森下陽 / AMPが設計した、静岡・掛川市の、住宅兼アトリエ「原里の欄間」です。
山裾のレッカーの進入が難しい敷地での計画です。建築家は、大きな制作の場を備えた可変性のある住まいを求め、105角材の“トラス”梁を用いた自由な空間が連なる建築を考案しました。また、外周の高窓等から生活が滲みだし地域との繋がりも生まれています。
夫婦と子供のためのアトリエ付き住宅である。
敷地は集落のはずれで、北側に広がる山の麓の小高い場所にある。周囲は茶畑に囲まれ、南側に広がる眺望も良好で長閑な空気が流れている。しかし集落からつながる道は狭く、大きな車が上がってくるのには難がある土地でもあった。
建主夫婦は、本業と平行して画家としての活動も行っている。そのため、大きな絵を描くときに取り回しが容易なある程度の広さがあり、天井高が確保されたアトリエを含めた計画が求められた。そして家族構成の変化や、用途の変化などの可変性を考慮した住宅として、この場所でどのような建ち方が相応しいか検討を重ねた。
まずは敷地いっぱいに6×6間の正方形平面を配置し、角度を振って駐車スペースを確保した。最小の室が4畳半となるように1つのグリッドを設定し4×4の16グリッドで全体を分割した。北西の2グリッドは屋根のあるポーチとして外に開き、対角をプライベートなテラスとして内に開き、ポーチとテラスに面した部分にのみ開口部を設けた。
敷地がレッカーでの作業が困難な場所であるため、上棟作業は人力で行うことを想定し全ての材を105mm角の材料で構成した。細い材で高い天井懐と1.5間ピッチのグリッドを実現するため、上部を高さ1メートルのトラスで組んでいる。フリーになったトラスの下部は、その時の用途によって建具で間仕切り可能になる。各室は上部に連続するトラス部から採光を確保し、ポーチからテラスへ外から内がレイヤー状になるような配置としている。