村田純 / JAMが設計した、中国・上海の懐石料理店「懐石 “米”/ MEE Japanese Dining」です。
上海浦東新区。金融の中心地として急速な発達を遂げ、外資系企業をはじめ高級ホテルやアパートメントが立ち並ぶ。その一角、155年の歴史を持つレンガ張りの造船工場は、隈研吾氏による改修により、複合アートセンター「船厰 / MIFA 1862」として保存・再生された。この建築の地上階、眼前に黄浦江を臨むエリアに懐石料理店が計画された。
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以下、建築家によるテキストです。
懐石 “米”/ MEE Japanese Dining
上海浦東新区。金融の中心地として急速な発達を遂げ、外資系企業をはじめ高級ホテルやアパートメントが立ち並ぶ。その一角、155年の歴史を持つレンガ張りの造船工場は、隈研吾氏による改修により、複合アートセンター「船厰 / MIFA 1862」として保存・再生された。この建築の地上階、眼前に黄浦江を臨むエリアに懐石料理店が計画された。
テナント区画は、巨大な吹き抜けを持つコンコースとアートスペースに面しており、多角形平面の複雑な形をしていた。また、河岸の遊歩道側と内部コンコース側の2つのメインアプローチ、そして2カ所の裏動線ともつながっており、さらに込み入った状況が見て取れた。これらのもつれた動線を解いた上で、諸々の機能的要求に応えながら検討を繰り返した。
立地の性格上、富裕層をはじめ外国人・企業家・投資家などの利用も想定されたため、商談やミーティングにも対応したマルチユースな使われ方を考慮に入れた。そのため客室はすべて個室または半個室とし、高度なプライバシーとホスピタリティを提供することが要求された。
設計する上で、単なるインテリアではなく、作庭するような感覚を携えながら取り組んだ。
室相互に一定の間を空けながら、店の内外に景石や水盤をデリケートに配置し、全体を構成している。
店には、美しい外灘の風景を過ぎ、河岸の遊歩道に接する露地を介してアプローチする。
矩形がスライドしたような二層の石庭は、エントランスのガラスを貫いてそのまま内部へと連続する。ホールでは乳白の翡翠・スチールフレームに囲われた水庭・カウンター背後の楓へとシークエンスが展開される。水面に映る大理石の壁や松の風景に視線を向けさせ、蛇行や昇降の小路を経てさらに奥へとゲストを誘い込む。専用の厨房を持つカウンター席と円卓を備えた個室は可動間仕切りにより仕切られ、状況によっては一体の空間として使うことができる。格子窓からは黒いモノリスが敷き詰められた楓の庭を楽しむことができる。最奥のVIPルームでは、8人掛けのダイニングの奥にラウンジが併設されており、枯木と岩の庭により隔てられている。最も小さな個室からは、傍らに石庭の小景、遠くに外灘の風景を見ることができる。客室内の照度は最小限に抑え、美しい器に盛られた料理のひとつひとつに焦点を絞っている。客室からは死角となる位置に厨房を配し、裏動線へとつなげている。客室のすべての出入口をオートドアとしているため、スムースな配膳を可能にしている。
日本で調達されたアンティークの絵画や調度品をはじめ、中国各地から仕入れた翡翠や大理石などの数種の景石、家具で使われた橡や胡桃などの銘木すべてが吟味を重ねて選定されている。安らぎのひととき、静謐さを纏った空間の中、豊かな食と庭を堪能してほしい。
■建築概要
Location : Shanghai, China
Design : May. – Jul. 2018
Construction : Aug. – Sep. 2018
Function : Japanese Dining, Restaurant, Lounge
Architect / Photo : Jun Murata / JAM
Floor Area: 195sqm
Website : junmurata.com