吉田州一郎+吉田あい / アキチ アーキテクツが設計した、東京・渋谷区の「ダイカンヤマの家」です。
都心の住宅密集地に計画されました。建築家は、制約の多い細長い敷地で“伸びやかな”建築を目指し、連続する木造フレームの“チューブ状の空間”を活かした“大きな一室空間”を志向しました。そして、都市の狭間で暮らす為の“地形”の様な空間が生まれました。
敷地は都心の住宅密集地で、30年程前に同時分譲された住戸群が世代交代に伴い、移転や建て替えが始まったエリアである。
前面道路は2項道路、裏側は落差4m弱の崖地であり、間口5.4m、東西方向に奥行き16m弱のうなぎの寝床状の敷地に対する様々な制約の隙間を縫いながらも、伸びやかな住宅を目指した。
道路のセットバックと崖からの離隔距離を確保した間に、910ピッチで均等に連続する木造フレームを架ける。地上5m以上は、高度斜線によって一様に切り取られた屋根が周囲の家並みと連なる。
隣地側にも同様の斜線が掛かるので、そこに向けて東端から西端までのトップライトを設置することで、密集地では貴重な、日中の光を半永久的に取り込むことを可能にした。片流れ棟を延長して真夏の直射光は遮りつつ、終日太陽の恵みを享受できる断面形状とした。
道路と裏庭で南北の空地を確保した上で、そこに向けた長手のチューブ状の空間を分断しないように短手の耐力壁を配置し、視覚的にも環境的にも大きな一室空間としてプランニングしている。高低差を利用した気圧差換気を室内空間全体で行うことで温熱環境のムラを抑える。
光と風を取り込む筒の中に、床や天井を架け渡しながら諸室を割り当てていくと、それは街の谷間の地形のような空間となった。都市の狭間に住まう為の洞窟は空に向かって開き、街と地続きの床の起伏が人間の居場所をつくる。