SHARE 田辺雄之建築設計事務所による、長野・松本の、ショッピングモール内の店舗「ファイブホルン」
写真提供:田辺雄之建築設計事務所
田辺雄之建築設計事務所による、長野・松本の、ショッピングモール内の店舗「ファイブホルン」です。
今秋オープンのイオンモール松本/空庭1Fに出店する約19坪のスイーツ店。クライアントは上高地で宿泊施設を運営しており、それに関連するかたちで松本の市街地にもレストランやスイーツ店を数店営んでいる。当該テナント区画はメイン動線、フードコート、2Fシネコンへのエスカレーターの三方に開かれている。このジャンクションのような場所は上高地の宿泊施設の敷地とも特徴が同じであり、今回はそれをデザインの拠りどころとした。
※以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
「三年前の夏のことです。僕は人並みにリユツク・サツクを背負ひ、あの上高地の温泉宿から穂高山へ登らうとしました。穂高山へ登るのには御承知の通り梓川を溯る外はありません。僕は前に穂高山は勿論、槍ヶ岳にも登つてゐましたから、朝霧の下りた梓川の谷を案内者もつれずに登つて行きました。朝霧下りた梓川の谷を――しかしその霧はいつまでたつても晴れる気色は見えません。のみならず反つて深くなるのです。【河童:芥川龍之介】
–微細な影–
今秋オープンのイオンモール松本/空庭1Fに出店する約19坪のスイーツ店。クライアントは上高地で宿泊施設を運営しており、それに関連するかたちで松本の市街地にもレストランやスイーツ店を数店営んでいる。当該テナント区画はメイン動線、フードコート、2Fシネコンへのエスカレーターの三方に開かれている。このジャンクションのような場所は上高地の宿泊施設の敷地とも特徴が同じであり、今回はそれをデザインの拠りどころとした。宿泊施設は上高地の中心を流れる梓川と支流である清水川の合流地点にある。またそこには吊橋(河童橋)が掛かり、そこからの山並み(穂高連峰)は、上高地を代表とする景観である。これらの自然環境を多層な影を用いて表現することを試みた。丸鋼管と微細な影をつくりだす全ネジの組み合わせにより川の流れと山並みを、床に落ちた影で水面を、ブラスト加工のミラーと多層な丸鋼で霧を、不均質な手仕事による商品棚で雲を表している。身体との距離感が近づきやすい曲線を軸とした丸鋼管の間を移動することで、遷り変わる微細な影をより体感できる仕組みとなっている。
■建築概要
店名:ファイブホルン
クライアント:株式会社五千尺
所在地:長野県松本市中央4-9-51 イオンモール松本/空庭1F
床面積:61.38㎡(18.6坪)
工期:2017年7月3日~8月7日
設計監理:田辺雄之建築設計事務所
施工:清水建設
主な仕上:
床/ヴェレージア(ABC商会)
壁/石膏ボードSOPツヤ有、丸鋼管+全ネジSOP、ブラスト加工ミラー
天井/石膏ボードSOPツヤ有
商品棚/スチール丸鋼 作:岡田健太郎(彫刻家)