SHARE 花本大作建築設計事務所による、広島県呉市の住宅「大上の家」
all photos©益永研司写真事務所
花本大作建築設計事務所が設計した、広島県呉市の住宅「大上の家」です。
傾斜地に沿って不規則に古い民家が建ち並ぶ集落に建つ住宅である。
この集落を初めて歩いたとき,地形に張り付くような家並みとその隙間から見え隠れする山々の稜線や空に強く魅力を感じた。
設計するにあたってはそうした周辺環境とこの集落に過去から流れる時間的なものとのつながりを主題とした。
配置計画においては約130坪の広い敷地に総2階の一般的な大きさの建物を配置すると,湖に浮かぶポツンと浮かぶ島の様で,落ち着かない環境になってしまうと考えた。
しかし,平屋の大きなボリュームでは周囲の住宅スケールと馴染まない。そのため,敷地内にある高低差を活かした2階建てと大小2つの平屋からなる3つのボリュームに分節することで問題を解決した。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
傾斜地に沿って不規則に古い民家が建ち並ぶ集落に建つ住宅である。
この集落を初めて歩いたとき,地形に張り付くような家並みとその隙間から見え隠れする山々の稜線や空に強く魅力を感じた。
設計するにあたってはそうした周辺環境とこの集落に過去から流れる時間的なものとのつながりを主題とした。
配置計画においては約130坪の広い敷地に総2階の一般的な大きさの建物を配置すると,湖に浮かぶポツンと浮かぶ島の様で,落ち着かない環境になってしまうと考えた。
しかし,平屋の大きなボリュームでは周囲の住宅スケールと馴染まない。そのため,敷地内にある高低差を活かした2階建てと大小2つの平屋からなる3つのボリュームに分節することで問題を解決した。
平面計画では敷地をぐるりと囲む家々との距離感を丁寧に読み解き,建物をずらしながら不整形な敷地になじませている。 また,主室と半階上がった家族室を視覚的に結び,適度に一体感を生み出している。
断面計画は周辺環境を内部に引き込むことを意図し,地形的な構成とした。そして,その空間を象る天井は深い軒へとつながり,プライバシーや日射をコントロールする。また,そうした場をより体感できる様に,ハイサイドライトやボリュームのずれから立体的に光を取り入れている。
外観については屋根勾配を周囲に多く見られる瓦屋根に合わせ,軒を薄く深くすることで抽象化し,近景や遠景との調和を図っている。
このおおらかで抜けのある空間は,絶えず変化していく光の移ろいを味わえると同時に,家族の気配を感じながらのびのびと生活することを可能なものとする。
また,適所に設けられた開口部からは,周囲の家並み,山々,空との関係性を感じ取ることが出来る。
この住宅に住まうことを通して,過去からつながるこの集落固有の光や風といった自然要素,そして,風景との結びつきを感じながら生活する事が出来ればと願っている。
■建築概要
建物名:大上の家
所在地:広島県呉市
竣工:2017年2月
用途:専用住宅
構造:木造
規模:地上2階
敷地面積:426.13㎡
建築面積:114.57㎡
延床面積:126.14㎡
設計監理:花本大作建築設計事務所
構造設計:平田登記測量・設計事務所
施工:株式会社 三四五屋
撮影:益永研司写真事務所