田邉雄之建築設計事務所が設計した、静岡・熱海市の美容室「hair atelier bruno」です。デジタルファブリケーションを利用し、組み立て・塗装を自分たちで行う“セミDIY”による木杭の列柱で柔らかに領域を分けることが意図されています。店舗の公式サイトはこちら。
静岡県の熱海市役所近くの坂道に面した、築34年S造5階建てビルの1階に計画した約50㎡の美容室。
南側(水下側)隣地は交差点に面した公共施設計画地(膠着状態)で、現在はたいへん開けている。将来公共施設が建ったとしても広大な敷地であるため、隣地ギリギリまで建物が建てられる可能性は低いと考察される。よって今回のプロジェクトをインテリア空間に限定せず、周囲からの視認性にも配慮し取り組みはじめた。
そしてランドスケープデザインからインテリアデザインをコンティニュアスに繋げるために、クウキベイ(木杭の列柱)をデザインの中心に据えた。
クウキベイは様々なプロジェクトで協働してきた、植栽家兼ランドスケープデザイナーのhondaGREENさんが発案・命名したもので、これまでにも我々が設計した住宅や店舗のランドスケープデザインに取り入れてきた。クウキベイは約30cm間隔で立っており、人が通ろうと思えばすり抜けられる間隔である。よって、光や風やネコを通しながらも領域を緩やかに隔てることができる。またクウキベイと視線とが鋭角になるほど、その列柱状の木杭は線から面へと変化し、視線が遮られる。
クウキベイを繋ぐアルミアルマイト板と、テーブルやカウンターやベンチに採用したラジアータパイン集成材は、我々が作成したCADデータからそのまま切断、穿孔された(アルミはMetaplant、集成材はVUILDのEMARFによる)。
アルミだからこそ出来ること、集成材だからこそ出来ること、そしてその2つがデジタルファブリケーションによって、少量個別製作のハードルが下がっている今だからこそ、この組合せが実現した。言わば【切断】、【穿孔】を外注し【塗装】、【組立】を自ら行ったセミDIYである。