「建築思索360°」は「360度カメラ RICOH THETA(リコーシータ)」と建築ウェブメディア「architecturephoto®」のコラボレーションによる特別連載企画です。現代社会のなかで、建築家として様々な試行錯誤を行い印象的な作品をつくる4組の建築家に、その作品と背景にある思索についてインタビューを行い、同時に建築・建設業界で新しいツールとして注目されているRICOH THETAを活用することの可能性についてもお聞きしました。さらに建築作品をRICOH THETA を用いた360度空間のバーチャルツアー「RICOH360 Tours」でもご紹介します。
保坂猛が2019年、都内に2度目の自邸として建てた「LOVE² HOUSE」は、床面積が18.84㎡の平屋というコンパクトさでありながら、不思議と狭さを感じさせない、実に心地よい空間だ。この「LOVE² HOUSE」はどのようなプロセスを経て生まれたのか。そして光や外部環境をうまく取り込む設計手法や発想の源泉となる建築めぐりの旅など、保坂の建築への姿勢について迫った。
※このインタビューは感染症予防の対策に配慮しながら実施・収録されました。
小さい空間にほしいものが全部ある
以下の写真はクリックで拡大します
360度カメラRICOH THETA Z1で撮影した画像データを埋め込み表示した、RICOH360 Toursの「LOVE² HOUSE」バーチャルツアー。画像内の矢印をタップすることで、空間を移動することができます。
――保坂さんご夫妻は以前「LOVE HOUSE」(2005年)を設計して住まわれていましたが、新たに「LOVE² HOUSE」(2019年)を建てて引っ越されたんですよね。どのような経緯だったのですか。
保坂猛(以下、猛):2015年に早稲田大学芸術学校の准教授に就任して、横浜から早稲田まで通うのが困難になったのがきっかけです。
引っ越し先を探すにあたって、これまで戸建てに住んでいたのに都内でマンション暮らしは想像できなくて、結局もう一度建てることにしました。
――新しい敷地が決まって、すぐに現在の姿をイメージされたのでしょうか。
猛:結構な紆余曲折がありましたね。最初は2階建ての四角い建物のイメージで40案ぐらいスタディを繰り返していましたから。平屋案に変わっても四角いままで。鉄骨造で考えていた時期もありました。どうにかまとまって確認申請を出して施工会社と工事契約を結んでも「何か違うな」と思って。
そうこうしていたら結局、確認申請を3回出すことになってしまいました。施工会社との契約も1回目の契約はご破算にしてもらっています。
――何が原因で決まらなかったのでしょう。
保坂恵:(以下、恵):「LOVE HOUSE」があまりに好きだったので、引きずっていたのでしょうね。でも「せっかくだから全然違う方が面白いかも」と割り切ったら、いい方向にいったみたいです。
たとえば前回の住宅はそぎ落としていく楽しさを体感したので、今度は小さい空間にほしいものが全部あるのがいいと思いました。