絵により、それぞれの名所性を表現している点や、正確な表現というよりも、ときには誇張した表現によりそれぞれの名所性を表現している点が挙げられる。また、この『都名所図会』の発刊により、実際に旅行には行けない人も、想像で旅行を愉しむことができるようになり、また、既成の名所を紹介するに留まらず、新たな名所をつくりあげることにもつながった。
本書もまた、21世紀の『新・都名所図会』として、オリジナルの『都名所図会』やそこに描かれている絵の意義や特徴を引き継ごうとしている。そして本書では、何気ない都市の風景のなかに現れる歴史の痕跡に「名所性」を見出し、様々な歴史的事象の重なりをドローイングとして表現するよう心がけた。
江戸時代の『都名所図会』が人々に京都を歩く楽しみを与えていたように、本書もまた、都市のリサーチに関心のある建築・都市系の学生や実務者に限らず、京都に暮らす人々や、すでに主要な観光地を訪れ尽くした旅行者にとっても、新しい京都の楽しみ方を提案する一冊となればと思っている。
魚谷繁礼(うおや・しげのり)
魚谷繁礼建築研究所代表。京都工芸繊維大学教授。1977年生まれ。兵庫県出身。2003年京都大学大学院工学研究科修士課程修了。2020~25年京都工芸繊維大学特任教授。著書に『地方で建築を仕事にする』(共著)、『住宅リノベーション図集』(オーム社)、『魚谷繁礼建築集』(TOTO出版)など。
森田一弥(もりた・かずや)
建築家。森田一弥建築設計事務所主宰。京都府立大学准教授。1971年愛知県生まれ。1997年京都大学大学院工学研究科修士課程修了。京都「しっくい浅原」にて左官職人として修行後、2000年森田一弥建築設計事務所設立。2007?08年バルセロナのEMBT arquitectos在籍。2011~12年カタロニア工科大学バルセロナ建築学校留学。2020年より京都府立大学准教授。2025年スイス連邦工科大学チューリッヒ校客員講師。
塚本由晴(つかもと・よしはる)
東京科学大大学院教授、アトリエ・ワン共同設立者。1965年神奈川県生まれ。1987年東京工業大学工学部建築学科卒業。1987~88年パリ建築大学ベルビル校。1992年貝島桃代とアトリエ・ワン設立。1994年東京工業大学大学院博士課程修了、博士(工学)。2000年~同大学大学院准教授。2022年Wolf Prize in Architecture、2026年The Daylight Award for Architecture受賞。

■書籍概要
書名:『新・都名所図会 京都のリアル・アーバニズム』
編著者:魚谷繁礼 森田一弥 塚本由晴
出版社:学芸出版社
発行日:2026年9月20日
仕様:A5判・256頁(オールカラー)
定価:本体3000円+税
ISBN:978-4-761-53319-9
装丁:加藤賢策(LABORATORIES)




