妹島和世による、2021年の東京大学入学式での祝辞の全文
妹島和世による、2021年の東京大学入学式での祝辞の全文建築家の妹島和世。 photo©architecturephoto

妹島和世による、2021年の東京大学入学式での祝辞の全文を紹介します。

こちらの内容は関係者・関係機関からの了承の上、こちらのページより転載するものです


令和3年度東京大学学部入学式 祝辞

 
皆さま、東京大学へのご入学おめでとうございます。このような栄えある場所で、皆様にご祝辞を申し上げる機会をいただきましたことをとても光栄に思います。この機会に私がこの場で何をお話しできるかを考えました。大学に入学されてこれから専門の道を歩まれる皆さまに、私が専門の道で経験してきたことを少しお話しさせていただきたいと思います。

私がお伝えしたいことは、まず一つは、専門的に考えてゆくことは、意外に専門以外の他の分野のことも考えることになっていくものだな、ということです。それから2つ目は、他分野の専門家とのコラボレーションの重要性です。そして3つ目は、自身の専門の研究を深めてゆくことは結局、その専門領域内にとどまらないで、私たちの世界全体を考えることになっていく、ということです。これらは、おそらく、いずれの専門分野にもあてはまるのではないかと思います。

自分の事で恐縮ですが、自分の経験から話させていただきます。私は日本女子大学を卒業し、6年ほど設計事務所で働いて、その後1人で設計事務所をはじめました。最初に設計したものは、50平米ほどの、小さな週末住宅でした。小さな住宅であっても、週末に自然の中でのびのび時間を過ごせるようにと考え、野原の中に家具がぱらぱらと並び、それら一つ一つにテントをかけて繋いでいくようなイメージから、建築を考え始めました。つまり、堅牢な箱のような建築の中にいろいろな場所がある、というのではなく、身の回りの小さな場所が繋がっていって、柔らかな全体が出来上がる、というやり方です。小さな単位が次々と繋がっていくアイデアなので、敷地が広ければどこまでも広がってゆきます。いろいろな居場所がつながってどんどん大きくなると、それは街のようなものにもなる、と考えました。その週末住宅は、個人のための小さな建物でしたが、私はその小さな建物の設計を通して、街のありようをも同時にイメージしていたようにも思います。

北村直也建築設計事務所による、岐阜市の「岐阜ビルの2階のリノベーション」
北村直也建築設計事務所による、岐阜市の「岐阜ビルの2階のリノベーション」 photo©miyashita design office 担当/加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜市の「岐阜ビルの2階のリノベーション」 photo©miyashita design office 担当/加瀬秋彦
北村直也建築設計事務所による、岐阜市の「岐阜ビルの2階のリノベーション」 photo©miyashita design office 担当/加瀬秋彦

北村直也建築設計事務所が設計した、岐阜市の「岐阜ビルの2階のリノベーション」です。一階部分も北村の設計によってレンタルスペースとして生まれ変わっており、そちらは「岐阜ビル」という作品名で特集記事として紹介しています。
また、2021年4月18日に本建築の内覧会・レセプションが行われます。こちらの情報も末尾に掲載します。

岐阜県岐阜市の商店街から少し離れた場所にあるオフィスビルのリノベーション計画である。
既存は築40年ほどのRC造の4階建て、奥行きの深い敷地に突当り庭のある建物である。竣工時は証券会社のオフィスとして竣工し、平成17年には花屋として利用され用途も変わり改修・補修工事を重ね、この度の計画では2階に新しくテナントスペースを作ることとなった。

2階の計画スペースは南北に長い130m2のワンルームとなっていて、南は街路樹のある歩道、奥は庭に面している。スケルトンにした内装はそのままで十分魅力的な空間であった。
しかし地方都市でのテナントスペースを考えたときに、広々としたワンルームでは中々借り手がつかず、また細かく分割すると空間の魅力が失われてしまうような気がした。
そこで南北の光の性質の違いが主役になるような、ざっくりと3つの空間に分ける計画とした。

建築家によるテキストより
今西伴仁 / Atelier tomatoによる、高知・四万十市の、商店街の旧銀行跡地に建つ複合施設「shimanto + terrace はれのば」。地元民間有志が街の為に事業主となり建設
今西伴仁 / Atelier tomatoによる、高知・四万十市の、商店街の旧銀行跡地に建つ複合施設「shimanto + terrace はれのば」。地元民間有志が街の為に事業主となり建設 photo©中村政弘
今西伴仁 / Atelier tomatoによる、高知・四万十市の、商店街の旧銀行跡地に建つ複合施設「shimanto + terrace はれのば」。地元民間有志が街の為に事業主となり建設 photo©中村政弘
今西伴仁 / Atelier tomatoによる、高知・四万十市の、商店街の旧銀行跡地に建つ複合施設「shimanto + terrace はれのば」。地元民間有志が街の為に事業主となり建設 photo©中村政弘
今西伴仁 / Atelier tomatoによる、高知・四万十市の、商店街の旧銀行跡地に建つ複合施設「shimanto + terrace はれのば」。地元民間有志が街の為に事業主となり建設 photo©中村政弘

今西伴仁 / Atelier tomatoが設計した、高知・四万十市の、商店街の旧銀行跡地に建つ複合施設「shimanto + terrace はれのば」です。地元民間有志が街の為に事業主となり建設された施設です。施設の公式サイトはこちら

このプロジェクトは商店街一角の旧銀行跡地が民間の地権者から中心市街地の活性化に役立ててほしいと土地と建物が市へ寄贈された事から始まりました。

市は集客拠点施設の実施主体となる事業者をプロポーザルにより公募し、地元民間有志5人がまちづくり会社を設立し公募に応募、採択されました。初期投資は補助金を活用するものの役員5人の給料、配当はなく、必要経費を除く利益は全てイベントや施設整備などに再投資するという個人の利益を投げ打って街のためにと立ち上がりました。

この地域に生まれ育った設計者の一人としてそんな役員5人の強い想いに同調する形でこのプロジェクトに参加しました。

建築家によるテキストより

地域住民を対象にアンケートを実施し、カフェ、テナント(4店舗)、広場、公衆トイレで施設を構成していく事が決められました。
「屋根の上を利用できたら楽しそう」ある時施主が言いました。これは収益重視の言葉ではなく「人が集まる楽しい場所を作るには」この問いに正面からぶつかり出てきた言葉です。

そんな要素を拾い上げ、ヒアリング、検討を重ねていく中で建ぺい率40%、施設の内部空間に対して屋上テラスや広場に抜けるアプローチ等の外部空間の割合も40%となって立ち現れてきました。

建築家によるテキストより

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