スカーン・チャイヤワット+進藤理奈+ウィティー・ウィスタムポーンが設計した、タイ・ウドーンターニーの、寺院の施設「Buddhanimit Temple」です。
寺運営の教育施設に入る子供の増加に伴う寮の計画、新築予定に対し調査を行い予算配分を再検討して既存建物の寮への改修と図書館等新設を提案、生活・学習・課外活動の場を様々な文脈を尊重してつくる事が意図されました。
タイ・ウドーンターニーの農村地帯に位置する、寺院の修行僧のための寮と共用施設である。
この寺院には、公教育を受けられない家庭に無償で教育を提供する寺子屋があり、修行僧として入学する子どもたちの増加に伴って新たな寮の建設が求められた。
当初の依頼は、限られた予算で2階建ての寮を新築する計画だったが、現地調査を経て、敷地内にある旧校舎を寮に改修し、残る予算で共用の水廻りと図書室の新築することを提案した。これにより、当初の予算内で、生活の場だけでなく学習や課外活動の場をつくるとともに、敷地がもつコンテクストや既存建物を尊重しながら、新しいものと共存させることを試みた。
敷地内で廃墟となっていた旧校舎は、RCの柱と梁を残して解体し、外壁・間仕切壁・屋根などの必要な要素のみを追加して、約40人の修行僧が暮らす寮へと改修した。僧侶たちとのワークショップを経て、リビングを兼ねた大きな廊下に沿って4~5人で共有するベッドルームを配置するプランが採用された。土地の風道に直交して建つ既存建物の配置を活かし、居室の南北に開口部を設けることで、空調設備がなくても自然な風の流れで有効に換気ができる計画とした。
寮の裏手に配置された水廻りは、寺院の敷地内にいるすべての僧侶に利用され、気軽な集まりや交流の場となる。
屋根は、周囲の木々が作り出す光と影に呼応して、半透明と不透明の屋根材を交互に配置することで、自然光をバランスよく取り込めるように設計した。また、水廻りの隣には、洗濯した僧衣を干す物干しスペースを設けた。掛けられた衣は、隣接する道路からの目隠しの役割も果たしている。
図書室は、既存校舎から直接アクセスできるよう校舎の廊下の延長線上に配置し、渡り廊下で繋いだ。
既存校舎の床レベルに合わせて床を高くすることで、床下の風の流れを良くし、床面温度や湿度を下げる効果も得られる。また、南側の外壁には開口を設けず、屋根を南向きに傾斜させることで直射日光を防ぐとともに、北側にハイサイドライトを設けた。隣接する校舎の白い壁面に日光を反射させ、間接光として図書室内に取り込むことで、書籍の劣化を防ぎながらも心地よい明るさを確保した。