畑友洋建築設計事務所による、大阪の住宅「奥天神の家」の写真

畑友洋建築設計事務所のウェブサイトに、大阪の住宅「奥天神の家」の写真が15枚掲載されています。

丘陵地の遺伝子
なだらかに広がる丘陵地における住宅の計画である。この地域は複雑な傾斜面を小さく分割し、入り組んだ擁壁によって取り囲まれた住宅地となっている。周辺の建物を観察すると、1つの住宅単位が単一のボリュームにまとめられるのではなく、小さな部分の集合として建ち現れているものが多いことに気付く。これは、丘陵地ならではの細かな地形の起伏による地盤の高低差や、不整形な土地の形状に合わせて、建物を小さく刻み、大地に定着してきた建ち方の現われであり、それらの集まりが、細かくずれながら密集する住戸の特徴的な風景となって現れているように思った。このような風景に現れる丘陵地の遺伝子を引き継ぎながら、新しくアイデアを加えて発芽させる方法論について考えてみた。

敷地は、周囲の丘陵地の環境と同様に、法面に囲われ、周辺の地盤とのレベル差によって、建築可能な部分は限定された場所である。それは周囲の家々にもみられる特徴でもある。
そこで、地上階をコンパクトにまとめ、上階で必要な諸室を、幹から枝葉を分岐、拡張させるようなイメージで展開してみる。分岐させることによる空間の個別性と、その連なりによる多方向への拡がりを両立させることができる仕組みである。
次に、分岐した枝葉の居場所にふさわしい形を与える。それらは軒下を介して内と外が自然と繋がる小さな屋根の集まりとして、周辺の建物の小さな粒とリズムを合わせた風景となる。そうすることによって、窓の外に見える自分の家の屋根とその先の屋根屋根の風景が連続することで、大きな広がりを認識することができると考えた。
大地の起伏に小刻みに応答し、小さく分岐する空間とその繋がりそのものが住まいの佇まいとなる、丘陵地の遺伝子を持った建築の姿に結実したのではないだろうか。

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