田中悠希・榎本亮祐 / YRADが設計した、大分・別府市の住宅「house-N」です。
建主は都心に住む60代の夫婦です。
子供たちの独立と自身のセミリタイアを機に、温泉と食が楽しめる暖かい場所で暮らそうと、大分県別府市への移住を決めました。
それぞれが自分のライフスタイルを持つ2人と、元気な犬たちが暮らす住宅の計画です。
「愛犬との自由な生活」と「自然を感じられること」。それが建主からの要望でした。
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以下、建築家によるテキストです。
建主は都心に住む60代の夫婦です。
子供たちの独立と自身のセミリタイアを機に、温泉と食が楽しめる暖かい場所で暮らそうと、大分県別府市への移住を決めました。
それぞれが自分のライフスタイルを持つ2人と、元気な犬たちが暮らす住宅の計画です。
「愛犬との自由な生活」と「自然を感じられること」。それが建主からの要望でした。
別府は南北方向の海岸と西方に連なる鶴見岳を中心とした山々、それらをつなぐ扇状地に別府八湯の温泉が広く分布しており、扇状地であるがゆえに坂の街とも呼ばれています。
計画地は、南側に境川の桜が立ち並ぶ砂防公園が臨め、東側は高崎山から別府湾まで一望できる環境豊かな敷地です。また、扇状地がもたらす急な坂道により、この敷地に取り付く南側道路の端から西側道路の端までは1.5mの高低差があります。
交通量の少ない周辺道路と、整備された親水公園の散策路は、地域の人々が日常的に利用する場としても親しまれています。
その特徴的な地形に寄り添い、家族や犬、周囲とのコミュニケーションを促すような建築を目指しました。
南側の豊かな環境と連続するように、ドッグランを兼ねた大きな庭を設け、1階建物ヴォリュームを敷地北側に配置。塀は圧迫感がなく抜けのある軽やかな形状とし、2階のボリュームは建物の東側に寄せることで、通りに対して余白を提供すると共にのびやかな平屋のような建築としました。
外部のどの場所からもアプローチしやすいように断面を設定し、2箇所の玄関と犬用出入り口、そして散歩道が拡張していくように道路隅切りにも出入り口を設けました。
内部には、リビングダイニングの2つのカウンター、個室やラウンジ、ゲストルーム、外部には開かれた各階のテラスや庭、菜園など、将来を見据え内外に様々な居場所を作りました。
地形がもたらす高低差に建物が寄り添うことで、ソトとウチとの多様な関係が生まれました。
この建築が、そこに身を置く人に新たな発見や生活の豊かさをもたらすと共に、この自然豊かな坂の街との穏やかな繋がりを持つきっかけになればと思っています。
■建築概要
所在地:大分県別府市
設計:田中悠希・榎本亮祐 / YRAD
構造設計:株式会社 黒岩構造設計事ム所
施工:株式会社 平野工務店
主要用途:住宅
構造規模:木造・2階建て
敷地面積:350.53㎡
建築面積:141.50㎡
延床面積:149.92㎡
竣工:2018年10月
写真:矢野紀行