SHARE 建築家の藤田雄介が立ち上げた建具メーカー 戸戸からリリースされた「木のレバーハンドル」と、論考「技術と素材と歴史が織りなす部材」
建築家の藤田雄介が立ち上げた建具メーカー 戸戸(こと)からリリースされた「木のレバーハンドル」と、その制作過程や歴史との繋がりを解説する論考「技術と素材と歴史が織りなす部材」です。この製品の販売ページはこちら。
我々は設計活動のかたわら「戸戸(こと)」という建具専門メーカーを立ち上げ、オリジナルの建具やその周辺のエレメントを流通してきた。それらは設計した建築の中で、必要に応じて生み出されたものであり、信頼している職人や作家との協働によりつくったものである。戸戸での流通に際しても、彼らと製品化していく生産体制を貫いている。
モダニズム黎明期の建築家の多くが、建築設計だけでなく家具や照明そしてドアハンドルなどを作り出していたが、我々はこれを彼らへのオマージュとしても考えた。20世紀初頭、ドイツを中心とした金物鋳造技術の発達がバウハウスやユーゲントシュティール、北欧など周辺国の建築家(アアルト・ヤコブセン・レヴェレンツなど)の建築金物を生み出したように、その時代の技術が新たな建築だけでなく付随するエレメントをつくりだしてきた。
また今後の展開として、今回の開発で得た知見をもとに、建築家各々が自らデザインしたレバーハンドルをつくれる仕組みをつくれないか模索している。
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以下、建築家によるテキストです。
技術と素材と歴史が織りなす部材
我々は設計活動のかたわら「戸戸(こと)」という建具専門メーカーを立ち上げ、オリジナルの建具やその周辺のエレメントを流通してきた。それらは設計した建築の中で、必要に応じて生み出されたものであり、信頼している職人や作家との協働によりつくったものである。戸戸での流通に際しても、彼らと製品化していく生産体制を貫いている。
今回の「木のレバーハンドル」は、キノカグヤ・中西さんという方との協働である。彼は木工を専門にしているが鉄工もできたり、CNCルーターを自作でつくりRhinocerosでモデルを立ち上げ加工できる多能工の職人である。「木のレバーハンドル」は中西さんの多彩な技術がなければつくり得ないものだった。
我々は、これまで「木のつまみ」「木のドアノブ」といったエレメントを生産流通してきたが、今回のレバーハンドルは製品化する上での難易度の高いものだった。その理由としては、力の掛かり方が大きく木のみでは耐久性が出ないため、鉄とのハイブリッドが必要なためだ。
そのために取った方策は、一度仕上がりの形にした無垢材を上下で割り、中に鉄部を組み込むための溝をCNCルーターで掘り込み、鉄の軸と芯棒受けを入れて、無垢材を再接着するというものだった。ちなみに、CNC用のデータ作成から鉄部の加工や溶接も全て中西さんが行なっている。木工・鉄工・CNCのハイブリッドにより、無垢材で仕上がったレバーハンドルが生まれたのである。
モダニズム黎明期の建築家の多くが、建築設計だけでなく家具や照明そしてドアハンドルなどを作り出していたが、我々はこれを彼らへのオマージュとしても考えた。20世紀初頭、ドイツを中心とした金物鋳造技術の発達がバウハウスやユーゲントシュティール、北欧など周辺国の建築家(アアルト・ヤコブセン・レヴェレンツなど)の建築金物を生み出したように、その時代の技術が新たな建築だけでなく付随するエレメントをつくりだしてきた。そうして生まれた建築は、全体と部分が分かちがたく統合され、ある時代の空気をまとっていた。そのような建築が現代においても可能か?という問いへの投げ掛けとして、このレバーハンドルを位置付けたい。また今後の展開として、今回の開発で得た知見をもとに、建築家各々が自らデザインしたレバーハンドルをつくれる仕組みをつくれないか模索している。
■製品概要
素材:タモ無垢材, ブラックチェリー無垢材 蜜蝋ワックス仕上げ、鉄製軸・芯棒
用途:室内開き戸用
扉厚:28~40mm
サイズ:W=125mm, H=25mm, D=50mm *丸座含まず
開発期間:2018年12月〜2020年2月
販売ページ:http://koto.tools/stories/木のレバーハンドル/